教師と生徒が共に学び、成長する「サイエンス科」…かえつ有明

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 かえつ有明中・高等学校(東京都江東区)は、中学生を対象として、学ぶスキルとマインドを身に付けるための独自教科「サイエンス科」を設けている。この授業は、議論方法の体得からフィールドワーク、プロジェクト学習へと高度化していく。授業を担当する教師たち自身もスキルアップに励んでおり、アクティブラーニングを改良した同校独自の「ディープラーニング」を実践する場となっている。この授業や教師の勉強会について取材した。

議論方法の学習から好きなテーマのプロジェクト学習まで

サイエンス科主任の田中先生
サイエンス科主任の田中先生

 「サイエンス科は、すべての教科に共通する思考のスキルを育てる科目です。この『サイエンス』とは単なる『科学』ではなく、理系・文系のさまざまな分野を網羅する人文科学や社会科学の『科学』と同じ意味でとらえていただければと思います」と、サイエンス科主任の田中理紗先生は説明する。

 田中先生自身は英語科教師であると同時に、さまざまな教科の教師が連携して行うサイエンス科のプログラム作成や教師の勉強会を企画運営している。

 サイエンス科の授業は、中1、中2では週2回実施される。中1は現在、アメリカの教育者が提唱する「スパイダーウェブディスカッション」を行っている。「スパイダーウェブ」とは「クモの巣」という意味。グループで輪になって討論する際、メモ上に書き込んだ参加者の位置を発言順に線で結んでいくと、図全体がクモの巣のように見えることからこう呼ばれている。

 「グループで話し合いを行うと、特定の人だけがよく発言するということが起こりがちです。このスパイダーウェブの図によって、発言の偏りに気付き、自己主張の強い生徒も『自分だけが話していればいいわけではないのだ』ということを理解します」と、田中先生はその趣旨を話す。

誰がより多く発言しているか分かる「スパイダーウェブ」の図
誰がより多く発言しているか分かる「スパイダーウェブ」の図

 中2では校外でフィールドワークを行い、情報収集や取材、分析、パソコンを使ったプレゼンテーションなどを行う。これまで、東京湾岸のお台場にある日本科学未来館など、学校近隣の施設を取材して臨海地区の魅力を探ったり、浅草や羽田空港など、東京の名所を訪問してその特色を紹介したりしてきた。「プレゼンテーションにも感情に訴える物語調のものと、思考を促す論理的なものとがあります。そういった違いについて学びつつ、パソコンのスキルなども身に付けます」

 中3ではサイエンス科授業は週1回となる。中1、中2で学んだことを基に、自分でテーマを決めて個人またはグループでプロジェクト学習に取り組む。

 「生徒たちがホームレスの支援団体を訪問し、実際にホームレスの方々にインタビューを行った時には、私たち教師も驚かされました。生徒は私たちの想定を超えたところで力を発揮しています。最後に保護者の方々や他学年の生徒と教員も招いてプレゼンテーションを行うのですが、そこでみんなの成長を実感することができました」

教師たち自身も週1回討論の手法を学ぶ

輪になってディスカッションを行う生徒たち 
輪になってディスカッションを行う生徒たち 

 10月16日、中1のスパイダーウェブディスカッションの授業を見て来た。場所は一般の教室ではなく、「ドルフィン・プロジェクトスペース」と呼ばれる、図書館の中の一角だ。同校は来年度から共学となるが、現在は男女別学であり、この日は男子生徒23人が参加した。

 生徒たちは四つのグループに分かれてイスを輪にして座り、間近に互いの顔を見ながら、「幸せとは何か」をテーマに自由に意見を出し合っていく。

 「食べている時、寝ている時が一番幸せ」というストレートな意見もあれば、「人にいいことをしてあげた時に、自分も幸せになれる」「目標を決めてそれを達成した時に、幸せを感じる」など、自分の経験を振り返ったかのような発言もある。

 サイエンス科の授業は、中学・高校を問わず、意欲のある教師たちが自主的に集まって企画する。今回の授業を担当した古賀裕也先生も、同校の高校社会を担当しているが、サイエンス科の教育に共感し、志願して中学生の授業を受け持っている。「この活動を通して人の話を聞く姿勢を身に付け、場の中で発言をしていない人がいないようにすることを学びます」

 この中1の授業に先立って、同じ「ドルフィン・プロジェクトスペース」で、サイエンス科の担当教師16人が研修会を行っていた。

研修を行うサイエンス科担当の教師たち
研修を行うサイエンス科担当の教師たち

 この研修会では、プロジェクト型の授業で知られるアメリカのチャータースクール「High Tech High」の手法を参考に、学校を「ワクワクする場所」にするためのプロジェクト設計をテーマとして話し合った。

 決められた時間の中で、参加者それぞれが一定のルールに沿って意見を出し合う手法を学ぶのが目的で、「校庭にディズニーランドのアトラクションを持ってくる」といった奇抜なアイデアから、「企業に出資を仰ぎ、保育園を設ける」といった堅実な提案までが次々と話し合われた。

 「教師自身がディスカッションやプレゼンテーションのスキルを学ぶと同時に、子供たちのやる気を引き出すコンテンツ作りに挑んでいます。教科や学年の枠を超えた協働の場であり、先生方の自由で活気ある雰囲気が本校の文化を作っていると感じています」と、田中先生は話す。

 実際にサイエンス科の授業に参加した生徒たちの声を聞いてみよう。中1の大石英獅(おおいしたけし)君は、「スパイダーウェブディスカッションで、皆で意見を出し合って、それをまとめる方法を学んでいます。中2になって行う学外の人へのインタビューも、楽しみにしています。自分に自信が付くのではないかと思うんです」と話す。

 中3の石川瑚都(いしかわこと)さんは、自主プロジェクトのテーマに「東京ディズニーランドの魅力」を選び、さまざまな情報収集をしている。「取材相手を自分で選び、アポを取って訪問します。自分は人と話すのが苦手だと思っていたのですが、この活動をしているうちに、もっと多くの世界の人とつながりたいと思うようになりました」

 高2の斎藤環(さいとうたまき)さんは、中3の時に「教師と過労死について」というテーマでプロジェクト学習を行った。「さまざまな学校に取材を申し込んだのですが、協力してくれるところが少なくて苦労しました。でも、教師は大変な仕事だけれどやりがいがあって楽しんでいる人も多い、というポジティブな結果が得られました。この活動を通して、自分が取材したことをどう魅力的にまとめるかを学んだと思います」

 高校には、サイエンス科を発展させた「プロジェクト科」という教科があり、クラウドファンディングやオリジナルカードゲームの作成など、さらに高度な活動に取り組む。サイエンス科で盲導犬の支援について調べた生徒が、高校に進んでからも自主的に支援グループの活動を続け、『動物と関わる仕事がしたい』と、大学で生物を専攻することに決めた例もあるという。

「調べ、実践し、発表するアクティブラーニングからもう一歩進み、『自分に何ができるか』に気付くところまで行く本校の『ディープラーニング(深い学び)』を、生徒たちは実践しています」と田中先生は実感する。

 同校は来年度から男女共学となり、サイエンス科の授業にも新たな多様性が加わる。「生徒たちからさらに思いがけない動きが出てくるのではないかと、私たち教師も今から楽しみです」

(文・写真:足立恵子 一部写真提供:かえつ有明中・高等学校)

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931325 0 かえつ有明中・高等学校 2019/12/04 05:21:00 2019/12/04 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/12/20191203-OYT8I50008-T.jpg?type=thumbnail

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