読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

世界で競う生徒を輩出する教育…灘中高

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

「世界に出る先輩を見て後に続く生徒がいる」と語る大西衡教頭
「世界に出る先輩を見て後に続く生徒がいる」と語る大西衡教頭

 灘中学校高等学校(兵庫県神戸市)には、科学オリンピックや国際シンポジウムに参加し世界の同世代と交流する生徒が多数いる。このような国際舞台へと出ていくために同校ではどんな教育が行われているのか。

 科学オリンピックについては大西衡教頭に、国際交流については英国異文化研修・国際交流担当の三窪法正教諭に話を聞いた。

好きな分野に打ち込む風土

――東京大学の推薦入試の募集要項には「科学オリンピックでの顕著な成績」とありました。ハードルの高い科学オリンピックの出場者には灘校生が多いですね。

 大西…2015年は数学、物理、生物学、地学、地理の科学オリンピックで、生徒たちが日本代表に選抜されました。科学オリンピックのほかに、言語学オリンピックで選抜された生徒もいました。

――日本代表として選抜されるのはどんな生徒ですか。

 大西…選ばれて世界に出ていく生徒たちは、その勉強に相当な時間を注いでいると思います。数学なり物理なり、その分野が好きで仕方ないと努力は続かないでしょうね。

 灘の生徒には、野球が好き、アニメが好き、碁が好き、物理が好き、といったように打ち込む分野をそれぞれ持つことで「○○に関しては、あいつがすごい!」と認め合う風土があります。ある生徒の場合はそれが特定の科学分野で、その延長線上に科学オリンピックへの参加があるということです。

 日本の代表に選抜されるのですから、教師から見ても、その分野においては、すごいな、と感心します。優秀だとは思いますが、すべての教科について満遍なく優れているかというと、そうでない生徒もいます。むしろそれが普通かもしれません。

――オリンピック出場に特化した指導はあるのでしょうか。

先生や生徒のリクエストで高校の学びを超えた理系の蔵書も並ぶ図書館
先生や生徒のリクエストで高校の学びを超えた理系の蔵書も並ぶ図書館

 大西…学校では科学オリンピックのポスターを貼って告知するくらいです。科学オリンピックに向けた講座を設けることもしません。

 もちろん本校の生徒ですから、各教科の教員は、生徒に聞かれれば質問には答えますし、相談されればアドバイスもしますが、生徒の主体性に任せています。

 本校の図書館には図書分類でいうところの4類、自然科学の蔵書が多いのです。数学、化学、物理、天文学、宇宙などの専門書は高校生にとって高価なものが多く、公共の図書館にはなかなかありません。このため、授業に関係なく自分で学んでいこうという生徒を応援する意味でもなるべくそろえるようにしています。

 世界大会に出場した生徒たちは、同じ興味や関心を持った世界中の同世代と交流することで、刺激を受けてくるようです。母国語が英語でない国の生徒も多く、やはり英語でのコミュニケーションとなるので、英語力を高める機会になったという生徒もいます。

 参加することは良いことだと思います。毎年、生徒たちの中で興味がある者が、興味のある分野に自主的にエントリーしてくのが実情で、学校として何か特別に取り組んでいるということではなく、生徒個々人の努力の成果です。

――オリンピック出場に特化したクラブ活動はあるのでしょうか?

 大西…科学オリンピック出場を目的としたクラブ活動はありませんが、クラブの先輩から刺激を受けてオリンピック挑戦を決意する生徒はいます。好きな分野の勉強を、ひとりでコツコツやっていく生徒もいれば、気の合う仲間と一緒にという生徒もいます。

 世界に出ていく先輩を身近に見て、それに続く生徒が出てくるという効果はあると思います。

高1の夏、世界の同世代と交流

――修学旅行や語学研修で生徒を海外に引率する学校もあります。海外での活動について、御校の取り組みにはどのようなものがありますか。

英語科主任で英国異文化研修・国際交流担当の三窪法正教諭
英語科主任で英国異文化研修・国際交流担当の三窪法正教諭

 三窪…高1の夏休みの2週間、イギリスのボーディングスクール(寮のある学校)で世界各国の同世代と交流します。ロシアやフランスなど英語を母国語としないさまざまな国の生徒とも、英語を使えばコミュニケーションが図れ、異文化を理解できる。そのことを目的としているので、英語研修でなく異文化研修と呼んでいます。

 研修先は「ウィンチェスター・カレッジ」と「ラドリー・カレッジ」にそれぞれ25人で計50人の希望者を募ります。

――1学年200人強ですから、およそ4人に1人が、この研修に参加できるのですね。

灘校生が参加した国際シンポジウムの論文が収められた報告書の数々
灘校生が参加した国際シンポジウムの論文が収められた報告書の数々

 三窪…国際交流はこの異文化研修の他に、国際シンポジウムへの参加があります。ウィンチェスター国際シンポジウムは、世界の10の高校が順番に毎年主催するもので、この春も3月17日から23日までの1週間、コロンビアのカラォストロ・モダーン学校で行われた第7回シンポジウムに、生徒2人を引率して参加してきたところです。

 各校2人、合計20人の高校生らが、プレゼンテーションし、ディベートをします。毎回、テーマに沿った一流の研究者らがゲストパネラーとして登壇するので、生徒たちも刺激を受け、非常にレベルの高いシンポジウムとなっています。第7回のテーマは、Traditional Music ‐ The Expression of Our Cultureでした。

――御校の他に日本から参加する学校はありますか。

2016年3月にコロンビアで行われたウィンチェスター国際シンポジウム
2016年3月にコロンビアで行われたウィンチェスター国際シンポジウム

 三窪…いいえ、本校だけです。ウィンチェスター国際シンポジウムは、イギリスのウィンチェスター・カレッジが世界の学校に声をかけ、10の高校によって運営している企画です。国を代表して参加するというものではないのです。

