【特集】少人数教育の温かさでコロナの危機を乗り切る…聖セシリア

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 新型コロナウイルス流行に伴う休校中、多くの学校で「学びをとめない」工夫が図られた。聖セシリア女子中学校・高等学校(神奈川県大和市)では、今年度に予定していた1人1台のiPad配布の矢先のアクシデントだったが、手持ちの手段を総動員する一方、生徒と教員の距離が近い温かな校風により、生徒の学習や生活、心理的な不安をバックアップしたという。当時の様子を教員と生徒に聞いた。

「Classi」や「Zoom」を順次投入して学習支援

教科書や副教材の解説動画を自作し、YouTubeでの配信も行った
教科書や副教材の解説動画を自作し、YouTubeでの配信も行った

 笠井理弘教頭兼教務部長の説明によると、同校がICT設備を導入したのは2015年度。学校用クラウドサービス「Classi」を生徒の成績データ管理や家庭への連絡などに活用することから始め、17年度からは各教員がノートパソコンやタブレット端末を所持し、「Classi」の学習ソフトや教員自作の授業スライド、動画などを授業に取り入れ始めた。

 さらに今年度後半には、iPadを生徒に1人1台配布し、学校のWi-Fiの容量を拡大して、双方向型のICT授業に踏み出す計画だったが、その矢先に新型コロナウイルス流行に伴う休校が始まり、手持ちの手段を動員しながらの緊急対応を余儀なくされた。

 さいわい、ほとんどの生徒の家庭にWi-Fi設備と端末があったため、4月から「Classi」のサーバーや学校のホームページで課題のプリントをやりとりして自宅学習の支援を始めた。5月からは課題に加え、ビデオ会議システム「Zoom」を使い、1日1時間のライブ授業を開始した。6月はライブ授業を1日2時間に増やすとともに、週1日の分散登校日に2時間の対面授業や課題の直接配布を行い、放課後は質問を受け付けるなどして学習フォローに努めた。一部教科の教員は、教科書や副教材の解説動画を自作し、YouTubeで生徒に配信するなどの工夫も行ったという。

特製の時間割や「学習記録」の対話で生徒を支える

ICTの設備について話す笠井教頭
ICTの設備について話す笠井教頭

 「本校は1クラス25人前後の少人数体制で、生徒と教員の距離が近い温かな校風です。通常なら授業以外にも気軽に対話し、生活面も親身に相談に乗ることができます」と笠井教頭は話す。それだけに、3か月に及んだ休校期間中、教師たちが心配したのは、生徒のモチベーションや学習、生活のリズムをいかに保つかということだった。

 そこで学年担当教諭たちが手掛けたのは、話し合って休校期間用の時間割を作ることだった。起床時間から始まり、Zoom授業や各教科の課題に取り組む時間、運動や「学習記録」書き込みの時間まで細かく組み込んで、通常に近い1日6時間の学習スケジュールを作成し、6月初め、生徒に配布した。

 中2の伊藤鈴菜さんは、「この時間割のおかげで生活リズムを立て直せました」と話す。 「最初はどう過ごしていいのか分からず、つい夜更かしして昼まで寝てしまう生活になりましたが、時間割に沿った生活を始めてからは、規則正しく生活できるようになりました」

 ただ、生活のリズムは取り戻せても、家にこもっている生徒たちの心理的なストレスは大きい。伊藤さんは勉強時間中、仲の良い友達に電話をかけ、スピーカーフォンにして互いの身の回りの雰囲気を感じながらそれぞれの課題を進めていた。空き時間には好きなイラストを描き合うなど、自分たちなりの工夫もしていたそうだ。

 これに対し、学校としては、「Classi」のサイト内に設けた「学習記録」という掲示板をコミュニケーションの場として活用することで、生徒たちを支えた。

 一日の終わりに、生徒はその日の取り組みや感じたことを「学習記録」に書き込む。教員は日々の連絡事項を書き込むとともに、生徒の書き込みにレスポンスしたり、アドバイスしたりしていった。

