女子小学生が憧れる伝統の文化祭…桜蔭

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 桜蔭中学校・高等学校(東京都文京区)で昨年9月29、30の両日、文化祭が開かれた。同校の伝統となっている理数系クラブの展示フロア「サイエンスストリート」や、文系クラブの「文化横丁」はともに人気を集め、その独創性にあふれ、工夫を凝らした展示発表で、訪れた小学生らのハートをしっかりつかんでいた。

人気スポット「サイエンスストリート」

小雨交じりの中、初日を迎えた文化祭
小雨交じりの中、初日を迎えた文化祭

 文化祭初日の9月29日、「OIN FESTIVAL」と書かれたゲートをくぐり、校舎東館2階に上ると、フロアは来場者でごった返していた。理数系の五つのクラブ(数学部、化学部、物理部、生物部、天文気象部)の展示教室が廊下沿いに並んだ「サイエンスストリート」だ。

 「今年の統一テーマは『光と音』です」と同ストリート責任者の蓑田優子さん(高2)が説明する。各クラブの展示を見て回りながら、クロスワードパズルを埋めるクイズ用紙が用意され、鉛筆と一緒に渡される。

 桜蔭は例年、医学部をはじめ理系学部に進む生徒が約6割を占める。理数系のクラブ活動も盛んで、そのハイレベルな展示は定評がある。「サイエンスストリート」は、文化祭恒例の企画として長年続いており、受験生や保護者らの人気スポットになっているという。

 天文気象部の教室に入ると、壁一面に貼られた大きな模造紙の展示が目に入ってきた。「地球外生命体」「宇宙エレベーター」「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」……。ロマンを感じさせる最近注目のテーマが並ぶ。

 NASA(米航空宇宙局)の英文サイトなどを参考に、「部員総出で調べて書きました」と同部長の畑島絢音さん(高2)は話す。全部で1万字ほどの文字はすべて手書き。写真も切り貼りだ。中1から高2まで40人余りの部員が力を合わせて作り上げた地道な努力の結晶だ。

手書きの文字が並ぶ天文気象部の展示に見入る小学生ら
手書きの文字が並ぶ天文気象部の展示に見入る小学生ら

 手書き文字で埋め尽くされた模造紙は同校文化祭の「名物」だ。隣の数学部では「メビウスの帯」をテーマにした長大な解説文を展示しており、それを目の前にした東京・江東区の小学5年の女の子は「壁の文字がすごい」とすっかり圧倒された様子。

 天文気象部では、2018年6月に小惑星リュウグウに到着して話題を呼んだ探査機「はやぶさ2」の模型も制作、展示していた。はやぶさ2が小惑星を追いかけた際、地球の重力で加速する「スイングバイ」で軌道を変えた様子が分かるように、転がる球の動きで再現した装置を作り、隣に並べるという徹底ぶりだ。

 校内にあるプラネタリウム施設で、星空を映しながら、オリジナルの創作神話を交えて星を語るイベントも毎年催しているという。部長の畑島さんは「『お上手ですね』『感動しました』と言っていただき、うれしかったです」と話した。

 「次にろっ骨を切り取って……」。生物部員が手際よくハサミやピンセットを操る手順を、別の部員がマイクで説明していく。恒例の「カエルの解剖」のライブ中継だ。解剖の様子は手元のカメラで撮影され、モニター画面に映し出される。まるで外科医が登場するテレビドラマの手術シーンを見るようだ。

人気を集めていた化学部の「虹色の試験管」実験
人気を集めていた化学部の「虹色の試験管」実験

 化学部の教室で、順番待ちの列ができていたのは「虹色の試験管」。赤や黄などに色付けされ、濃度の異なる砂糖水を濃い順に重ねて試験管に注ぐと、混じり合わず、カラフルな色の層ができるという実験だ。「見た目がきれいですし、小学生にも原理が分かりやすいので人気でした」と化学部の部長(高2)は話す。化学反応で泡がどんどん増える「あわわ」という実験も大好評だったという。

 それぞれのクラブが科学に親しんでもらおうと、工夫を凝らしているのがよく分かった。

4部合同夏合宿も「後輩さん」と力合わせて

 「サイエンスストリート」の参加クラブのうち、数学部を除く四つの理科クラブは毎年の夏休み、群馬県嬬恋村にある同校の宿泊研修施設「浅間山荘」で2泊3日の合同合宿を行い、交流を深めている。

 物理部は今年も、山荘近くの高原で「ペットボトルロケット」の野外実験に挑んだ。清涼飲料水容器で作ったミニロケットに水を詰め、空気圧で噴射させて飛ばす。「後輩さんたちに、原理を調べてきてもらい、作りました」と部長の金田一麗奈さん(高2)は話す。

