国際バカロレアと英語力でグローバル人材に…昌平

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改革への意気込みを見せる城川校長
改革への意気込みを見せる城川校長

 グローバル人材の育成を目指す昌平中学校・高等学校(埼玉県杉戸町)は昨年、埼玉県内で初の国際バカロレア中等教育プログラム認定校となった。高校にも来春、より上級の国際バカロレアコースを設置する予定だ。英語教育にも力を入れており、独自の「パワー・イングリッシュ・プロジェクト」は、進学実績の向上にも効果を上げている。同校の改革を牽引(けんいん)してきた城川雅士校長にこれからの展望などを聞いた。

英語力の強化が進学実績を高める

――大学進学実績を伸ばしているそうですね。

 私が着任した2006年は、進学実績も、国立大学に進学する生徒は1人もおらず、東京大学合格は夢のまた夢という状況でした。そこで高校の進路指導から始め、同時に中学の開校準備も進めました。今では4年連続で東京大学に現役で合格する生徒が出て、今春は国公立大学に56人、早慶上理ICUに55人が合格し、この12年で生徒の進学先は大きく変わりました。

――どのように生徒の進学指導をしたのですか。

 英語力の強化です。大学受験では英語が占める割合が大きく、多くの場合、私立文系の受験科目は英語と国語と社会、私立理系は英語、数学、理科です。英語は逃げられない唯一の教科。そして英語という教科は他の教科と異なり、成績は勉強時間に比例します。予習、復習のルーチンで、ある程度のレベルまでは成績を上げられる教科なのです。

 実は私は理科の教員なのですが、生徒への進路指導では自分の専門の理科でなく「英語をやりなさい」と繰り返してきました。生徒にとって効率的で合理的な方法で取り組めば、必ず結果は出ます。

 しかし、必要だと分かっていても、楽しくできなければ続きません。そこで、英語に関するさまざまなイベントを行っています。単語力やスピーチのコンテスト、カナダでのホームステイなどです。生徒全員が興味を持つわけではありませんが、何人かはちょっと面白いな、と思うわけです。いろいろな種類のことをやっていくと、かなりの生徒に火が付いていきます。火が付くと、前向きに取り組める気持ちが生まれます。これらイベントを盛り込んだものが「パワー・イングリッシュ・プロジェクト」です。

実地で英語を使う、英検に挑戦する

国内で留学に近い英語体験ができる機会を中1から設ける
国内で留学に近い英語体験ができる機会を中1から設ける

――「パワー・イングリッシュ・プロジェクト」について詳しく。

 中学では2010年の開校時から、中高6年間を見通して「パワー・イングリッシュ・プロジェクト」を行っています。実際に英語を使う体験を多く取り入れるのが特長で、ブリティッシュヒルズ(福島県天栄村)という英国留学に近い環境で研修します。対象は秋に中1全員、夏に中2全員、5月は全学年の希望者です。中3は3月に、修学旅行として全員がニュージーランドでファームステイをします。

 こうした実地体験に加え、単語や暗唱のコンテストも行います。英語検定は、年3回、学校で実施しており、最低でも年に1回は受検させています。中学2年で中学修了程度の3級、中学3年で高校中級程度の準2級の取得を目標にしており、中学卒業時には84%の生徒が準2級を取得しています。中学3年生は、英語の学力テスト(ベネッセ)で、埼玉県内2位となりました。

 学校説明会などで「英語強化をしています」と言うと「うちの子は何もやっていないので」と心配される保護者の方がいらっしゃいますが、ほとんどの生徒が本格的に英語を学ぶのは入学してからです。中1生は語彙(ごい)も少なく、学んだ文法は限られていますが、少しでも伝える感性と聞き取る感性を植えつけることを徹底してやっています。

 今年からフィリピン・セブ島での語学研修も始めました。ハーバード大学の学生を招き、英語でディスカッションするプログラムも今年スタートします。「パワー・イングリッシュ・プロジェクト」はまだまだ進化します。

