共学化で伝統と革新の調和を目指す…八雲学園

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 八雲学園中学校高等学校(東京都目黒区)は、創立80周年を迎えた今春、中学校の共学化に踏み切った。女子教育の長い「伝統」に、男子生徒を迎える「革新」の風を吹き込んだ理由や、今後の教育方針などを理事長でもある近藤彰郎校長に聞いた。

男女の違いを踏まえて特質を生かす教育へ

カリフォルニア州サンタバーバラにある「八雲レジデンス」
カリフォルニア州サンタバーバラにある「八雲レジデンス」

 八雲学園は1938年、初代校長となった近藤敏男が創立した。もともと実業家で、第2次世界大戦前に夫婦でアメリカに渡り、ホテル経営などをしていたが、現地で英語力の必要性や、日米での女性の地位の違い、さらには日本人への差別などを経験し、世界で活躍できる日本女性を育てようと、帰国して同校を創立した。創立以来、英語教育を根幹とし、人間教育を実践してきた。

 ――はじめに中学の共学化に踏み切った理由を教えてください。

 本校は伝統ある女子校でしたが、私自身は7年ほど前から共学にしていかなければならないと感じていました。それは、世の中が変化して、これからは男女が協働するようになるからです。父親は稼ぎ、母親は家を守っていればいい、という時代ではなくなりました。今はその変化の入り口だと思います。ほとんどの人が働き、かつ子育てもして行かなければならない。間違いなくそういう時代になります。そこで、昨年決断して、創立80周年を迎える今年を機に共学に踏み切ったわけです。

 ――共学化によって、学校は変わっていくと考えますか。

 本校が教育理念に掲げる「生命主義・健康主義」は、自分の命同様、他の人の命も大切にし、心身ともに健やかに力強く育んでいこうというものです。多様性を理解しながら尊敬し合う関係を作るという考えは、新たに男子を迎えてもまったく変わることのないものです。

 男女を分け隔てなく同じように扱うべきという意見がありますが、本校ではむしろ男女の違いに着目し、それぞれの特質を生かした教育をしていきます。

 男の子らしく、女の子らしくという意味は、時代によって変化します。生徒が出て行くのは男女がともに働きながら子育てもする社会ですから、どっちが上でもどっちが下でもないのです。学校生活においても、尊敬しあい、協力し合える関係を作っていきます。

 共学化にあたり、「Perfect Harmony of Tradition & Innovation」という言葉を掲げました。変わることのない「伝統」と、新しく男子生徒が加わることでの「革新」、この二つが完全に調和したものが八雲学園の新しい教育です。

英語のプレゼンテーション能力を磨く

姉妹校のケイトスクールでプレゼンテーションを行った中学3年生
姉妹校のケイトスクールでプレゼンテーションを行った中学3年生

 ――英語教育ではどんな点に力を入れていますか。

 英語でのプレゼンテーション能力を徹底的に鍛えていきます。

 本校はアメリカ西海岸にあるサンタバーバラに研修センター「八雲レジデンス」を持ち、1994年以来、ここを拠点にグローバル教育を実践しています。中3生は全員、この八雲レジデンスに2週間宿泊し、現地の高校、大学、地域の人たちとの交流を通じて異文化を学び、英語力を磨くのです。

 特に、日本の高校にあたる現地の寄宿学校「ケイトスクール」とは付き合いが深く、四半世紀にわたって姉妹校提携をしています。そのケイトスクールの生徒が本校の中3生を迎え、学校の紹介をしてくれたことがあり、そのプレゼンテーションが非常によくできていたので、私たち八雲学園もプレゼンテーションに取り組み始めました。1年後、本校の生徒たちもケイトスクールの生徒たちに見事なプレゼンテーションをすることができました。

 生徒たちはさまざまな潜在的能力を持っています。良いお手本や学ぶ機会さえあれば、どんどん成長していくのだなと実感しました。

 プレゼンテーションをする際、生徒たちは自分用のタブレットを活用しています。もちろん、そうした技術的なノウハウも教えていますが、もっと重要なことがあります。それは、話術ではなくて人格が大切だということです。私は、晩年の日野原重明先生の講演や、ダライ・ラマ法王にご来校いただいた時、皇后美智子さまにお目にかかった時の経験から、それを実感しました。人はそれぞれ、人を引き込むものを持っているのです。ペラペラと話すことだけがプレゼンテーションの能力ではありません。話すのが苦手な生徒は、その分、人格を磨いていってほしいと思います。

