「自分の意見を表現できる」真の英語力を養う…聖ヨゼフ学園

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 聖ヨゼフ学園中学・高等学校(横浜市)は、「自分の意見を表現できる英語力」を重視し、2017年度、高校に「アドバンスト・イングリッシュコース」を設置した。教室では、現実に世界で起きている諸問題をテーマに、生徒たちは英語で意見を伝え合っている。2020年からの男女共学化を含め、今後、目指す教育のあり方を担当教諭らに聞いた。

グローバルな問題について英語で話し合う

 同校は昨年度、高校に「アドバンスト・イングリッシュコース」を設置した。高2生が9人(1人留学中)、高1生が17人(2人留学中)、このコースを選択している。このコースでは、英字新聞やアメリカのニュースサイトなどを題材とし、世界で起こっているあらゆる問題について話し合っている。

世界のマラリアの死亡率について英語で話し合う生徒たち
世界のマラリアの死亡率について英語で話し合う生徒たち

 取材に訪れた10月9日、高2の「アドバンスト・イングリッシュ2」の授業は、国連統計局発表の「国別の0~4歳の人口10万人あたりのマラリア死亡者数」をテーマに行われていた。

 教室内では8人の生徒たちが机を丸く並べ、グラフを見ながら「ナイジェリアでは、マラリアの死亡率が最も高く、10万人あたり100人の乳幼児が亡くなっています」「このグラフでは10万人あたりの死亡者数20人以上が赤、20人より少ないのは青でグラフが色分けされています」など、気が付いたことを互いに英語で発表していた。

 授業はオールイングリッシュだ。指導する山嵜美香教諭も英語でときどき注意を加える。「そうね、問題について語るときには、事実を述べることが重要です。それが意見を補強します。グラフから分かることを述べるときには、大きいことを先に説明して、それから、詳細について説明していきます」

 授業のテーマはさまざまで「国境なき医師団」のホームページの文章から学んだり、生徒それぞれが絶滅危惧種について発表したりする。映画「プーと大人になった僕」を見て、そのストーリーを元に「仕事と家庭のどちらが大切か」についてディベートしたこともある。

「英語で自分の意見を表現することが大事」と話す山嵜教諭
「英語で自分の意見を表現することが大事」と話す山嵜教諭

 「オーセンティックな(本物の)素材を教材にしているのは、そうした問題そのものを知ってほしいからです。いくら流暢(りゅうちょう)な英語が話せても、浅薄なことしか言えなくては意味がありません。自分なりの考えを持ち、それを表現するための英語なのです」と山嵜教諭は説明する。「考えて自分の意見を言うことが大事です。授業中に間違えるのもOK、調べるのもOKです。ですから、失敗を恐れない生徒に育っています」

問題意識を持ち、積極的に変わっていく生徒たち

 この授業を受けている西村友希さんは、「英語で発言するのに慣れているので、社会科など他教科の授業でも自然と多く発言するようになりました。また、英語で意見を書くことや、ディベートにも慣れているので、定期テストや学校外の模試の記述問題でも英語の意見文が速く書けます」と話す。

 西村さんが最近、関心を寄せているのは貧困問題だ。「エチオピアで命を落とす子供の57%は栄養失調、25%は下痢が原因です。日本では治る病気でも海外では命を落とすのが衝撃でした。自分で調べて詳しく知ると、それぞれの問題に対しての対策が違ってくると感じます」と話す。将来は国際弁護士を目指していて、大学の法学部受験のために勉強中だという。

 冨田菜摘さんも、「この授業を受けて自分が変わった」という。「それまでの私は消極的でした。しかし、授業では黙っているのは許されません。積極的に発言するようになったのです。そして、勇気を出して文部科学省が主催する『トビタテ!留学JAPAN』に応募し、オーストラリア留学を実現しました。私は日本文化である茶道を伝え、異文化交流をしたいという願いをかなえました」。帰国後はその経験を「Live for tomorrow」と題し、校内の英語弁論大会で発表し、入賞したという。冨田さんのめざましく変わった姿は、間近に見た友達や後輩たちに、大きな影響を与えたことだろう。

