到達目標の明確化で深化するディープラーニング…かえつ有明

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 かえつ有明中・高等学校(東京都江東区)は、アクティブラーニングを改良した「ディープラーニング」を展開し、生徒たちの主体的な学習姿勢を育んでいる。学習到達目標を定めた「モデル・コア・カリキュラム」を使用する点が特徴で、これによって文字通り「深い学び」が可能になるという。いかに生徒の成長を評価し、伸ばしていくのか。広報主任の内山誠至教諭に話を聞いた。

モデル・コア・カリキュラム導入で教育の質を保証

かえつ有明が目指す教育について話す内山教諭
かえつ有明が目指す教育について話す内山教諭

 「本校では4、5人に1人が帰国生です。身近なところに海外の話題があったり、休み時間に英語で会話したりする生徒たちがいるなど、世界を身近に感じられる環境です」と内山教諭は話す。同校は、時代の流れにいち早く着目し、数年前から「ディープラーニング」「グローバル」「ダイバーシティー」を三つのキーワードとした新しい教育を進めてきた。

 三つのキーワードは互いに結びつきがある。さまざまな国で育った帰国生がたくさんいる「グローバル」な学校環境では、生徒たちのさまざまな言語的、文化的な背景を肯定し、積極的に受け入れること、つまり、「ダイバーシティー」を尊重する姿勢が欠かせないものとなる。

 「学校全体で一人一人の個性を尊重し、生徒の自分らしさを大事にしています。そのために、共感的コミュニケーション(Nonviolent Communication=非暴力コミュニケーション)について学び、授業内や生徒面談で意識的に取り組んでいます。『何を言ってもいいんだ』とか、『みんなそれぞれ違っていいんだ』と感じてほしいのです」

 内山教諭は、こうしたコミュニケーションによって形成される、開かれた自由な会話空間があってはじめて有効なアクティブラーニングが可能になると見ている。三つのキーワードは互いに結び合って一つの教育を形作っているのだ。

 ただ、同校がアクティブラーニングに取り組んできた中で、「ただ楽しいだけで終わらないか」とか、「知識不足にならないか」などの不安の声も聞かれたという。そうした不安を払拭するために、2017年度から導入したのが「モデル・コア・カリキュラム」だ。

 このカリキュラムには、アクティブラーニング教育を進めてきた同校の教師たちが、これまでの授業で得たアイデアや経験を集約し、中高6年間を通して教科ごとに定めた到達目標が盛り込まれている。さらに、これを表の形に整理した「ルーブリック(評価基準表)」を教師と生徒が共有することで、各単元の目標が明確になり、教育の質が保証されるという。

 同校の「ディープラーニング」とは、「モデル・コア・カリキュラム」を導入して進化させたアクティブラーニングにより可能となった「深い学び」のことだ。

 モデル・コア・カリキュラムでは、6年間で身に付けてほしい知識と資質・能力を、A「学び方を学ぶ」、B「自分軸を確立する」、C「共に生きる」と大きく三つに分けている。

 さらにA、B、Cそれぞれについて、各教科の単元ごとに細分化された到達目標が設定されている。たとえば、A「学び方を学ぶ」では、A1「知識を活用する」、A2「論理的に考える」、A3「批判的に考える」という具合だ。これらの目標に到達することを通して、幅広いスキルや感性を身に付けていくという。

ルーブリックの共有で課題が明確に

 アクティブラーニングを実施するうえでしばしば問題とされるのは、個々の生徒の達成度をどう客観的に評価するかということだ。ルーブリックはその問題の解消に役立っている。

 ルーブリックとは、評価項目とその到達レベルを縦、横の軸に取り、マス目状に構成した表だ。評価項目別にどのレベルに達しているかを点数化して評価できるので、生徒は自らの総合的な到達度が一目で分かり、より高い次元を目指そうという意欲につながるという。

スパイダーウェブディスカッションのまとめ
スパイダーウェブディスカッションのまとめ

 例えば、同校で行っているアクティブラーニングの手法に、「スパイダーウェブディスカッション」というものがある。約10人で丸くなってディスカッションを行い、他の1、2人が発言者と発言内容をチェックしていく方法だ。Aさん、Bさん、Cさんと発言した順番を線で結んでいくと、クモの巣のようになることからそう呼ばれている。

 生徒はディスカッションの後に、ルーブリックを使って評価していく。モデル・コア・カリキュラムの 「共に生きる」に沿ったルーブリックには、「小さなつぶやきも無視されず、おとなしい人にも発言しやすい雰囲気や声がけができた」という評価項目があり、これによって発言数の多い生徒だけが評価されるような偏りを避けることができるという。

 「大事なのはどれだけ議論を深くさせるかです。意見を表明することも大事ですが、一つの見方に対して別の見方を示したり、発言していない人に対して発言を促す問いかけをしたり、深い対話になるトピックを示したりすることも重要なのです。ルーブリックを使うことでこれを意識し、明確化することができます」

教員も学びながら新たなトライを続ける

 同校では、教師たち自身もより良い教育、より良い授業を目指し、さまざまな研修で学んでいる。慶応義塾大学の井庭崇教授が提唱する「パターン・ランゲージ」を使った校内での研修もその一つだ。

 その教材のカードを1枚取り上げながら、内山教諭が語る。「このカードには『もやもやこそ、学びのガソリンだ』と書いてあります。もやもやするからこそ、解決したいと行動するエネルギーが生まれることもありますよね」

 授業では、しばしば答えのない問いを巡ってディスカッションを続ける。授業の終わりには教師も生徒も、議論をまとめてすっきりしたいという気持ちに襲われるそうだ。しかし、「すっきりすることばかりを目指すのではなく、もやもやした気持ちを『意味のあるもの』と捉えることで、普通では行きつかない深い思考にたどりつけることもあるのです」と内山教諭は語る。

防衛省を訪れて「学校保護宣言」の批准を要望する署名を渡す生徒たち
防衛省を訪れて「学校保護宣言」の批准を要望する署名を渡す生徒たち

 こうした研修を通した学びによって、教師たちの間に新しいことにトライしやすい雰囲気が生まれ、教育への新たな取り組みが次々と実践されているという。

 生徒たちもまた、ディープラーニングを実践する中で、以前と比べて「自分に何ができるのか」「自分は何をしたいのか」について主体的に考え、実際に行動に移すようになったという。その一つの例が「学校保護宣言キャンペーン」だ。

 模擬国連のためにディスカッションを重ねてきた生徒たちの間で、政府に「学校保護宣言」の批准を呼びかける活動が始まった。世界には戦争時に学校を軍事利用している国があることを学んだのがきっかけだ。

 「世界で苦しんでいる子供たちがいるのに、なぜ政府は批准しないのか。自分たちがやれることは何か。そう悩んだ末、生徒たちはネット上でその現状や自分たちの考えを発信したり、志を同じくする全国の学校ともつながったりして署名を集めました。2018年5月には防衛省を訪問し、署名を手渡しました。他者を思いやること、自分自身の気持ちを大事にすること、主体的に行動することを大事にしてきた結果です」

 モデル・コア・カリキュラムによって、ディープラーニングは名前の通り深みを増し、生徒たちの学びはいっそう主体性を増しているようだ。内山教諭は「モデル・コア・カリキュラムについては、今後もより良いものにしていきたい」という。これからの展開に注目したい。

 (文・写真:小山美香)

 かえつ有明中・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

448672 0 かえつ有明中・高等学校 2019/02/18 11:45:00 2019/02/21 09:56:21 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190218-OYT8I50001-T.jpg?type=thumbnail

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