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【特集】創立70周年、これからも変わらない「心の教育」…玉川聖学院

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 玉川聖学院中等部・高等部(東京都世田谷区)は10月17日、創立70周年記念集会を開催した。コロナ禍の中、感染に万全の配慮をしながら出席した約240人の卒業生や元教職員らは、創立から現在までの歩みを振り返り、旧交を温めた。安藤理恵子学院長と出席した卒業生たちに、同校の長年変わらない「心の教育」について聞いた。

神に感謝し、70年の歴史を振り返る

多くの卒業生や元教職員らが集った創立70周年記念集会
多くの卒業生や元教職員らが集った創立70周年記念集会

 同校は1950年、牧師で初代学院長となった谷口茂壽氏によって創設された。この日の創立70周年記念集会は、創設者の名を取った谷口ホールで、午後1時から開会した。

 会場には、新型コロナウイルス対策に細心の注意を払い、事前予約した約240人の卒業生、保護者、元教職員らが集まっていた。最初の「感謝礼拝」では、賛美歌や祈祷(きとう)、聖書朗読、映像紹介のあと、バーナード・バートン理事長が登壇し、ステンドグラスを背に「さあ、神の御業(みわざ)を見よ」と題したメッセージを語り、「自由が丘のこの地でキリスト教女子教育を行うというビジョンを、それぞれの時代の困難があったなか、神が必要な人を与え、守り、導いてくださった」と感謝の祈りを(ささ)げた。

 次いで「感謝会」に移り、安藤学院長は、卒業生らを前に「心のふるさとへ、ようこそお帰りなさい」と呼びかけたあと、「教育方針は創立の時から変わらず、かけがえのない『私』を発見することです。私たちは神につくられた特別な存在で、この時代に生きるのに必要なものが備わってつくられているのです。人生とは、その発見をしていく旅なのです」と語りかけた。さらに、同窓会副会長や元教職員代表のあいさつ、学校からの現状報告、卒業生のゴスペルフォーク・デュオ「オリーブ」による歌唱披露があり、出席者たちは70年の歴史を振り返りつつ、学校の今を見つめ直していた。

 休憩を挟んで午後2時半からは、フィリップ・キンレイ2代目学院長の名を取ったキンレイホールに会場を移し、「歓談のとき」と題した茶話会を開いた。参加者らはペットボトルのお茶でのどを潤し、時を惜しみながら30分ほど昔話に花を咲かせた。また、70周年記念誌、学院長の説教集などの記念品も配られた。

 集まった人々の中には、感涙する人も少なくなかった。「卒業以来、ゆっくり聖書を開く時間も取れずにいたけれど、学校の教えが心の支えになっていました。70周年礼拝に参加できたことに感動しました」と子供を抱きかかえた卒業生の一人は涙を拭っていた。

「何よりも心を耕してもらった」

「温かいアットホームな学校です」と話すOGの久世さん
「温かいアットホームな学校です」と話すOGの久世さん

 茶話会の間に、出席者から感想を聞いた。1986年に卒業した久世聖美(くぜ さとみ)さんは、大学、社会人を経て結婚し、現在は日本キリスト教団聖ヶ丘教会の職員として働いている。「不思議ですね。在学中は“アンチキリスト教”で、聖書の授業で寝ていて怒られていましたのに」とほほ笑む。卒業後に知り合った今の夫が、キリスト教会の牧師の息子だったことから、再びキリスト教に接し、24歳の時に洗礼を受けた。

 在学中の思い出については、「英会話やディベートなど、勉強面でも社会人になって大変役に立ちましたが、何より、心を耕していただいたのだと、今になって思います。耕してもらった下地があったからこそ、実を結ぶことができたと思うのです。あなたは大切なかけがえのない人だと、肯定してくれる人が必ずそばにいました」

 現在大学生の娘も同校に6年間通った。在学中は保護者として学校活動に関わり、娘が卒業してからも、卒業生の保護者でつくる「玉聖友の会」のメンバーとして今も学校の行事に参加している。