 参加校のある国は、南アフリカ、コロンビア、インド、チェコ、パキスタン、アメリカ、シンガポール、中国、イギリス、そして日本です。

 毎年行うシンポジウムには、シンポジウムの先頭にホスト校の名前を入れます。コロンビアで行われたものは、Colegio Claustro Moderno ‐ Winchester International Symposium 2016が正式名称です。18年には本校がホスト校になる予定ですので、Nada High School ‐ Winchester International Symposium 2018となります。

――まさに学校が主体的に関わっている企画ですね。

ハナアカデミーソウルシンポジウムの1シーン(2012年8月)
ハナアカデミーソウルシンポジウムの1シーン(2012年8月)

 三窪…参加生徒の航空運賃の半額を本校が負担し、滞在費はホスト校が負担します。

 ソウルのハナ高校で行われるハナアカデミーソウルシンポジウムも、参加者の航空運賃の半額を本校が負担しています。滞在するのはハナ高校の寮ですし、費用負担の心配をせず挑戦できます。

 ハナアカデミーソウルシンポジウムは、日本、中国、シンガポール、タイ、インドネシアの国々の高校生たちが英語で議論し交流する機会です。3人1チームとなりエントリーし、出場チームの選抜があります。

 生徒が海外に出ていくもので学校が主体的に関わっているのは、英国異文化研修と、この二つのシンポジウムが主要なものです。他には、例えば文部科学省など公の機関が関わったり、あるいは公共性が高かったりする研修、シンポジウムについては、生徒にとって意味あるものかどうかをその都度、判断しています。

――ウィンチェスター国際シンポジウムもハナアカデミーソウルシンポジウムも生徒にとって狭き門ですね。

 三窪…高校生になると、夏休みに行う英国異文化研修の事前説明会を実施します。その場で生徒に強調するのは、英国異文化研修の体験の先に、ウィンチェスター国際シンポジウムやハナアカデミーソウルシンポジウムがあるということです。

 こういった経験を重ねることで、海外の大学への進学へと心を固めていった生徒たちを、教員として見てきたので、そのことを高1生に伝えています。

 大切なのは、そういった道筋もあるということなのです。ただし、学校として海外の大学への進学を推奨することはまったくありません。むしろ大きな覚悟のいることなので、国内の大学への進学もアドバイスしています。もちろん、生徒本人が海外校の受験を決めた場合は、英文での出願書類の作成をはじめ学校として対応できる体制を整えています。

英語での議論の中身が大事

――灘校には、東京大学とアメリカの名門校の両方に合格する生徒も毎年のようにいます。海外暮らしの経験を持つ英語が堪能な生徒なのでしょうか。あるいは特別に優秀な生徒なのでしょうか。

 三窪…中学に入学するまでに海外で暮らした経験を持つ生徒もいますが、海外旅行程度でそういった経験を持たない生徒も、国際シンポジウムに参加しアメリカのトップレベルの大学に進学しています。

 これらの大学で学んでいくには高い英語力が求められるので、高校生のうちからそれなりの勉強をすることになります。高い意欲を持ち続けるためにも、異文化研修や国際シンポジウムは、節目の目標になっているでしょうし、参加し体験することで受ける刺激には大きな価値があると思います。しかも、これらの体験を高校生の頃にすることに意義があると思います。

 優秀だから挑戦できるのでなく、中学・高校の6年間でいろいろな刺激を受けながら、自分の好きなこと、打ち込めることを定めていくという過程を生徒の中に見ます。

 生徒会長もし、校外のいろいろな催しにも自主的に参加し、ウィンチェスター国際シンポジウム、ハナアカデミーソウルシンポジウムの両方に選抜されるという優秀な生徒もいました。

――どうやって英語力を伸ばすのでしょうか?

 三窪…生徒らに聞くと、やはり普段の授業の中で学んだことを丁寧に自分のものにしていくようです。ハナアカデミーソウルシンポジウムは3人で1チームなので、気の合った仲間同士でチームを作るようです。選考は英文での小論文です。もし先生にネイティブチェックをしてほしいのであれば1週間前には用意しなさいと助言しています。ただ、たいてい生徒たちは、締め切りギリギリまで練るので、先生のチェックなしに自分たちの頭の中の知識を総動員してなんとか仕上げています。

 国際シンポジウムでも、海外大学の受験も、英文での小論文が不可欠です。小さな頃から英語に親しむことに反対はしませんが、高校で求められる英語小論文で必要なのは深い教養です。小学生や中学生のうちから、さまざまなことに触れ、自分でしっかり考えることに取り組んでほしいですね。

 それに本校では、海外暮らしの経験のある生徒も、低学年から英語を学んできた生徒も、そうでない生徒も、中学1年生はみんな一緒にABCから始めます。

 先に、本校では英語研修ではなく“異文化研修”と呼ぶと言いましたが、ネイティブのようなきれいな発音での英語運用能力でなく、英語という道具で世界のいろいろな人たちと議論することに価値があると考えています。英語を話せることでなく、議論の中身が重要で、そのためには年齢にふさわしい教養を身につけることが大切です。

 (文と写真:水崎真智子 写真提供:灘中学校高等学校)

 灘中学校高等学校のホームページはこちら

無断転載・複製を禁じます
299523 0 灘中学校高等学校 2016/05/16 05:40:00 2016/05/16 05:40:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20160513-OYT8I50048-T.jpg?type=thumbnail

会員校一覧

東日本 共学校ページTOP

── 女子校ページTOP

西日本ページTOP

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)