改革3年目、キャリア教育もブラッシュアップ…十文字

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 十文字中学・高等学校(東京都豊島区)は、学校改革「Move on プロジェクト」を始動させて3年目を迎えた。プロジェクトの三つの柱である英語・理数教育及び人格形成と並ぶ「キャリア教育」は、開学の目的である「社会に出て役立つ女性の育成」に直結するものとして、とりわけ重要なテーマだ。その取り組みと成果について、進路指導部長の松浦純子教諭に聞いた。

学校の枠を超えた学びと経験が刺激になる

「Move on プロジェクト」について話す松浦純子教諭
「Move on プロジェクト」について話す松浦純子教諭

 同校の学校改革「Move on プロジェクト」は、2020年度の大学入試改革をにらんだ教育改革を模索する中で、16年度にスタートした。改革の諸策のなかでも、「自彊不息(じきょうやまず)」の精神で取り組んできた「キャリア教育」は伝統でもある。

 プロジェクトがスタートする以前にも、三重苦を克服した社会福祉活動家ヘレン・ケラーや、日本人オペラ歌手の草分けである三浦環、能楽師の野村萬斎といった著名人を講演会に招き、生徒たちに未来や自身のキャリアについて考える機会を設けてきた歴史がある。

 同校はプロジェクトの発足を機に、それまでは随時行っていた講演会や芸術鑑賞会、大学・企業との連携企画などを一元化し、「キャリアプログラム」として位置づけることにした。

 同プログラムを統括する松浦純子教諭は、「このような取り組みは、すぐに結果が出るというものではありません。一流と呼ばれる人が重ねてきた不断の努力を知り、多様な価値観を吸収することが生徒たちにとって刺激となるのです。常に前へ前へと進み、自分を高めていこうという原動力にもつながります。学校の枠を超えた学びと経験は将来、社会に出た時にじんわりとにじみ出てくるのだと思います」と話した。

企業や学校との連携でワクワクする体験学習

 キャリア教育の基本理念は「生徒の可能性を広げる」「内発的動機付けを強める」「クリエイティブな発想力を育てる」の三つ。それらの理念を形にしたキャリアプログラムは、生徒が夢を持ち、ワクワクしながら自分で考え、作り上げることができるような構成となっている。

報道番組を制作する生徒たち
報道番組を制作する生徒たち

 その一つとして同校の生徒が取り組んだ企画が、テレビ局と連携した「報道番組制作」だ。20人ほどで1グループを作り、同校の地元である東京・巣鴨地蔵通り商店街を舞台に取材をスタート。とげぬき地蔵尊として親しまれる高岩寺(こうがんじ)を訪れ、住職と対談したり、若者言葉が高齢者にどの程度、浸透しているかについて、道行く人に街頭インタビューしたりした。初めての記者体験にも落ち着いて行動し、カメラクルーもしっかりと動画を収録。それぞれの生徒が十分に自分の持ち場をこなした。

 持ち帰った映像は、テレビ局の担当プロデューサーのアドバイスを受けながら編集した。ナレーションと映像がずれるなど作業には苦心したが、最終的にはスタジオを借りて実際の番組さながらの報道番組をオンエアできた。「たった10分ほどの番組でしたが、報道番組作りには綿密な準備や丁寧な取材が必要で、編集作業にも多くの人が関わっていることを身をもって知ることができました。生徒たちにはこの体験を通して、自分たちで考えて行動することを学び、創造力や責任感、失敗体験から立ち上がる力を身に付けてほしいですね」

 キャリアプログラムでは企業だけではなく、先進的な研究活動を行う大学とも連携した取り組みを行っている。十文字学園の系列大学ばかりでなく、東京大学や東京工業大など他の国立大学との連携にも取り組んでおり、内容も簡単なゲームを作るプログラミング講座や幼稚園実習など多岐にわたる。

東北大学の「科学者の卵養成講座」に通う後藤光雲さん
東北大学の「科学者の卵養成講座」に通う後藤光雲さん

 高校3年の後藤光雲(みう)さん(17)は、東北大学主催の探求型「科学者の卵養成講座」で受講生として学んだ。この講座は後藤さんが自分で見つけてきたといい、高校1年から2年間、毎月1回、土曜日に仙台市にある同大キャンパスに通学した。1年目は「バフンウニを用いて受精の仕組みを探る」、2年目は「毒?栄養??植物と重金属の関係性をあばけ!!」というテーマに取り組み、いずれの研究も発表会で入賞している。後藤さんはこの講座でレポート作成の極意を学ぶこともできたそうだ。

 「大学での学びは、高校までのそれとまったく関わり方が違うことに最初は驚きました。与えられた課題だけをこなすのではなく、自分自身で考えて結論を導き出していく過程はワクワクします。思考力も身に付いたように思います」と振り返る。

 「科学について幅広く学ぶことができ、総合的な知識を深めることができたと同時に視点も広がりました。将来は多角的に見る科学の目を備えた医療関係者になり、人の役に立ちたいです」と、後藤さんは将来への夢を膨らませていた。

生徒同士の情報共有で活動の輪が広がる

 大学入試改革に対応した「e-ポートフォリオ」の作成指導も、キャリアプログラムの一環として指導している。対象学年となる高校1年の生徒全員が、同校での探究学習や学校行事への関わり方、検定試験で取得した資格の記録などを整理して更新・保存する作業を続けている。

 こうした一連のキャリアプログラムの成果について、松浦教諭はこう語る。「これまでその都度に行っていた取り組みを整理して一元化するとともに、選択肢として生徒に提示することで、積極的に参加する姿が見られるようになりました。そして、生徒たちの活動を校内で発行する『進路通信』で発信することにより、生徒同士で情報を共有し、活動の輪がさらに広がっています。女性は他者との関わりや共感を大切にしますから、このように女子の特性を生かした取り組みによって好循環が生まれているのではないかと思います」

全国大会で優勝経験のある高校サッカー部
全国大会で優勝経験のある高校サッカー部

 同校はサッカーの強豪校としても知られ、全日本高等学校女子サッカー選手権で優勝経験もある。国際的に活躍する卒業生も多い。キャリア教育を通じて豊かな人間性を育成する教育方針と、恐れることなく時代に応じた改革に乗り出す進取の精神が、多様な才能と個性を持った女性を育てるのだろう。

(文・写真:櫨本恭子) 

 十文字中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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41505 0 十文字中学・高等学校 2018/09/20 05:20:00 2018/09/20 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180919-OYT8I50016-T.jpg?type=thumbnail

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