「失敗から学べ」新入試にもプログラミング…相模女子

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 相模女子大学中学部・高等部(神奈川県相模原市)は、中学部の2019年度募集から、新たに「プログラミング」入試を導入する。同校は、川原田康文副校長を牽引(けんいん)役として既に2017年度から小、中学部の授業にプログラミング教育を取り入れてきた実績がある。中1の授業風景をリポートするとともに、今後の展開を聞いた。

協力し、試行錯誤しながらロボットを動かす

小、中学部の授業にプログラミング教育を取り入れてきた川原田康文副校長
小、中学部の授業にプログラミング教育を取り入れてきた川原田康文副校長

 「プログラミングと聞くと、難解な言語を覚えたり、コンピューターにかかりきりになったりというイメージを浮かべる方が多いかもしれません。しかし、本校で行っているプログラミングの授業は、それとはかなり違っています」。昨年、相模女子大学小学部の副校長に就任し、小学部と中学部のプログラミング教育を担当している川原田康文氏はそう話す。

 中1生は週1回、技術の授業でプログラミングを学ぶ。主に使用している教材は、レゴ社製の「マインドストームEV3」というロボットだ。パーツの組み合わせ次第でさまざまなロボットが作れる製品だが、使用しているのは車輪と距離センサーを備えた車両のような形のロボットだ。生徒は2人1組になり、プログラムを組んでこのロボットを指示通りに動かすことに挑む。

2人1組になり、相談しながらプログラムを組む
2人1組になり、相談しながらプログラムを組む

 取材に訪れた昨年9月21日の授業では、1メートル先のライン上にロボットを停止させるプログラムづくりが課題だった。川原田副校長が「電源を入れて、ブルートゥースで接続して」と声をかけると、生徒たちは手早く作業を開始した。さらに、「この状態で壁に向かってロボットを動かすと、どうなると思う。試してみようか」と川原田副校長が促した。

 生徒たちが席を離れ、実際にロボットを動かしてみると、ぶつかることはないが、壁際ぴったりには停止しない。ロボットが動く距離を指定されていないためだ。

 距離をプログラムしなければ、ロボットは正しい位置に停止できない。川原田副校長は「距離を指示するには、タイヤが1周するときの長さを知る必要があるよね。どうやって測ればいいかな」と問いかける。生徒たちから口々に「メジャーで測る」「印を付けてタイヤを転がす」などの答えが返ってくる。それを受けて「次は1ミリメートル動くときの回転角を出そう」と指示を出した。

 ここで数学の知識が生きてくる。タイヤの外周の長さが分かれば1周は360度であるから、1ミリメートル動くときの回転角は割り算ですぐに求められる。生徒たちはちょっと考えた後すぐに、パソコンを使い、計算した回転角をロボットに指示し始めた。

 お互いに意見を出し合い、「何でだろう」「こうすればいいのかな」など、思ったことを自由に口にしながら試行錯誤を重ねていく。最初はなかなかうまくいかないチームもあったが、意図した通りにロボットが停止したときには「やった」「できた」と元気な歓声が上がった。

 授業の後、生徒たちに感想を聞くと、「自分の操作で次の動きがどうなるか考えられるようになった」「友人と意見を交換しながらできるのがいい」という。考える力や、協働する力が養われていることが分かる。そして、多くの子供たちが「課題がだんだんと難しくなっているけれど、思った通りに動いてくれるとうれしい」と話した。「失敗しても次は頑張ろうと思える」「いろいろなことができるようになりたい」という声もある。みんな、好奇心いっぱいで授業に取り組んでいるようだ。

 「授業では生徒の自主性に任せ、あまり口出ししないようにしています。どうすれば思ったようにロボットが動くか考えることで、自分のアイデアや工夫が実現したときの楽しさを知ってほしいからです」

ロボット教育からSTEM教育への広がり

タイヤの回転角について試行錯誤し、答えを導き出す
タイヤの回転角について試行錯誤し、答えを導き出す

 川原田副校長によると、プログラミング教育は世界的な流れとなっており、イギリスやエストニアなど、小学校低学年から導入している国も多いという。日本では2020年から小学校で必修化する流れだが、「海外に比べると立ち遅れていることは否めません」。そこで、川原田副校長は、その状況を変えようと、2003年からロボット教育の研究を始めた。自ら教材やテキストを数多く作成し、小学校でロボットについての授業を実践するなど、この分野の草分け的存在となっている。

 プログラミング教育の意義について川原田副校長はこう話す。「プログラミングの授業は、正解が一つとは限りません。コンピューターに意図した動きをさせるためにどのような指示が必要か、答えにたどりつくために話し合い、いろいろな方法を試し、失敗もしながら、原因と改善の方法を探ることを通して、生徒は考える楽しさを覚えることができます。ロボット教材の場合、作ったものが目の前で動くのがいいと思います」

 ロボットやIT技術に触れ、自ら学ぶ力を養う教育は、近年、注目されている「STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)教育」ともつながっている。「ロボットにどのようなデータを入力すれば良いかを判断し、正しくプログラミングするためには、数学や物理などさまざまな教科の知識を活用することが求められます」

 実際、この日の授業では、数学の知識を使い、ロボットのタイヤの外周の長さから1ミリメートル動くときの回転角を求め、入力するという作業が行われた。授業で学んできたことが実際の課題の解決に役立つことを体験的に理解させることが狙いだ。

中1、中2でプログラミング授業をカリキュラム化

 同校は2019年度募集から、中学部で新たに「プログラミング」入試を導入する。従来の入試方式では評価できなかった「失敗から学ぶ力」「考え続ける力」などの資質を持った生徒を拾い上げたい狙いだ。

 また、同年度から中1と中2でプログラミングの授業を正式にカリキュラム化する。いずれは高等部にも広げて、英語版のテキストも使いながら少しずつ高度な課題に取り組んでいく予定だ。また、将来は他の授業でもプログラミングを活用したり、生徒に自分の作品を世界に発信させたりといった活動も視野に入れている。

 「いろいろなプロジェクト型の学習にプログラミングを取り入れ、プレゼンテーションに活用するとか、課題の解決に役立てるというケースも出てくるでしょう。また、自分で作ったアプリやキャラクターなどを発表し、それで収入を得ることができたら、より一層やりがいが増すはずです」

世界的なロボットコンテストにも参加する
世界的なロボットコンテストにも参加する

 同校は、生徒が「World Robot Summit」のような世界的なロボットコンテストに出場することもサポートしている。「世界中の同世代の力量を見て、何を感じ、どんな刺激を受けるかが楽しみです」と川原田副校長は話す。

 単なるコンピューター教育を超えた同校のプログラミング教育は、自由な発想や、あきらめずに努力する姿勢を養う。生徒たちはやがて、自ら考え、創造する力を持った人間に成長することだろう。

(文・写真:山口俊成 一部写真提供:相模女子大学中等部・高等部)

 相模女子大学中等部・高等部について、さらに詳しく知りたい方はこちら

60545 0 相模女子大学中学部・高等部 2019/01/17 05:20:00 2019/01/17 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190109-OYT8I50006-T.jpg?type=thumbnail

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