子育てと仕事を両立するキャリア教育…藤村女子

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 藤村女子中学・高等学校(東京都武蔵野市)は、中学1~3年生で「乳幼児ふれあい体験」を実施している。乳幼児と触れ合い、その母親たちの話を聞いて、子育てについて学ぶとともに、子育てと仕事の両立を目指すキャリア教育につなげるのが狙いだ。敷地内に教職員たちが利用する保育園を設け、仕事と子育ての両立について生徒たちに実感してもらう取り組みも行っている。担当する教諭らに話を聞いた。

乳幼児と触れ合い、母親たちから学ぶ

子育て中の母親に質問する生徒たち
子育て中の母親に質問する生徒たち

 中学2年生を対象にした「乳幼児ふれあい体験」1回目の当日は、地元の育児サークル「サニーママ武蔵野」から親子16組が参加していた。あいさつに立ったサークル代表の加藤真愛さんは「赤ちゃんの育ちに触れることで子育てしてみたいと感じたり、子育てしながら地域と(つな)がり、その地域に子どもを残して働きに戻ろうとしている母の感じていることを聞いたりしながら、子どもを産まなかったとしても、働きながら、地域で次の世代を育てていくことをイメージしてほしい」と、生徒たちに呼びかけた。

 中学2年生のふれあい体験は、「おもちゃの制作」をテーマとしている。1回目はお母さんたちの話を聞き、質問して理解を深め、実際に乳幼児と触れ合う。生徒たちは、この経験を踏まえて、どんなおもちゃを作ればいいか考え、実際に制作する。約2か月後の2回目は、そのおもちゃで乳幼児たちに遊んでもらい、さらに考察を深めていく。

 1回目の冒頭、サークルのメンバーの鈴木恭子さんが説明役に立ち、スライドを使って乳幼児の成長と、それに合わせたおもちゃについて話した。

 「6か月から1歳になる時期は、何でも口に入れてしまいます。なぜか分かりますか」と生徒たちに問いかけると、「歯が生えてきて、かゆいから」「気になるものは全身で確かめる」などと、さまざまな答えが返ってきた。ときには笑いが起こり、生徒たちの表情が和らいでいく。「母乳を飲んでいるので口が発達してくるのです。だから何でも口で確かめるようになります。この時期は、トイレットペーパーの芯の穴に入る大きさのものは、何でも飲み込んでしまう危険性があります」という鈴木さんの説明に、生徒たちは聞き入っていた。

育児の楽しさと大変さを実感

 次はいよいよ赤ちゃんと触れ合う時間だ。生徒4、5人の輪の中に2、3組の親子が入り、生徒が赤ちゃんを実際に抱き上げる。「めっちゃ、軽い」「泣いちゃった、どうしよう」と慌てる生徒もいれば、「焦ると、もっと赤ちゃんが泣いちゃう」と冷静な生徒もいる。生徒たちは、おもちゃで一緒に遊んでみたり、絵を描いてやったりして、思い思いに赤ちゃんと触れ合っていた。

 そして、生徒たちは事前に準備していた質問を次々と母親たちに投げかけた。

 「離乳食を作るのは大変ですか」「赤ちゃんにとって危ないことは、どんなことですか」「名前はどうやって付けたのですか」「働いていた時と今は、毎日どのように違いますか」。赤ちゃんの母親たちは、こうした質問に一つ一つ丁寧に答えていた。

 赤ちゃんの母親から「子育ては、自分のペースというわけにはいかないので、隙間時間のやりくりが上達します。言葉も通じない“生き物”を育てる忍耐強さは仕事にも役立ちそう」と聞いた生徒は、「将来は仕事もしたいので、両立していきたい」と話していた。別の生徒は「母も私を育てるのが大変だったろうな」と実感。親孝行を心がけていくという。授業は、生徒たちにとって、今後の人生設計を考えたり、現在の家族を改めて振り返ったりする貴重な機会となっていた。

