教員と生徒の距離を縮めたコロナ危機対応の軌跡…多摩大目黒

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 新型コロナウイルス対策で全国的に休校措置が取られる中、多摩大学目黒中学校・高等学校(東京都目黒区)でも、オンライン対応による授業の工夫が続けられた。「学びをとめない」ための努力を通して、オンラインの画面越しに教師と生徒たちの心の距離はかえって縮まったという。中学3年の学年主任で入試広報部長を務める井上卓三教諭に約3か月間の危機対応の軌跡を聞いた。

Zооm授業は教員2人態勢できめ細かく指導

コロナ禍でのオンライン対応について語る井上教諭
コロナ禍でのオンライン対応について語る井上教諭

 4月7日、政府の緊急事態宣言が出されると、同校も臨時休校に入った。中学3年の学年主任で体育科の井上教諭が、その時を振り返る。

 「まずは生徒たちの安否を確認することが第一でした。なにしろ、私たち教員は自分の受け持つ生徒と3月半ばから顔を合わせていない状況でしたから。手探りの中、とにかくオンラインでつなげて、みんなで顔を合わせようじゃないかと、それを急ぎました」

 手始めに、学習支援クラウドサービス「Classi」や電話で生徒に連絡を取り、Wi-Fiを導入しているか、導入していても家族がリモートワークをしていて回線がふさがっていないかなど、アンケートを取った。その上で、翌週にビデオ会議システムの「Zооm」でホームルームを行った。

 「環境が整った学年からオンライン授業をスタートしました。中学3年生に対しては、4月の第3週目には開始しています。もっと準備して態勢を整えてからという意見もあるでしょうが、『生徒の学びをとめてはいけない』という思いが勝りました」

入念な準備をして行われた数学のオンライン授業
入念な準備をして行われた数学のオンライン授業

 オンライン授業は、「Zoom」の最大参加数が100人であることを踏まえ、1学年3クラス106人を二つに分けて行われた。4月13日から5月9日までの中学3年生の時間割によると、始業は午前8時30分で、1時間目は午前9時15分から始まる。両クラスとも午前中に3コマの授業を行い、午後は課題学習の時間に充てた。国語と英語は毎日授業を行い、先取り授業で単元が進んでいた数学は週に2コマにした。

 また、毎朝1時間目の前にショートホームルームを行い、毎週土曜はロングホームルームの時間を取った。そのほか、週に1コマ「質問部屋」という時間を取り、教員がオンライン上で待機して、授業で分からなかったことや質問などを気軽に聞きにこられる場を作った。

 「授業を1日3コマとしたのは、生徒も教員もまだオンライン授業の仕組みに慣れていなかったし、画面に集中できる時間も限られているからです。何より、この時点では5月の連休明けからは登校してリアルで授業ができると思っていましたから」

 ところが、5月4日に緊急事態宣言が月末まで延長されて、登校自粛期間もさらに延びた。学校再開時期の見通しが立たない状況となったため、オンライン授業も本格化。5月11日から6月30日までは、午前8時30分に始業し、ランチタイムを挟んで午後2時までの4コマの時間割を組んだ。教科も英語、国語、数学、公民に、理科1、理科2が加わった。 

 「オンライン授業では教員2人態勢を取っていました。教科担当者が授業を進める間、もう一人はクラス全員の参加状況を画面上で確認します。また、最初の頃は、Zооmに部外者が入り込んでくるのではないかと、監視役の教員もつけていましたが、これが思いのほか役に立ちました」

 授業中に生徒が画面からフレームアウトしてしまうことがあるという。眠り込んでしまうこともあれば、リモートワーク中の家族と回線が重なってアプリが落ちることもある。監視役はそうした状況を目視したら、「どうしましたか。心配しています」と、すぐに自宅に電話をかけたという。

 「なかには、ちいさな妹や弟の面倒を見ながらオンライン授業を受けていた生徒もいて、『画面には出にくい』などと相談されることもあり、それぞれ個別に対応していました。聴き逃した生徒に向けて授業をPDFにしてアップするなどフォローアップも行いました」

