新大学入試に対応した「探究学習」…安田学園

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 大学入学試験が2020年から変わる。各校がどんな対応をしているか気になるところだ。今から7年前、安田学園中学校・高等学校(東京都墨田区)は、3年かけて新プログラムをゼロから作り上げた。基礎学力をしっかり身につけ、タフな大人へと育っていくために「探究力」を育成するというものだ。この安田学園の「探究学習」について、教育企画主任の物部昌太郎教諭と広報本部長の金子直久教諭に聞いた。

5年かけて東大合格を目指す探究力を養う

 創立90年あまりの伝統校であるが、新校舎竣工や新コース新設、共学化と、近年、改革を進めてきた安田学園。3年前には中高一貫「先進コース」を加えた。東京大学など難関国立大学を目指すコースだ。基礎学力をしっかり身につける学習習慣の確立や教科指導に加え、根拠をもって論理的に考える力を育成する「探究学習」というプログラムを実施している。

深い思考が求められる難関大学入試への対応力

 中高一貫校は、6年を一つのまとまりとして見渡し、学びを組み立てることができる。同校の「探究学習」は、大学受験の準備に集中する高校2年の夏までに完成する仕組みとしている。まず、全体像を見てみよう。

 中学1年で生き物の採集や観察を通して、疑問を持ち、仮説を立て、それに基づいてディスカッションし、まとめて発表するという一連の流れを体験する。

 中学2年では1年時の自然科学分野に社会問題の視点を加味し、観察から発表までの流れを身につける。

 中学3年は論文作成に取り組む。情報を集め、仮説を立て、議論し、論文としてまとめる作法を、1年かけ学ぶ。夏休みにはカナダ語学研修を行う。

 高校1年では少人数のゼミ活動を通じ、論文を完成する。

 高校2年の1学期は論文を英語に翻訳する。7月の英国研修で英語によるプレゼンテーションを行う。

 このように、学年に応じた取り組みで、論理的に考える力を段階的に養っている。中学では総合的な学習として週1コマ、高校では週2コマを充てている。

3時間じっとゾウを見る

 具体的にはどんなことをするのだろうか。

 中学1年では、上野動物園を年3回訪問し、夏休みには東京海洋大学で研修する。

 「上野動物園では解説員のサポートのもと、初回は動物観察を行ないました。2016年は脚がテーマでした。ゾウの前脚と後ろ脚はどう違うのか、水鳥の脚の水かきの形の意味、キリンの脚の特徴など、生徒らは関心を持ったテーマを見つけ、それについてより深く考えていきます。象を3時間にわたり細部まで観察した生徒もいました。まだ十分に社会性が備わっていない中学1年生には、観察によって仮説を立て、考えを進めることができる生物分野がふさわしいのです」と、中1で自然観察を行う意味を物部教諭は語る。同校のこの方針は、東京海洋大学での研修の扉も開けた。

東京海洋大学敷地内の海岸で生物を採集する生徒たち
東京海洋大学敷地内の海岸で生物を採集する生徒たち

 「最初に東京海洋大学に相談した時、スーパーサイエンスハイスクールなどの高校生しか受け入れないとのことでした。本校の考えを粘り強く説明したところ、中学1年生を初めて受け入れていただけることになりました。大学内の館山ステーションで大学院生のサポートのもと、敷地内の海辺での採集、観察、実験、検証、そして発表を行っています」

 適切なサポートのもと体験を重ねることで、生徒たちが成長するのを物部教諭は目の当たりにしているという。

 「中学1年生がグループでディスカッション中に、『それって疑問といえないよね』と発言するのを聞いてうれしくなりました。疑問を持ちましょうと言うと、たとえば魚の口はどこかというような、見ればわかることを言ってしまいがちです。そういった段階を超え、課題を設定するとはどんなことかを理解しているからこそ、先の言葉は出てきます」