日本人らしいグローバル人材に

地球サミットと題して議論する国際バカロレア教育の授業
地球サミットと題して議論する国際バカロレア教育の授業

――こうした教育によって育成したい人物像はどんなものですか。

 本校の使命として考えているのは、世界に誇れる日本を築ける人材を育てていくことです。グローバル人材はよく耳にする言葉ですが、本校では日本人らしいグローバル人材にこだわっています。ディスカッション力や交渉力に加え、主体的な学びの姿勢を育みながら、従来の日本式教育が大切にしてきた基礎知識もしっかり教え込みます。基礎知識のない口八丁にはしたくないのです。

 中学で開校時から実施しているプロジェクト学習もグローバル人材の育成が目的です。生徒自身が課題を発見し、調べ、まとめ、発表するという型を身に付けながら、自ら学ぶ自立した学習者を育成するのが狙いです。

スケールの大きい国際バカロレア教育

国際バカロレア教育を推進するコーディネーターの前田紘平副教頭
国際バカロレア教育を推進するコーディネーターの前田紘平副教頭

――昨年、国際バカロレアの中等教育プログラム認定校になりましたね。

 プロジェクト学習を進めるうちに国際バカロレア教育のことを知りました。スイスに本部を置く国際バカロレア機構が提供している国際的な教育プログラムです。世界トップレベルの教育者が研究し、練り上げた全人教育プログラムです。最近では、日本の文部科学省も国際バカロレア教育の推進を図っていますが、私が国際バカロレア教育に目を向けた8年前は、情報収集も全て英語で随分な手間がかかりました。

 プロジェクト学習でも同様のことをしてきたのですが、国際バカロレア教育はより体系化されており、しっかりした評価基準があり、外部評価もある。導入のためのハードルは高かったのですが、内容を知るほどに本校のプロジェクト学習と親和性があることが分かってきたので、4年前から中等教育プログラムを取り入れています。

 認定校になるために研修を受け、実感したのは、世界の教育学者が本気で作り上げてきた教育のスキームだということです。ものの見方一つとってもスケールの違いを感じました。

――実際にどんな授業を行っていますか。

 科目も教科書も多くの学校と同じですが、異なるのは指導方法です。たとえば「Theory of Knowledge(知識の理論)」の授業では、ルール化されたものは絶対なのかどうかについてディベートします。批判的能力を養うのが主眼です。理科の授業でも現象を理解するだけでなく、それが人類全体にとってどんな意味があるのかを考えたりします。授業を通して生徒たちも、本質を捉えるために考えることを習慣化しているようです。

 教員にとっても大きな刺激になっています。国際バカロレア指導者の資格を取得するために行った研修先で多くの新しい発見をして帰ってきます。教員自身も姿勢が前向きとなり、間違いなく成長します。

――今後の展望を聞かせてください。

 国際バカロレアの中等教育プログラムで学んだ生徒は、現在高校1年生になりました。そこで来年からは高校に国際バカロレア・ディプロマプログラムコースを開設します。英語の授業の比率が高いので適性試験を課し、定員を15人としました。帰国子女にもぜひ挑戦してほしいですね。ディプロマプログラムを終了し、一定の成績を収めると国際バカロレア資格を取得できます。これは欧州の大学を中心とした国際的な大学入学資格となっています。国内の大学でも国際バカロレア資格者への対応は広がる傾向ですので、良い方向に進んでいると考えます。

 昌平のモットーは「手をかけ 鍛えて 送り出す」。グローバル人材の育成を目指し、次々と教育改革を進める同校の、これからの進化に注目したい。

(文:水崎真智子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:昌平中学校・高等学校)

 昌平中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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33116 0 昌平中学校・高等学校 2018/07/20 05:20:00 2018/07/20 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180719-OYT8I50013-T.jpg?type=thumbnail

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