オンライン上の「先生の部屋」で1年生との距離縮める

 教員たちが最も心配したのは、この春入学した中学1年生への対応だったという。

 「入学式もしていないし、新入生登校日も中止になり、まったく顔を合わせていない。新入生はさぞ不安だったでしょう。まずは教科書とiPad、学習用アプリのIDとパスワードなど一式を宅配便で配布しました。それから、1年生を担当する教員の発案で『先生の部屋』をオンライン上に作りました。『みんな、遊びにおいで』『保護者のみなさんも、お話ししましょう』と声をかけたところ、119人中70人以上の生徒の保護者とオンラインで対話できたのです。そのことでずいぶん教員と生徒、保護者の方々との心の距離が近づいたと思います」

 中学1年生は4月13日から学習用アプリで朝のホームルームを開始して、課題を送信した。4月15日から各家庭に電話連絡を開始し、22日からZооmを使って生徒と教員の2者面談を実施した。お互いの顔も分かり、関係が築けたところで5月11日からZооmによるオンライン授業がスタートした。

 朝8時30分からのホームルームに続き、授業は英語、数学、国語、理科1、理科2のうち午前中に3コマ。ランチタイムを挟んで、午後1時からは1コマ、「エノハタ(江野畑)の部屋」「サトウ(佐藤)の部屋」など、教科担当者の名前を取った質問部屋で、フォローアップに務めたという。

コロナの危機を通して心の成長を遂げた生徒たち

英語のオンライン授業で使用された手書きイラスト
英語のオンライン授業で使用された手書きイラスト

 「不測の事態に教員たちがチームを組んでオンライン授業に取り組んだ熱意は、画面を通じても生徒たちに伝わったはずです」と井上教諭は胸を張る。

 英語科のある教員は、イラストを駆使してさまざまな例文を分かりやすく伝えた。数学の教員は自前で手元を映せるウェブカメラを購入して、前夜5時間かけて授業準備をするなど、教室での授業に匹敵する学びを提供し続けた。また、緊張を解きほぐそうと、ラジオ体操やストレッチをZооm上で行ったり、美術教諭が手作りしたカードで「人狼ゲーム」をやったりするなど、生徒を飽きさせない工夫もしたという。

 「おかげさまで授業の遅れはありませんでした。むしろ進んだぐらいの教科もあります。遅れを取らないように詰め込んだのではなく、まずは生徒たちの安否を気遣い、何ができるかを考えて実践するうちに、結果的に遅れがなかったということです」

検温が行われている毎朝の登校
検温が行われている毎朝の登校

 中学3年は6月1日から週に2日の分散登校を開始し、そのほかの日はZооmで40分間授業を6時間行った。22日からは全校登校が始まり、1コマ40分に短縮して通常の時間割に。さらに29日からは通常通りの授業が再開された。

 「生徒たちが学校に戻ってきて感じたのは、周りへの気遣いができるようになったこと。ごみの分別一つとっても、誰かを思いやる気持ちが育ったように感じます。さらには、中学3年の生徒たちは、例年以上に学習意欲が高まり、高校進学時に特進コースを志望する子が増えてきました」と井上教諭は声を弾ませる。

 「この未曽有の事態で、われわれ教員は不安と闘いながら前へ進もうとしました。そして、生徒たちは自分をしっかりと見つめなおす時間が取れたと思うのです。たとえ、感染が再燃したとしても、対応できる蓄積ができました」

 「生徒たちの学びをとめたくない」という教師の熱意が、オンラインの画面越しにもかかわらず生徒との心の距離を縮めた。コロナ禍の行方は予断を許さないが、同校の学びが揺るぐことはないだろう。

 (文:田村幸子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:多摩大学目黒中学校・高等学校)

 多摩大学目黒中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

無断転載・複製を禁じます
1431992 0 多摩大学目黒中学校・高等学校 2020/08/27 05:21:00 2020/08/27 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/08/20200820-OYT8I50037-T.jpg?type=thumbnail

会員校一覧

東日本 共学校ページTOP

── 女子校ページTOP

西日本ページTOP

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

新着クーポン

NEW
参考画像
500円400円
参考画像
ランチでご来店のお客様にジェラートをサービス
参考画像
アクティビティご利用でソフトドリンク1本サービス

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
発言小町
OTEKOMACHI
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
The Japan News
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