 赤ちゃんの母親たちにとっても、有意義な時間になったようだ。説明役を務めた鈴木さんは「最近は育児放棄など暗いニュースが多いので、育児の素晴らしさを伝えたい」と、生徒たちに積極的に話しかけていた。日常の生活で中学生と接する機会がないという宮戸美尋さんは「自分の子が10年後はこう育つのかと感じ、逆に質問もしました。(この授業は)生徒のためだけでなく、ママのためにもなる企画」と満足そうだった。その他の参加者からも、街中で同校の生徒から子供が声をかけてもらえるようになったことで、「世代を超えた地域とのつながりを感じ、心強い」という声も聞かれた。

教科横断型のプログラム

サニーママ武蔵野代表の加藤さん
サニーママ武蔵野代表の加藤さん

 「乳幼児ふれあい体験」のプログラムが実現したのは、同校の児童文化部がハンドベルのボランティア演奏会を行っていた武蔵野市内の施設で、「サニーママ武蔵野」も活動していたことがきっかけとなった。

 児童文化部の小澤洋祐教諭は、乳幼児とのふれあいを通して「命の大切さ」を学びながら、「女性が活躍する時代に、どうやって仕事に復帰し、両立していくのか」を考えることができる授業を実現したい、と構想していた。その構想を同じ施設で活動していた「サニーママ武蔵野」代表の加藤さんに伝えた。

 「サニーママ武蔵野」は、武蔵野市の子育て支援拠点「子育てひろば みずきっこ」の運営も任されていて、そこでは、母親たちが子連れでボランティアをしながら、学生や高齢者との世代間交流をしている。加藤さんは「子育て中のお母さんたちが、地域活動の運営に参加することは、仕事復帰へのいいウォーミングアップ」と考えており、同校のプログラムにも協力を快諾してくれたという。

併設する保育園では、教職員の子供たちのほか地域の子供も保育している
併設する保育園では、教職員の子供たちのほか地域の子供も保育している

 打ち合わせを重ねて心配な点を一つずつ解消し、2015年に「乳幼児ふれあい体験」はスタートした。最大の特徴は、教科横断型のプログラムになっている点にある。おもちゃを作る時間は技術・家庭科、お礼の手紙を書く時間は国語、手遊び歌の練習をする時間は音楽といった具合だ。年間行事の一つとして取り組むようになり、武蔵野市の後援事業にも認定された。

 家庭科の櫻庭洋子教諭は、プログラムができる前は「家庭科の夏休みの宿題として、乳幼児とのふれあいレポートを課題に出していましたが、近所や親戚に乳幼児がいない生徒も多く、難しさを感じていました。そんな時に小澤先生の提案を受けたのです」と振り返る。

 加藤さんもプログラムを高く評価していて、「母親たちが奮闘する姿を通して、生徒が自分の人生のサイクルを見つめなおす一端となれば」と話した。

敷地内に保育園、仕事と育児の両立を間近に

プログラムを指導する櫻庭教諭(左)と小澤教諭
プログラムを指導する櫻庭教諭(左)と小澤教諭

 藤村女子中学・高等学校の敷地の一角には、保育園「fujimura ナーサリー」がある。

 「保育園が見つからず退職の危機にあった先生がいました。女子校であるのに、先生が出産で辞めてしまう状況を見せたくない、出産しても社会に活躍の場があることを見せる場をつくろうと、開園しました」。竹澤宏美園長は、2017年4月に開園した経緯について、そう話した。

 保育園は、教職員の子供のほか、地域の子供の保育も担っている。スタッフに藤村女子の卒業生がいるほか、在校生もボランティアで手伝いに駆けつける。竹澤園長は「藤村女子で生きる力を付けた生徒たちが、また、ここで力を発揮してくれています」と目を細める。

 乳幼児ふれあい体験や、敷地内にある保育園を通じ、生徒たちは子育てと仕事の両立について身近に考えることができる環境にある。命をつなぐことの大切さを知った彼女たちが、将来どんな生き方をしていくのか楽しみだ。

 (文・写真:小山美香)

 藤村女子中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

54387 0 藤村女子中学・高等学校 2018/12/18 05:20:00 2018/12/18 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181213-OYT8I50017-T.jpg?type=thumbnail

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