「紛争地の赤十字活動」英語で学ぶセミナー…中学受験サポート

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 中学受験サポートは10月16日、赤十字国際委員会駐日事務所のリン・シュレーダー(Linh Schroeder)代表を講師に招き、東京・大手町の読売新聞東京本社でセミナーを開催した。セミナーは司会も含めて英語で行われ、シュレーダーさんは「世界の紛争地で活動する赤十字国際委員会とは」と題して、映像を交えて1時間余り講演。首都圏の中高一貫12校から参加した計75人の生徒たちは、日ごろ鍛えている英語力を生かして熱心に耳を傾け、紛争国の厳しい現状とともに、国際協力の仕事のやりがいに目を開かされたようだった。

銃を持ったアフガンの子供兵士たち

生徒たちの席に歩み寄り、語りかけるシュレーダーさん
生徒たちの席に歩み寄り、語りかけるシュレーダーさん

 この日のセミナーには、江戸川学園取手、桜蔭、吉祥女子、品川女子学院、聖ドミニコ学園、多摩大学附属聖ヶ丘、東京家政大学附属女子、東京女学館、桐朋女子、明星学園、目黒学院、横浜雙葉の12の中高一貫校から生徒ら75人が参加した。

 講師のシュレーダーさんはベトナム生まれ。大学や大学院で国際法などを専攻し、1997年に赤十字国際委員会(International Committee of the Red Cross=ICRC)に入り、ウクライナ、セルビア、ルワンダなどの世界の紛争地で人道支援活動に携わってきた。2015年3月から同委員会の駐日事務所代表を務めている。

 シュレーダーさんは講演で、自己紹介の後、武力紛争の現状について語り始めた。世界では病気で亡くなる人のほうが多いものの、「The conflict still remains a harsh reality for many people in some countries(いくつかの国の多くの人々は、今なお紛争の厳しい現実に直面しています)」と指摘した。

 大きな戦闘が行われ人道的にも深刻なシリア。長年にわたり紛争が続くアフガニスタン。日本の陸上自衛隊も派遣された南スーダン。さらにロシアの隣国ウクライナ……。シュレーダーさんは世界の紛争国を挙げていった。

 会場のスライドには、難民がひしめき合うボートや、銃弾が撃ち込まれた救急車など、紛争地の現実を伝える生々しい写真が映し出された。シュレーダーさんは銃を手にした3人のアフガニスタンの少年を指し、「これは何か分かりますか」と生徒たちに語りかけた。

 「Child soldiers.This is also a phenomenon that happens more and more in conflicts today(子供兵士です。これも今日の紛争の中で次々と起きている現象なのです)」と訴えた。紛争地で生まれ育ち、戦うことを強いられる子供兵士たちに、世代の近い生徒たちは自分を重ね合わせたようだった。

「難民ゲーム」で苦難を実感

「難民ゲーム」で写真カードを選ぶ生徒たち
「難民ゲーム」で写真カードを選ぶ生徒たち

 シュレーダーさんは続いて、難民として逃げる旅を疑似体験する「Refugee Game(難民ゲーム)」を生徒たちに紹介した。

 自分の村に敵が迫っているという想定で、無事逃げるのに最も大切な五つの物品を手元にある15の物品から急いで選ぶというサバイバルゲームだ。生徒たちはテーブルごとに2、3人で一つの「家族」になり、物品を示す15枚の写真カード(スープの缶詰、コメ、水筒、毛布、1冊の本、ナイフ、携帯電話、パスポート、宝石の指輪、千円札、クレジットカードなど)から、話し合って五つのカードを選び取った。

 現金やクレジットカード、宝石といった金目の物を選ばなかった生徒たちに、シュレーダーさんは「ごめんなさ~い」と日本語でおどけて見せ、不正解であることを伝えた。また、会場を歩きまわりながら、重くかさばる物を選んだ生徒を見つけるや、「This one,you have to throw away」(これは捨てなければいけませんね)などと笑顔で声をかけていた。

 難民たちを乗せるボートの船長や、たどり着いた他国の国境警備員などにお礼を渡すため、ときには金品が必要になるのも現実だ。また、粗末なボートが重みで沈まないように、自分のポケットに入れたりできるもの以外は、捨てなければならないという厳しい制約もある。難民の逃避行の苦難や生き延びるための知恵を、生徒たちはゲームを通して学んだ。

戦争にもルール「国際人道法」

シュレーダーさんは身ぶり手ぶり、ユーモアも交えて語った
シュレーダーさんは身ぶり手ぶり、ユーモアも交えて語った

 武力紛争と難民の現実について話した後、シュレーダーさんは、別の大きなテーマを投げかけた。「Even wars have limits.The rules to fight(たとえ戦争でも許されないことがある。戦うときのルールです)」

 戦時には敵の兵士や軍事施設を攻撃することは正当化される。しかし民間人の子供を殺すことは許されない。救急車を狙い撃つこともいけない。そうしたルールが国際人道法(International Humanitarian Law=IHL)という国際法に示されていることを、シュレーダーさんは説明した。