ペアワークの中で互いに自分の意見を伝える

 こうした「自分の意見を表現する英語」は一朝一夕に身に付くものではない。同校では生徒の英語力を育成するために、中学のうちからさまざまな工夫を重ねている。

中学生の英語の授業ではペアワークを重視している
中学生の英語の授業ではペアワークを重視している

 この日、中2の英語の授業では、前週にイギリス文化と英語の体験施設「ブリティッシュヒルズ」(福島県)で行った宿泊研修について、ペアになった生徒たちが英語で振り返りをしていた。

 小滝七菜さんはパートナーに「ブリティッシュヒルズで学んだことは何ですか」と問われ、「ネイティブの英語と、友情です」と英語で答えた。「イギリス人の先生とたくさん英語が話せました。そして、最初は意見がバラバラでまとまらなかった、同じ班の4人が、コミュニケーションすることで、すごく仲良くなれました」という。英語だけでなく、コミュニケーションの大切さや楽しさも学んだようだ。

 小滝さんは、「英語、日本語に限らず、中学に入ってから人前で発表をする機会が多く、緊張して頭が真っ白になったこともあります。でも少しずつ慣れて、今年は英語弁論大会やブリティッシュヒルズ宿泊研修の実行委員になり、英語で自分の思いを伝えるあいさつができるようになりました」という。

「その子なりのがんばりをほめると自己肯定感が育つ」と話す東教諭
「その子なりのがんばりをほめると自己肯定感が育つ」と話す東教諭

 指導する東冴英教諭は、「英語は単なるツール(道具)です。重要なのは、それを使って表現したいものです。英語『を』学ぶ、から、英語『で』学ぶ、になるよう、授業では考えて発表することを多く取り入れています」と話す。

 東教諭が特に重視しているのは、ペアでの作業などを多くし、互いに意見を伝え合うことだ。「クラス全体に質問を投げかけた場合、誰かが答えると分かった気になって自分も同じ意見であるような気がしてしまいますが、ペアワークだと分かっていないことや、自分の意見が明確になるのです」

 このほか東教諭が大事にしていることは、生徒へのきめ細かい声かけだ。全員の小テストの答案や提出したノートにも、細かくコメントを書いて返却している。

 「外国人に自分の英語が通じたのがうれしくて、英語が好きになりました」と話す田邊真珠さんは、一方で、成績がどんどん下がることに悩んでいた。東教諭はそのとき、田邊さんのノートやテストに「点数が低かったのは、勉強をしてなかったからだよね。あなたの力なら、もっと頑張れるはず」と励ました。田邊さんはそれをきっかけに猛勉強して、校内英語弁論大会に出場するほど実力を付けたという。

 「一人一人をしっかり見て、その子なりの頑張りをほめるようにしています。それが自己肯定感につながり、自分の意見を発表できるように成長していきます」と東教諭は話した。

男女共学化と国際バカロレア認定校へ向けて

 さらに同校には、創立以来の伝統である英語弁論大会や英語礼拝に加え、ネイティブの教師とのイングリッシュランチ、洋書3000冊の蔵書を使った英語多読の取り組みなど、英語に触れるさまざまな機会がある。

 今後は国際バカロレアの、11~16歳を対象にしたMYP(ミドル・イヤーズ・プログラム)認定校を目指していくという。「本校の英語教育は、主体的に考えて問題解決しようとする生徒を育んでおり、国際バカロレアの学習者像と方向性が同じです。認定校を目指すことで、さらに本校の学びが深まると期待しています」と山嵜教諭は話す。

 また、2020年からは男女共学化する予定で、「客観性が高い男子の意見が議論をさらに深めてくれると楽しみにしています」

 「AI(人工知能)が人間の頭脳を凌駕(りょうが)するシンギュラリティー(技術的特異点)が来るとしたら、その時代に人間がするのはクリエイティブな仕事です。それには、考えることが好きな人、人と議論をしながら考えを深めていける人を育てないといけません。本校の英語教育で取り上げているグローバルな問題も、簡単に解決できるものはありませんが、それでも深く考え、粘り強く問題に取り組む、そういう人を育てていきます」

 日々の学びの中で実力を付けた聖ヨゼフ学園の生徒たちが、世界へ向けて自分の考えを発信し、世界を変えていく舞台に立つ日がくるかもしれない。

(文・写真:小山美香)

 聖ヨゼフ学園中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

54430 0 聖ヨゼフ学園中学・高等学校 2018/12/14 05:20:00 2018/12/14 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181211-OYT8I50032-T.jpg?type=thumbnail

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