 「生徒はもちろん、保護者も子供以上に学校が大好きになる、そんな学校です。世の中には人を蹴落とすことを教える学校もある一方で、この学校は本当に温かく、アットホームで、こんなに面倒見のいい学校があるのかと思うほどです。この学校に入学すれば、自分の知らない自分を、きっと見つけられると思います」

「どれだけ自分が愛されているかを教わった」

「先生方が本当に生徒を愛してくださる学校です」と話すOGのディオニシウスさん
「先生方が本当に生徒を愛してくださる学校です」と話すOGのディオニシウスさん

 ディオニシウスあゆみさんは、中高6年間を同校で過ごし、2005年に卒業した。国際基督教大学を経て、オーストラリアへ渡り、クイーンズランド工科大学大学院で学んだあと、現地の日系商社で働いた経験を持つ。オーストラリア人と結婚し、現地に8年住んでいたが、3年前に日本に戻り、2人の子供を育てている。

 「中学受験で志望校に落ちて入学したので、入学当初、外見はいい子を演じていましたが、心の中は荒れて、反抗心もありました。でも、日々の生活の中で、先生たちが愛をもって、私をかけがえのない存在として接してくれました」と、ディオニシウスさんは振り返る。 弁論大会やコンテストに出場する時も、先生たちが全力で応援してくれたのが心に残っているという。

 「一般的に学校では知識を教えることが重要とされているかもしれませんが、それよりも大切なこと、思春期にしかできないこと、それが心の教育です。どれだけ自分に価値があって、どれだけ自分が愛されているか。それを知らないと、大人になったとき、崩れてしまうのです。10代の内は気付きませんでしたが、先生たちがその種をまいてくれたのです。ここは心を育ててくれる学校です。他人を羨むのではなく、自分にしかない賜物(たまもの)、自分の価値を見つけられる学校なのです」

子供たちを追い詰めない「心の教育」

「心を育てることを大切にしている」と話す安藤学院長
「心を育てることを大切にしている」と話す安藤学院長

 2人は卒業後にクリスチャンになったが、安藤学院長は「クリスチャンかどうかにかかわらず、心を育てることを大切にしています」と話す。「今の子供たちは、言葉によって傷つけられているようで、とても心配です。こんな時代だからこそ、心の教育が大切なのです」

 安藤学院長によると、思春期の女子は他者と比較する大人たちの言葉に、追い詰められ、無気力になってしまうことがあるという。さらにインターネットに蔓延(まんえん)する、悪意に満ちた言葉や破壊的な言葉の中で子供たちが育つことも憂慮している。

 「本校の礼拝は、『あなたはこの世界で必要とされている存在です』といった心の栄養になる言葉が、子供たちにたくさん注がれる時間です。それが、自分の存在の確かさになり、失敗したって大丈夫という安心感につながり、物事にチャレンジすることができるようになるのです」

 さらに安藤学院長は、「現代は、人を育てることも効率よくできるという幻想を持っていると思います」と危惧する。「スピードや効率化は、人を追い詰める空気があります。人を育てるには、急ぎ過ぎてはいけないのです。その子のペースで、その子の力を確認しながら育てる。隙間があったほうがより大きく成長していくのです。追い詰めて育てても、卒業して燃え尽きてしまったら意味がありません。学び続ける意欲を持って卒業してほしいのです」

 同校の生徒には、かつては引っ込み思案だったと話す生徒が少なくないという。その生徒たちが、心の栄養になる言葉をたくさん浴びて、いつの間にか積極的に行動できる生徒に成長していくそうだ。

 70周年記念集会に集まった卒業生らの表情を見、声を聞くうちに、同校の「心の教育」は、今の時代にも変わらず必要なものであることを実感した。

 (文・写真:小山美香)

 玉川聖学院中等部・高等部について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1667240 0 玉川聖学院中等部・高等部 2020/12/04 05:01:00 2020/12/04 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201201-OYT8I50057-T.jpg?type=thumbnail

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