 このため、戦場では戦闘員と民間人などの区別(Distinction)が重要になると強調。また、軍事目標を攻める場合でも、民間人が巻き添えにならないように、攻撃の必要性と人道的な配慮を天びんにかける均衡性(Proportionality)という考え方も、国際人道法を守るうえで大切だと指摘した。

捕虜の生活調査や家族の再会手助けも

 そうした上で、赤十字国際委員会(ICRC)が世界各地でどんな活動をしているのかを、シュレーダーさんは紹介していった。

 最初に挙げたのは、「to assist people affected(被災した人々を支えること)」。紛争で家を失うなど悲惨な状況にあえぐ人たちに、命をつなぐ食料や水、衣服、仮の住まい、そして医療を届ける生活支援活動だ。

 また、捕虜(Prisoners of war)の収容施設を訪れ、人間としてふさわしい生活環境で、正当な扱いを受けているのかを調査することも重要な活動だと説明。さらに、紛争などで散り散りになった家族を探し、再会に導くことも大切な役目だと話した。

映像で赤十字の活動と戦争の悲惨をアピール

スクリーンには銃撃された救急車など紛争地の写真も
スクリーンには銃撃された救急車など紛争地の写真も

 赤十字国際委員会が制作した三つの映像作品も上映された。

 最初の「戦時の決まりごと」は、国際人道法の理念をアニメ映像で分かりやすく紹介。「ストーリー・オブ・ラブ~ICRCの活動」では、1世紀半にわたり80を超える世界各国で人道支援活動を続け、ノーベル平和賞を最多の3回受賞した赤十字国際委員会の活動内容を伝えた。

 最後は、「希望:彼女の命を救えなかった理由」というドキュメンタリー風の短編ドラマ。腹から血を流して苦しむ1人の少女を励ましながら、父親が自動車で病院へと急ぐが、やっとたどり着いた大きな町の病院は、既に戦火で破壊されていたというストーリーだ。戦時にも医療機関は標的にしてはならないという説明の後、「病院がなくなる。希望がなくなる」のテロップが画面に流れた。

 最後にシュレーダーさんは生徒たちへのメッセージとして、もっと多くの日本人が海外に出て、赤十字国際委員会などで支援活動に取り組んでほしいと要望。また、将来たとえ日本国内にいても、海外で何が起きているのかについて関心を持ち、人々を助けようという気持ちがあれば、出来ることはたくさんあると強調した。そして、次の言葉で講演を締めくくった。

 「Whatever you do,I will advise three P‘s――to be patient,persistent,and passionate(何をするにしても、三つの「P」を忘れないでください。辛抱強く、粘り強く、そして情熱を持って)」

理想の平和へ紛争防ぐ話し合いを

生徒の質問に耳を傾けるシュレーダーさん
生徒の質問に耳を傾けるシュレーダーさん

 講演後は英語による質疑応答が行われた。最初に目黒学院高校1年の川越慎之介君が「紛争のない日本では、どんな活動をしているのですか」と質問。シュレーダーさんは、日本政府などに活動費の支援を求めているとともに、アフリカのコンゴ民主共和国の少年兵士を描いた漫画「14歳の兵士ザザ」(学研パブリッシング)を2015年に発行するなど、紛争国の実情や国際赤十字委員会の役割を伝える広報活動にも取り組んでいると答えた。

 続いて、聖ドミニコ学園高校2年の高橋智路瑠(ちろる)さんが「自分さえ幸せならいいという人間の利己的な考えが、紛争がなくならない原因だと思います。どうしたら解決できますか」と問いかけた。

 これに対して、「とても良い、でも難しい質問ですね」と話したシュレーダーさんは、現実的に紛争はすぐにはなくならないかもしれないが、平和という理想を見失わず、紛争がもたらす悲惨さを見つめ、それを防ぐ手立てを話し合ってほしい、「Until we reach the point(その地点にみんなが到達するまで)」と語りかけた。

 最後に、生徒たちはシュレーダーさんや、英語での司会を務めた読売新聞東京本社調査研究本部の林路郎研究員と並んで、学校別に記念撮影を行った。閉会後もシュレーダーさんを囲み、語り合う生徒たちの姿が見られた。

 参加した吉祥女子高校2年の長澤碧葉(あおば)さんは「日本に暮らしていることをありがたく思う一方で、国内にいてもできる国際協力を考える機会になりました。将来、赤十字国際委員会でぜひ働きたい。特に紛争で離れ離れになった人たちを助ける仕事をしたいと思いました」と感想を述べた。

 将来、グローバルな世界での活躍を夢見る生徒たちにとって、シュレーダーさんの話は大きな励みになったようだ。

 (文・写真:中学受験サポート)

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48699 0 トピックス 2018/11/15 05:20:00 2018/11/15 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181109-OYT8I50033-T.jpg?type=thumbnail

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