現在も脈打つ英語、理科教育の伝統…関東学院<3>

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 今年創立100周年を迎える関東学院中学校高等学校(横浜市)は、「英語の関東学院」と呼ばれるほど力を入れてきた英語教育と、真理探究の道として創立期から続く理科教育を誇る。その伝統は今も生徒たちの興味関心を刺激してやまない。熱意を持ってそれぞれの教科を教える教師たちの取り組みを紹介する。

英語の伝統を継承し、異文化への理解を深める

 戦前から続く外国人宣教師による英語教育は、「英語の関東学院」と呼ばれる同校の伝統であり、現在の英語教育にもつながっている。

異文化への興味や寛容の大切さを話す宮前教諭
異文化への興味や寛容の大切さを話す宮前教諭

 英語科の宮前州吾教諭は、「そう呼ばれてきたのは、外国人宣教師からの学びを通して、異文化への興味関心と寛容さを培い、それに裏づけられた英語力を身に付けてきたからです」と話す。「高度に情報化され、国際化された現代だからこそ、このマインドは守っていくべきです。生徒それぞれの英語レベルとは関係なく、どのレベルにあっても異文化への敬意と自国文化への誇りは持ってほしいと考えています」

 中学では1週間に、通常の英語授業5コマに加え、外国人教師による英会話の授業1コマ、さらに2018年度から総合学習の時間を2コマ割いて、語学学校「ベルリッツ」の協力を得て行われる「ベルリッツ・メソッド」の授業を実施しており、英語関連の授業は計8コマに強化された。

 英語4技能のうち、特に力を入れているのはスピーキングだ。「特に中1、中2の英語の授業では、英語に触れる量とスピードに重点を置いています。中2では話すスピードを向上させるために、ワードカウントという活動を行っています」と宮前教諭が説明する。

 ワードカウントは、1分間にどれだけの単語数を話せるかを生徒同士で競う活動だ。文法の正確さだけでなく、速くたくさん話せることを重視する。英語の読み書きが苦手な生徒でも、語数を競うことで熱心に話そうとする。初めは話せる語数が少なくても、慣れてくると話せるようになる。こうして自信を持つことで、やる気が育ち、積極的にコミュニケーションが取れるようになって、英語力が向上するという。

 同校の外国人教師はオーストラリア人と米国人の2人だけだったが、ベルリッツ・メソッドを導入してから、米国や英国だけでなくジャマイカや南アフリカなど多様な出身国のネイティブスピーカーを迎えるようになった。

 宮前教諭は「たとえばジャマイカの先生は、『私はジャマイカ出身だけど、足は速くないわ』と自己紹介して生徒の笑いを誘っていました。さまざまな国の文化に慣れる機会が増えたので、他文化に対する理解や寛容な態度が身に付いてきたようです」と話す。最初は外国人教師に対して壁を作ってしまう生徒もいて心配したこともあったが、「3か月()ったころには、自分から手を挙げて英語でペラペラと質問するようになっていました」。

外国人観光客へのインタビューがモチベーションに

外国人観光客に英語でインタビューした体験のリポート
外国人観光客に英語でインタビューした体験のリポート

 中2の京都・奈良への研修旅行では、こうして培った異文化への理解が発揮される。この研修旅行では、外国人観光客にインタビューし、その報告を英語のレポートにまとめるという課題が出される。

 「一生懸命練習して英語を使ってコミュニケーションできたという思い出が、次の英語学習のモチベーションになります」と宮前教諭はその狙いを話す。研修旅行の後は「一生懸命に話せば、外国人も一生懸命に聞いてくれることが分かった。伝わるとうれしい」「横浜にもたくさん外国人がいるから、道に迷っていて困っている人がいたら声をかけてみようと思った」などの感想が生徒から聞かれるそうだ。

 生徒たちの作成したレポートが廊下の壁にずらりと展示してあった。「そのときの気持ちを忘れないように」と願って、長く展示するそうだ。

 このほか、高1ではフィリピンの現地英語教師とオンラインで結んだマンツーマンの英会話を実施している。高2、高3ではさらに、ベルリッツ・メソッドを活用して英語によるプレゼンテーションや、ディスカッションの強化も図っていく。

 英語教育を重んじる理由について宮前教諭はこう説明する。「本校ではサーバント・リーダー(自ら奉仕することを通じて人々を導く人の意)になれという精神がありますが、英語教育も同じです。国際化がさらに進んだ未来、世界中から多種多様な人々が集まったとき、ただ自分の主張をする英語ではなく、さまざまな人を気遣って『大丈夫ですか』と聞いて共感できる、そんな英語力の育成を目指しています」