特製の時間割や「学習記録」の対話で生徒をサポートした中白教諭
特製の時間割や「学習記録」の対話で生徒をサポートした中白教諭

 中2のクラス担任の中白美香教諭は、「クラス全員の『学習記録』をまめにチェックし、早めのレスポンスを心がけました。それから小テストの結果が良かったり、勉強を頑張った様子があったりすれば必ず褒めました。また未記入が3日続けば電話をかけるようにしました」と当時の様子を話す。担任のほかにも教科担当教員や部活顧問など、さまざまな教員が語りかけを行ったという。

 伊藤さんも「学習記録」の教員たちのメッセージで、モチベーションが高まったという。日々の学習報告のついでに、木製のアクセサリーボックスを作っていることを報告すると、何人もの教員から「見てみたい」「どんな物か想像しています」などのレスポンスがあり、材料に使った「ファルカタ」という木について調べたというコメントも返ってきたという。「1度の書き込みにいろんな先生からコメントがついていることもあって、毎日読むのが楽しみでした」

受験を控えた学年には具体的な学習方針を伝える

タブレット端末を使用して授業や課題に取り組む生徒
タブレット端末を使用して授業や課題に取り組む生徒

 高3の山口葵さんは「休校中、毎日家に一日中いなければならないのはつらかった」と話す。これから受験勉強が本格化する時期に、通常通りの勉強ができないことに焦りを感じていたという。テニス部に所属する山口さんは週2回ランニングしたり、家族とテニスをしに行ったりしてリフレッシュを図った。また、志望校のパンフレットを読んでモチベーション向上に努めたりしたが、焦りは消えなかったそうだ。「そんな気持ちを支えてくれたのは、先生との対話でした」

 現担任の亀原勝宏教諭はテニス部顧問で、選択科目の世界史の担当でもあり、山口さんが1年生の時から身近な存在だった。「『学習記録』には毎日の報告や勉強の質問のほか、その時の気持ちも書き込みました。普段のおしゃべりそのままの感覚です。進路の不安を書き込んでも、先生からちゃんと返事が返ってくるので安心感がありました」

 「世界史の勉強に時間が取られている」と焦りの気持ちを書き込む山口さんに対し、亀原教諭は「毎日の学習は英語中心にしつつ、国語と世界史をバランス良く進めよう」と学習方針を伝えた。また、「繰り返し、問題に取り組むことで解くスピードが上がる」など具体的なアドバイスも送り、ときに「頑張るんやで」など、関西弁風の言い回しも交えて山口さんの気持ちを和らげた。

 7月、久しぶりに通常登校をしたとき、「学校ってありがたい」という気持ちが湧きあがったそうだ。「友達や先生とじかに会って話せるのはやはり楽しい。学校は勉強の場だけど、私にとっては安らぎの場でもあります。これから大変な時期だけど、先生に相談しながら頑張りたい」

 「今回のことはICT化推進の良いきっかけになりました」と笠井教頭は話す。「休校対応によって教員のICTスキルは上がり、一部にあった苦手意識もなくなりました」

 初の試みだったオンライン授業にも手応えを感じている。「生徒の細かい表情が見えるなど、きちんと運用できればオンラインでもほぼ通常並みの授業ができる。全員に同じ条件で映像を見せたり、文書を送ったりでき、時間を選ばずアクセスできる利点もあります。まずは、対面授業に組み合わせて予習・復習をオンラインで行うなど授業の組み立てを検討したいです。また、オンラインで面談の機会を増やすことも考えています。本校はやはり生徒とのきめ細かい対話が持ち味なので、特に受験を控えた高学年の進路相談を充実させたいと考えています」

 押っ取り刀でコロナへの対応を迫られた休校期間だったが、日頃から築かれていた生徒と教員の絆の強さを再確認する良い機会ともなったようだ。

 (文:上田大朗 写真:中学受験サポート)

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1553894 0 聖セシリア女子中学校・高等学校 2020/10/20 05:01:00 2020/10/20 06:03:16 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201016-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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