独自の海外研修でグローバル人材を育てる

「男子生徒を迎え、甲冑を飾り端午の節句を祝っています」と語る近藤校長
「男子生徒を迎え、甲冑を飾り端午の節句を祝っています」と語る近藤校長

 ――「八雲レジデンス」は、中3の研修以外にどのように活用していますか。

 「これだけの施設を自前で用意することはなかなか真似できない」とはよく言われます。生徒のためになるのであれば、1年に1回の利用でもいいのですが、今は1か月、3か月、6か月とさまざまな期間での海外研修プランに活用しています。

 研修プログラムも独自のものです。中学3年で海外を経験すると、もっと学びたいという意欲を持つ生徒が出てきます。すでに5年ほど続けてきた本校の9か月プログラムは、ネイティブの先生と一緒に、出発前に3か月間日本で勉強し、3か月間アメリカで学び、帰国して3か月間学ぶ、という内容です。アメリカではUCSB(カリフォルニア大学サンタバーバラ校)の寮や八雲レジデンスに滞在したり、ホームステイしたりもします。最大の特徴はTESOL(英語を母国語としない人に対する英語教授法)の資格を持つUCSBの先生に270時間指導を受けることです。もちろん、本校の教員も現地に同行し、学習内容をチェックし、サポートします。生徒を海外に送り出して終わり、ということはありません。

 海外研修は実際、英語力の向上に効果を上げています。言語能力を評価する国際指標CEFR(セファール)でB2レベルの生徒もいますし、センター入試の英語が満点だった生徒もいます。

 ――英語力をしっかり伸ばす教育ですね。

 本校は、国際私立学校連盟「ラウンドスクエア」のメンバー校であり、他のメンバー校からの訪問や留学生の受け入れもしています。また、エール大学の学生コーラスグループとの交流が何年も続いており、日本での学校生活でもグローバルな刺激を受けることができます。

 ただ、グローバル人材に必要なのは英語力だけではありません。プレゼンテーションでも、話術だけでなく人間性そのものを育む必要があるように、自国の文化を知らずして国際人にはなれません。その意味で、本校は毎月、文化体験を実施しています。

 たとえば国立博物館に行ったり、新しいミュージカルを見たり、鎌倉を散策するなど、中学3年間でさまざまな体験をします。外国で「能って何」と聞かれたら、そこからコミュニケーションが始められるような国際人へと育ってほしいからです。

 また、これまで桃の節句には、校内に(ひな)人形を飾って祝ってきました。男子生徒を迎えたので今年からは端午の節句にも甲冑(かっちゅう)を飾って祝います。外に出かけるだけでなく、学校生活の中でも文化を大切にしていくつもりです。

チューター制度や校内塾で生徒をバックアップ

世界中のラウンドスクエア加盟校から訪問や留学生を受け入れている
世界中のラウンドスクエア加盟校から訪問や留学生を受け入れている

 ――そのほかに、どんな生活・学習指導をしていますか。

 本校は、中学の入学時から3年間、担任の先生と別に、生徒に寄り添う先生「チューター」を生徒に付けています。担任は注意を与えなければならない時もありますが、注意された翌日に、相談したいことがあっても相談できないでしょう。そういう時のためにチューターを決めてあるのです。6年間元気で過ごしてくれたらいいのですが、元気が出ない時もありますからね。

 チューターには学校生活の相談だけでなく、学習アドバイザーとしての役目もあります。勉強の進捗(しんちょく)やテストの結果を把握し、「この教科は、もっと早く勉強を始めたほうがよかったね」といった助言もします。チューター制度は中学3年間だけです。高校生になれば自発的に、先生のところへ必要な相談をしに行けるようになります。

 受験対策としては、放課後に、予備校講師の経験を持つプロフェッショナルによる「校内塾」を開いています。授業だけではなかなか身に付かない受験テクニックを補填(ほてん)するのが目的です。授業が終わった後、すぐに受講できるような体制を整えているので、学外の塾などに通う時間がかかりませんし、費用面の援助もあるので喜ばれています。

 海外大学への進学についても、姉妹校ケイトスクールが持つノウハウを生かして、指導できる点が特徴です。四半世紀にわたるネットワークがあるので、「時代はグローバルだ」とばかり、開拓に取りかかる必要がないのも本校の強みの一つです。

 男子生徒という異なる個性が加わることで、学校の多様性はさらに豊かになるでしょう。伝統と革新を調和させた新しい学園をこれから築いていきたいと思います。

 (文:水崎真智子 写真:中学受験サポート 一部写真:八雲学園中学校高等学校提供)

 八雲学園中学校高等学校についてさらに詳しく知りたい方はこちら

24044 0 八雲学園中学校高等学校 2018/05/30 05:20:00 2018/05/30 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180529-OYT8I50007-T.jpg?type=thumbnail

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