校長に聞く、東大・京大入試改革と新テスト

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 入試制度が大きく変わろうとしている。

 文科省は2020年度から現行の大学入試センター試験を廃止して「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の導入を目指している。また、2016年度からは、東京大学が推薦入試を、京都大学が特色入試を導入する。

 入試改革によって中学高校の学びはどのように変わっていくのか。灘中学校高等学校(兵庫県神戸市)の第8代校長、和田孫博先生に聞いた。

中等教育は大学入試のためだけのものではない

――今の中学1年生から大学受験制度が大きく変わると言われています。

灘中学・高等学校の第8代校長の和田孫博先生
灘中学・高等学校の第8代校長の和田孫博先生

 大学入試が変われば、我々中学高校も変わらざるを得ません。しかし、中等教育は大学入試のためだけのものではありません。小学校を初等教育、大学を高等教育と言いますが、これをつなぐ中学高校が中等教育です。子どもから大人への過渡期で、思春期という難しい時期でもあります。

 中高6年間で大人として必要な知識や考え方をしっかりと身につけておかなければなりません。18歳から選挙権をということが議論されているのでなおさらです。また、大学では専門教育を中心にという傾向なので、中高時代にこそリベラルアーツ教育といった基礎的な知識と教養を身につけておくことも必要でしょう。

 本校の授業は、こんなことまで学ぶのですか、というような内容まで、生徒が関心を持てばどんどん広めていきますし、深めてもいきます。極論を言えば、入試がなくても、生徒は学ぶし、教員は教えます。

 私は英語の教員ですが、英語の外部テストの採用には危惧しています。英語の読む、聞く、話す、書くの4技能を伸ばしていく教育はもちろん大切ですが、高校の英語の授業が外部テストの対策授業になってしまうとしたら、日本の未来はどうなるのか。国が滅びるのではないか。大学入試改革に目が行くのは当然でしょうが、中等教育は大学入試のためだけのものではありません。

――改革では、知能・技能だけでなく思考力・判断力・表現力や主体性・多様性・恊働性という真の学力の育成と評価に取り組むとあります。

竣工(しゅんこう)2年目の新しい生物室
竣工(しゅんこう)2年目の新しい生物室

 私学にはそれぞれ建学の精神があります。本校は「精力善用」「自他共栄」を校是に掲げています。「精力善用」は、自分の長所短所をしっかり知り、自分の持つ力を最大限に利用すること。「自他共栄」は、自分の個性をいかし、他者の個性もいかし共存共栄できるような生活を送ろうという意味です。

 灘の生徒は個性的で、私たち教員は、その個性を潰すことなく伸ばしてあげたいと思っています。ガリ勉の多い学校と思われているようですが、そんなことはありません。

 物理や化学などの国際オリンピックに日本代表として選抜される生徒たち。変わったところでは、パワーリフティングを極め日本代表として国際大会に出場した生徒もいます。山登り、天体、鉄道、囲碁、音楽が好きと対象は様々ですが、そのことが好きなので、強制されなくても、主体的にどんどん極めていきます。

 結果、生徒の中に多様性が生まれます。自分の個性を大切にしてもらえることで、他の人の個性も大切にします。改革の文言が示す真の学力を育成する風土があります。授業だけでなく課外活動などでも、能動的な学びの機会がたくさんある学校です。

 能動的な学び、つまり「アクティブ・ラーニング」も今回の改革で取り上げられているのですが、タブレットをはじめとしたICT教育の進化も同時に進んでいることもあり、アクティブとインタラクティブが混同されているのではないか、と感じることがあります。

 生徒が能動的に学ぶことと、単なる双方向的な学びとは、まったく異なるものです。

アドミッションポリシーの日本での課題とは?

――東京大学と京都大学が新しい入試制度を設けました。

生物室の丸椅子は「博物」が教科にあった時代から使用してきた年代物だ
生物室の丸椅子は「博物」が教科にあった時代から使用してきた年代物だ

 国立大学、私立大学を問わず、それぞれの大学にはアドミッションポリシー(入学者の受け入れ方針)があり、それぞれの大学が入学してきてほしい生徒を選びます。従来からの個別入試は、大学が独自に出題し、独自に採点し、合否を決めます。仮に似たような問題であっても、部分点の付け方は大学によって異なります。

 それを、生徒たちは、なるほど、こういった学生が欲しいのか、と大学のメッセージとして受け止めます。挑戦した大学に選ばれなくても、仕方ない、自分の努力が足りなかった、あるいは相性が悪かったなどと思い、もう1年余分に勉強する者もいれば、相性のあう、つまり合格をもらったほかの大学で学ぶ生徒もいます。

 指定校推薦制度は、大学が求める水準を満たした生徒を校長が、「この生徒は条件にかなっていますよ」と責任を持って推薦することで入学を許可されるものです。

 東京大学の推薦入試と京都大学の特色入試は、推薦後に選抜があります。入学を許可されないこともあるのです。加えて、東京大学の推薦人数は各高校、男女各1人です。

――灘は男子校なので1人だけですね。

柔道場に掲げられた校是の書は同校(旧制灘中)の設立にかかわった講道館柔道の創始者、嘉納治五郎によるもの
柔道場に掲げられた校是の書は同校(旧制灘中)の設立にかかわった講道館柔道の創始者、嘉納治五郎によるもの

 そうなります。共学校は2人推薦できるのに、男子校は1人だから不公平ではないかということでなく、大学が求める条件を満たす生徒が何人もいて、そのうち複数の生徒が推薦を希望した場合、その中から1人を選ぶことを、高校に託されることはどうなのか……。選抜されなかった生徒はなぜだと思うでしょうし、その判断は高校でなく、大学にしてほしいと望むのではないでしょうか。

 日本の国公立大学の仕組みは、前期、中期、後期と最大3校しか出願できません。アドミッションポリシーに合致した学生の入学をさらに進めるのであれば、もっと多くの大学を受験できればいいと思います。名門校と言われるアメリカの私立大、ハーバード大学であっても、入学するのは合格者の8割程度。本校の生徒たちも、アイビー・リーグの複数の大学から合格をもらい、その中で、自分が学びたい大学を最終的に選ぶということをしています。

 本校では、偏差値などをもとにした受験指導はしていません。どこどこの大学を受けるようにといった指導もしていません。ただ、制度が変ることで、生徒が迷わないように、しっかりと配慮していかなければなりません。(文と写真:水崎真智子)

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302581 0 灘中学校高等学校 2015/06/22 08:25:00 2015/06/22 08:25:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20150619-OYT8I50133-T.jpg?type=thumbnail

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