実験観察を徹底し、真理を探究する

 同校の教育の歴史で、英語同様に長い伝統を誇るのが理科教育だ。その歴史は同校の創設にかかわったグレセット宣教師にさかのぼる。天文学が専門だったグレセット宣教師は生徒とともに天体観測をして自然科学の奥深さを説いていたという。

理科教育の伝統について話す渡邉教諭
理科教育の伝統について話す渡邉教諭

 当時の動植物や岩石鉱物の標本、実験道具は、現在も一部展示してある。理科(地学)の渡邉雅人教諭は、「これらの標本などから分かるように、本校では、できるだけ実物を使って理科を指導する伝統が受け継がれてきました」と話す。

 教員室の入り口には「真理はあなたたちを自由にするであろう」という新約聖書のヨハネ福音書の言葉が掲げられている。「本校の理科教育の源流はこの言葉にあります。真理探究の手段としての科学を、実験観察を中心として生徒に指導していくという精神があるのです」。そう語る渡邉教諭の言葉に熱が籠もる。

 かつては実験室が中学校舎と高校校舎に分かれて設置されていたが、新校舎では五つの理科実験室がまとまって設置された。移動の手間がなくなり、生徒たちは物理、化学、生物、地学の各分野の実験に腰を落ち着けて取り組めるようになった。

 「省略せずに、その学年に必要な実験をしっかりやります。顕微鏡をたくさん使うので、よく壊れるほどです」と渡邉教諭は話す。中1ではタマネギの皮の細胞を染色して観察し、次の日には根の細胞分裂を観察していくなど、何日も連続して観察実験を行う。最初、生徒たちは教科書に載っている正解を覚え、それを再現しようとするが、「実験とはそういうものではありません」と渡邉教諭は強調する。

 「繰り返しいろいろな実験をしていく中で、観察した事実を使って事象を説明できるようになっていくのです」。レポートの作成や発表の仕方も重視される。「泡が出た、というだけでは、シュワシュワと細かい泡が出ているのか、ボコボコと大きな泡が出ているのか分かりません。こうした表現の仕方にも力を入れていて、そこから新しい発見があることもあります。国語力も駆使して、論理的に説明できるようになります」

 高1・高2の希望者を対象にした夏休みのハワイ島理科研修は、こうした理科教育の集大成といえる。ハワイ島マウナケア山頂にある日本の国立天文台すばる望遠鏡をはじめとする最先端の施設を見学したり、米国地質調査所を訪れて所長のドナルド・スワンソン氏の講義を受けたり、フィールドワークを体験したりする。このプログラムは4月から始まり、ハワイ島や日系移民の歴史、火山や天文学などの事前学習をしてから研修に臨み、9月末までに各自レポートを作成する。

 レポート集は読み応えのある力作が出そろうという。ハワイの火山や地形、独自に進化した動植物などをテーマに、自分で実際に岩石を採取したり、動植物を観察したりして、科学的な見地からの分析を行う。

 引率する渡邉教諭は、「生徒は興味を持つと、教えた以上の素晴らしい成果を出します。興味を持った現象にのめり込んで、その後も本格的に研究していくのです」と話す。

ハワイ島理科研修で、キラウエア火山の溶岩の上を歩く生徒たち
ハワイ島理科研修で、キラウエア火山の溶岩の上を歩く生徒たち

 キラウエア火山が作り出す岩石にのめり込んだある生徒は、その後、国立大学の工学部に進み、岩石について学んでいる。ハワイ島の固有種にのめり込んだ別の生徒は、その後、国立大学の農学部に進み、生物を研究している。「本当に自分の好きなことを見つけると、それをきっかけに、生徒たちは大きく羽ばたいていきます。大学院へ進学して研究を続ける生徒も多いのです」

 英語でも理科でも、自ら積極的に取り組み、その中に喜びを見いだすことで生徒たちは成長していく。関東学院は、生徒たちが今、抱えている興味関心を大事にしている学校だ。

(文・写真:小山美香 一部写真提供:関東学院中学校高等学校)

 関東学院中学校高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

62867 0 関東学院中学校高等学校 2019/01/21 11:22:00 2019/01/21 11:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190121-OYT8I50001-T.jpg?type=thumbnail

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