自ら学び「その先にある自立」を目指せ…攻玉社

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 創立155周年を迎えた男子校、攻玉社中学校・高等学校(東京都品川区)の新校長に今春、積田孝一氏が就任した。勤務40年のキャリアを持ち、同校の生き字引とされる積田校長に、東京大学への現役合格者数5年連続二桁という実績の背景や、これから取り組みたい教育課題などについて聞いた。

1966年に早くも「6年一貫教育」

今後の教育課題について語る積田校長
今後の教育課題について語る積田校長

 積田校長が、生物の専任教員として攻玉社に赴任したのは1978年。以来40年の間に中学教頭や副校長を歴任し、今や学校の生き字引のような存在だ。校長となった現在も生物科教諭として教壇に立っている。

――攻玉社は、中高一貫教育をかなり早く導入したそうですね。

 「1966年に導入しました。中高の併設や連携ではなく、カリキュラムを完全に統合しているので『6年一貫教育』と称し、高校生にあたる学年は4年、5年、6年と呼びます。中高の枠をなくすことで学習内容の重複をなくせるため、大学受験へ向けてより多くの時間を充てられるメリットがあります。2012年に高校からの募集を停止し、完全に一貫教育としました。6年間にわたって各教科の担当教員が代わらないことも特色の一つです。入学時に担当した子供たちと、大学受験や卒業まで付き合っていきます。ですから教員と生徒の絆は深く、『◯◯年卒』ではなく『誰々先生の学年』と言った方が通りは良いくらいです」

――すると、先生方は中高両方の授業を行うんですか。

 「そうです。各教科の教員は、自らの構想に基づいて6年間のシラバスを作成し、授業に臨みます。こうすることでカリキュラムに一貫性ができますし、中学生の時期から高校レベルの内容を教えることも可能になります。きちんと教えるには高いレベルの知識が必要で、しかも易しい用語や概念を使わなければなりませんが、中高通して教えるスキルを持っていると、そうした教え方が可能になるわけです。さらに、本校では理科と社会の教員を各教科専任制にしているので教員の専門性が高く、大学レベルの知識にも対応できます。教員のスキルは非常に重視しており、近年はさらに陣容強化を図っています。それがレベルの高い生徒を集め、さらに教員のレベルアップにつながるという好循環が生まれています」

生徒の自主性を重んじる伝統

中学2年時に行う水辺の学校
中学2年時に行う水辺の学校

――東京大学への現役合格者数が5年連続二桁ですね。何が高い進学実績を支えているのですか。

 「生徒の自主性を重んじる伝統が大きな要素ではないかと思っています。たとえば、1、2年は夏休みに自由研究を行いますが、テーマに制限はありませんので、『貧乏揺すり』、『地域の救急体制』といった身近なテーマや、『AIと囲碁』といった時代を感じる研究など、面白いものがたくさん出てきます。研究成果は休み明けに発表し、優秀作はさらに学園祭『輝玉祭』で発表します。3年になると1年間にわたって研究活動を行い、『卒業論文』としてまとめます」

 「クラブ活動が盛んで、同好会、愛好会の数が多いのも自主性の表れでしょう。ガンダムやレゴといった趣味系から、ライフセービングやボランティア、地政学など珍しいテーマのものもあり、活発に活動しています。これらのクラブの承認や昇格は、生徒会にあたる学友会の『クラブ審議委員会』が人数や実績を踏まえて行っています。それから、輝玉祭や体育大会などの行事も、生徒のみで構成される実行委員会が企画運営を行います。こうした自主性や創造性が、学業のレベルアップにもつながっていると思います」

――教室の授業以外では、どんな教育活動を行っていますか。

中学3年時に行うスキー学校
中学3年時に行うスキー学校

 「授業の枠を越えてさまざまな経験をさせるのも、本校の指針の一つです。1年では志賀高原に行って3泊4日の林間学校を実施します。現地の自然観察の会の方々に案内してもらい、土地の自然や文化などを学びます。2年では、山梨県の西湖周辺で行う水辺の学校があり、自然観察や登山に加えてカヌー体験も行います。3年では長野県の北志賀竜王スキーパークでスキー学校を実施します」

 「心身の鍛錬にも力を入れています。学校には柔道場、剣道場、温水プールなどの体育施設を完備しており、伝統行事の耐久歩行大会では1~3年は16キロ、4~6年は20キロを歩きます」

 「さらに、中3からはキャリア教育として、卒業生に話を聞く機会をたびたび設けています。大学在籍中の人や若手社会人をはじめ、社会の中核を担う企業人や研究者、医師、弁護士などを毎年招き、学生時代のことや仕事のことなどを話してもらいます」

大学合格の先を見据えてほしい

伝統行事の耐久歩行大会
伝統行事の耐久歩行大会

――今後力を入れて取り組みたい教育上の課題はありますか

 「将来、AIにより人間の仕事が奪われると言われています。この状況を否定はできないわけで、これから人間は、AIにできない仕事をしていかなければなりません。AIが得意とするのはデータの解析や状況判断、つまり過去に関わることです。それに対して、未来についての構想や、これまでになかったアイデアを生み出すといったことは、人間にしかできないのではないでしょうか。そこで重要になるのは、創造やコミュニケーションの土台となる『言葉の力』ではないかと考えています」

 「最近、新井紀子さんの著書『AI vs.教科書が読めない子どもたち』を読みましたが、教科書の文章を正しく理解できなかったり、先生と話が()み合わなかったり、という子供の話は確かによく耳にするようになりました。何が原因なのかを理解して対処する必要がありますが、本校ではまず、日本語の土台の強化、具体的には現代文の教師陣やカリキュラムの強化を図り、文章の理解力を高めることに注力したいと思っています」

――最後に、攻玉社に向いているのはどんな子供たちだと考えますか。

 「本校への合格をゴールとするのではなく、その先の展望を自分で考えられる子供たちに、ぜひ来てほしいと考えています。大学入試でも、その先にある自立のために、大学で何を学ぶかを考えてほしい。本校はそうした観点から鍛錬や体験の機会を用意し、生徒の学力と人間性を磨きたいと思っています」

 「大学の先にある自立」を目指して、自ら考え、学ぶ人間を育成する。こうした同校の教育は、これからの教育に最も求められる方向性を指し示しているように思える。

(文・写真:上田大朗、一部写真:攻玉社中学校・高等学校提供)

 攻玉社中学校・高等学校について、詳しく知りたい方はこちら

21819 0 攻玉社中学校・高等学校 2018/05/16 05:20:00 2018/05/16 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180515-OYT8I50042-T.jpg?type=thumbnail

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