 生徒たちは、「後輩さん」「中1さん」など、下の学年の生徒を「さん」付けで呼ぶ。同校は大正期の創立以来、「礼と学び」を建学の精神とし、礼法の授業に力を入れてきたという。先輩たちが年下の生徒に寄り添い、やさしく接しているのも、その伝統の表れだろう。

 天文気象部は、山の澄みきった星空の観測を楽しみ、生物部は渓谷の滝で、水生昆虫を採集したり、水質を調査したりした。化学部は酸化鉄を加熱し、純粋な鉄を取り出す「テルミット反応」実験などに取り組んだという。それぞれ合宿での研究成果は、この文化祭の展示にも生かされた。

「文化横丁」で生徒と女子小学生の交流

 理数系に負けず、文系のクラブも多彩な展示を披露していた。校舎東館の「サイエンスストリート」に対して、こちらは西館で「文化横丁」を開店した。

 桜蔭のクラブ活動は中高一貫で、体育系6、文化系29(理数系5、文系その他24)の多彩なクラブがある。文化祭では、講堂でのステージ公演、体育館での公開試合、模擬店などにすべてのクラブが参加する。このうち「文化横丁」には、展示や実演を行う八つの文系クラブの教室が軒を並べた。

音と声だけでラジオドラマを演じる放送部員たち
音と声だけでラジオドラマを演じる放送部員たち

 その中の放送部の教室をのぞくと、創作ラジオドラマの実演中だった。題名は「秋の(ながめ)に揺らめいて」。10代の少年少女の心の葛藤を描いた作品だ。マイクの前に出演する生徒たちが立ち、その横に効果音やBGMの担当スタッフ。実際の放送はされないが、来場者は収録スタジオに迷い込んだ気分になる。 

 「ラジオドラマは音と声だけで作る劇。息遣いや効果音を入れるタイミングなど、繊細な世界を楽しんでいただければ」と部長の賀来夏恵さん(高2)は話す。入学したての「中1さん」もキャストとして演技していた。「初めての子も練習を重ね、文化祭の1、2週間前からの伸びはすごくて感動します」

 桜蔭の文化祭には、同校に憧れる多くの女子小学生らが詰めかける。文学部文芸研究班の部長、近本理紗子さん(高2)も小学生時代に訪れ、展示されていた文集を読んで感動したのが入部のきっかけだという。

 同部の今回のテーマは生誕100年を迎えた作家・福永武彦。短編「夢みる少年の昼と夜」を選んで鑑賞、考察していくという。また、教室の黒板には「欠席 夏目漱石 胃痛のため」などと、文豪たちをクラスメートになぞらえたユーモラスな板書もあり、来場者の笑いを誘っていた。

英会話部の「赤ずきんちゃん」のスキットを囲む来場者
英会話部の「赤ずきんちゃん」のスキットを囲む来場者

 ボランティア部は、白い(つえ)歩行や、手話による自己紹介を学ぶ教室を開催。訪れた人たちとの温かい交流の場になっていた。参加した小学生らの体験を手伝いながら、「『どこから来たの』などと話ができて、私たちも楽しませていただきました」と部長の永野里穂子さん(高2)は話す。

 大半の展示教室でテーマに沿ったクイズが用意されているのも、桜蔭の文化祭の特色だろう。例えば英会話部は、「赤ずきんちゃん」の英語のスキット(寸劇)を部員たちが演じ、正確に聞き取れたかどうか、リスニング力を見る景品付きクイズを配布。ペンを手に熱心に耳を傾ける人たちで盛り上がっていた。

部活動は引退しても心に残る文化祭の思い出

 「世界遺産」をテーマとする展示や、公開討論「日本の中学・高校にシエスタを導入すべきか」を催した社会科部。警視庁見学の体験を生かし、「警察」「メディア」について論考した新聞部。また、最近は珍しくなった校内の現像室を生かし、フィルムカメラで撮影した作品を並べた写真部。どのクラブも独創的で多彩な企画を繰り広げていた。

 中にはメルヘンチックな展示もあった。手芸部は、「ピクニック」を題材にフェルトでかわいらしい果物や菓子を共同制作した。中2以上の部員は服づくりにも挑戦し、ウェディングドレスや着物などの力作を展示していた。

 「文化祭が終わると、自分の作品を着て、部室で記念撮影するのが恒例です」と部長の菊先(きくさき)華歩さん(高2)は話す。ただ、手芸部は、高2を最後に引退することになっているので「部活で作業することもなくなるから、少しさみしいです」とも。

 文化祭の思い出は、みんなで励まし合った日々とともに、生徒一人一人の胸に温かく刻まれるに違いない。

(文・写真:武中英夫)

 桜蔭中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

60712 0 桜蔭中学校・高等学校 2019/01/18 14:50:00 2019/01/18 14:50:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190118-OYT8I50034-T.jpg?type=thumbnail

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