社会性、論文指導、英語力を鍛える

中学3年時にカナダで行う語学研修。英語学習への意欲を高める生徒も多い
中学3年時にカナダで行う語学研修。英語学習への意欲を高める生徒も多い

 中学2年も学校を飛び出す。夏休みには、奥多摩湖畔の森に生息する動物の痕跡をたどるアニマル・トラッキング、そして「東京都奥多摩都民の森」で間伐体験をする。人工湖の役割、里山の変化、人が入らない森の管理など、疑問に社会性が加わる場所を設定している。

 「1年目の探究を更に発展した学びにしたいと、都に中学生が間伐体験できるようお願いしました。体験して終わりでなく、その後も週1回の授業のなかで疑問に対する仮説の検証を重ねていきます。野外研修は、夏休みの数日間ですが、生徒たちはたくさんのものを持ち帰っています」

 中学3年では1年かけ論文を仕上げる。毎年、テーマを設定する。2016年は「少子化」だ。1、2年では、担任に加え理科の先生が加わる2人体制だが、3年では担任と国語の先生によるペアだ。1学期は調べ学習が中心で、関連する新聞記事などを集め、各自が持ち寄り共有する。ディスカッションもする。夏休みにはカナダで2週間、ホームステイによる語学研修を行う。2、3学期と論文指導は続く。文章を磨く文系の学びが中心の1年間だ。

生徒数人に先生1人のゼミで磨き上げる

「探究学習」をゼロから組み立てた教育企画主任の物部昌太郎教諭
「探究学習」をゼロから組み立てた教育企画主任の物部昌太郎教諭

 高校1年はゼミを行う。2016年は、数学、英語、人文、社会、生物の5講座を開講。希望者を募り、数人程度のゼミを実施している。論文指導は中3で1年かけて行っているため、ゼミでは口頭発表とディスカッションが中心だ。

 「私は2016年の社会のゼミを担当しています。イスラム国をテーマに、1学期は調べ学習に取り組んでいます。私から必読書や資料を指定しますし、各自が必要と考えることを調べてきます。そして、情報と疑問を持ち寄り議論します。その過程で、自分なりのテーマを定め、学年末に向け論文へと仕上げます。イスラム教とイスラム国、テロや難民など切り口は多彩。生徒自身が自ら課題を見いだすことが何よりも大切なのです」と物部教諭は力説する。

 学年末にまとめた論文を、高校2年では、担任と英語教諭、ネイティブの先生と共に、英語でのプレゼンテーションに向け準備する。7月に行う5泊7日の英国研修の際、オックスフォード・カレッジで発表する。もちろん英語だ。英国滞在中は大学のドミトリー(寮)で過ごす。空港の出迎えから大学生が同行し、行動を共にする。シェークスピアの生家やストーンヘンジなどの見学も、大学生や大学教授が同行し解説を受けながら見学する。

 「探究学習1期生は現在、高校1年生。来年の英国研修に向け頑張っています」と物部教諭は言う。

 

2020年大学入試改革と多くの共通点

伝統校の改革と広報に取り組む広報本部長の金子直久教諭
伝統校の改革と広報に取り組む広報本部長の金子直久教諭

 大学入試センター試験に代わり、2020年から「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称)がスタートする。入試が変わることで、大学教育も高校教育も変わっていく。高大接続システム改革会議の最終報告が公開されたのは今年3月のことだった。

 同校が目指すところと、国が目指す大学入試改革に大きな違いがないばかりか、「本校がこだわってきたことが書かれているようで驚きました」と金子直久教諭は言う。

 探究学習を開始しすでに4年。年度を重ねることで指導方法はブラッシュアップされている。生徒たちも先輩たちの探究発表のこれまでの成果を蓄積し、発表内容は年々レベルアップしているという。先取りする形でスタートを切った同校のこれからに注目したい。

(文と写真:水崎真智子 一部写真提供:安田学園)

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299689 0 安田学園中学校・高等学校 2016/09/14 05:50:00 2016/09/14 05:50:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20160913-OYT8I50022-T.jpg?type=thumbnail

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