中1からのキャリア教育が意識を変える…京華女子

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 京華女子中学・高等学校(東京都文京区)は、中学の3年間を通じて独自の全人教育プログラム「EHD」を実施している。目的は「豊かな心の育成」で、10月の学園祭が済むと全学年で始まるキャリア教育もその一環だ。中1生はICTの学習を兼ねて、将来の自分を思い描き、調べたことを「私の夢」と題するパワーポイントにまとめて発表する。クラスでの発表の様子を紹介しよう。

「豊かな心の育成」目指す全人教育プログラム

 同校独自の全人教育プログラムEHD(Education for Human Development)は、2000年に学習指導要領で「総合的な学習」が導入されたのをきっかけに「豊かな心の育成」を目指して始まった。

 中学の3年間を通じて行われる体験中心のプログラムで、日本人として、さらに国際人として生きていくための精神性を身に付けていく狙いがある。内容的にはイングリッシュキャンプや国際理解、校外学習や箏曲、茶道、華道などの日本文化体験、手話や点字の学習、高齢者疑似体験、ボランティア活動、発表・弁論など多彩な取り組みが用意されている。

全人教育プログラム「EHD」について話す石井教諭
全人教育プログラム「EHD」について話す石井教諭

 11月から各学年で始まるキャリア教育もその中で重要なウェートを占めており、特に中1生ではICTの学習を兼ねて、資料作成と発表にパワーポイントを使わせるのが特徴だ。

 中1の学年主任を務める石井誠一郎教諭は、高校で自分が指導した経験から、高校から入学した生徒は、高3になっても将来やりたいことが見つからないことが多いという。

 「中高生は両親と学校の先生以外の大人と触れ合う機会がほとんどなく、狭い世界に生きています。ですから、早い時期からどういう選択肢があるのか知ることが大事です。そして将来に向けて、今、何ができるのかを考えることで、意識が変わってきます。小学校から中学校に進んだばかりの中1から、将来どういう自分になりたいのか、考えるきっかけにしてもらいたい」と石井教諭は話す。

ICTで制作したアニメーションまで使った発表

タブレットのパワーポイント画面を電子黒板に映し出して発表する
タブレットのパワーポイント画面を電子黒板に映し出して発表する

 中1のキャリア教育プログラムでは約2か月かけて「私の夢」をテーマに、自分が興味のある職業を調べ、パワーポイントにまとめる。その参考として12月にはキャリアガイダンスを開いて卒業生らを招き、それぞれの具体的な仕事内容や、その職業に至るまでの経緯を話してもらう。2018年度にはITエンジニアやキャビンアテンダント、銀行員など5人から話を聞いた。「抱いているイメージと実際では違うこともあり、職業の見方が変化する生徒もいました」と石井教諭は話す。

 それぞれがまとめたパワーポイントを使って1月に2回、クラス発表を行う。その中でクラス代表を選出し、2月にはそのクラス代表たちが「EHD発表会」で全校生徒と保護者を前に発表する。

 取材で訪れたのは、最初のクラス発表が行われた1月12日。この日はクラスの全員がパワーポイントで発表し、次の発表に向けて各自の発表をよりよいものにするため、お互いに良かった点や改善したい点を話し合った。

 発表には教室に設置された電子黒板を使用する。同校は中1の全員にタブレットを配布しており、生徒はそれぞれ自分のタブレットでパワーポイントのスライドを作成する。

大人顔負けのアニメーション技術を駆使した発表
大人顔負けのアニメーション技術を駆使した発表

 山吉蘭さんの発表が始まった。タブレットをワイヤレスで接続すると、パワーポイントが電子黒板にも表示された。すぐに「すごい」と同級生から感嘆の声が上がった。山吉さんの夢が鳥の形になって羽ばたいていく様子をアニメーションで視覚化した内容だった。

 山吉さんの「夢」は、イラストレーターかアニメーターになることだという。「小さいころから絵を描くことが大好きで、好きなことを仕事にし、人生を充実させたい」と、発表内容を説明した。

 石井教諭も「パワーポイントの技術指導はあまり細かくしていないのに、大人でもできないような技術を使っています。デジタルネイティブと呼ばれる世代ですから、遊びながら慣れていくのでしょう」と驚きの表情だ。

 山吉さんは「アニメーションの見せ方に工夫をしました。大変でしたが楽しかった。職業について詳しく知ることができてよかった」と話す。クラスの友達も「アニメーションをうまく使っていて、注目を受けやすい」と高く評価していた。

 松岡美迦さんの「夢」は「産婦人科医になりたい」だった。小さい頃から子供や赤ちゃんが好きだったことに加え、医療ドラマを見て憧れを持ったという。仕事の内容や、産婦人科医になるための道筋、どんな医者になりたいのか、また、そのために今やるべきことなどを調べて発表した。「子供の虐待や産後うつなど、出産や育児に伴う問題も増えています。私が産婦人科医になったら、こうした問題を解決するために、安心できる環境の病院を増やし、出産時の母親や子供の死亡率が減るように、貢献したいです」

 発表を終えた松岡さんは、「私は人前で話すのが苦手でしたが、この中学に入ってからは、授業で発表することがたくさんあるので苦手ではなくなりました」と笑顔で話した。

 伊達光有さんは「どこかで泣いている子供を笑顔にする人になりたい」という「夢」を発表した。虐待やネグレクトなどさまざまな問題を抱える子供を、笑顔にできるような仕事を考えているという。教師、保育士、児童福祉司などの職業を挙げ、「この発表を通して将来の夢についてより深く考え、目標ができました。自分らしく前向きに、今を一生懸命生きていこうと思います」と締めくくった。

 伊達さんは「学校の先生を尊敬していて、自分もそんな人になりたいと思いました」と話す。この発表を通して、「将来のために勉強など今できることをしっかりやっていきたい」と思ったそうだ。

 ほかにも、保育士や薬剤師、音楽プロデューサー、イルカのトレーナー、空港のグラウンドスタッフ、照明スタッフ、スタイリストなど、さまざまな職業について「夢」が語られた。

友達の発表を見て、自分の発表をさらによいものへ

友達の発表の良かった点、改善したい点を書いたメモ
友達の発表の良かった点、改善したい点を書いたメモ

 将来就きたい職業を一つに絞り切れない生徒もいる。川田瑛莉さんは、サッカー選手、天文学者、クリエイティブ系のうち、どれかの職業に就きたいと考え、三つの職業のメリット、デメリット、年収などを比べて発表した。

 「本やインターネットで調べましたが、年収はなかなか分からなくて苦労しました。メリットやデメリットを調べて、なるほどと思いました」という。

 生徒たちは友達の発表を聞いて、それぞれの良かった点、改善したい点をメモして、それを発表し合っていた。同校は、普段からメモを取る習慣を付けるように生徒に指導しているという。「大きな字でとても見やすい」「ゆっくりと読んで聞きやすい」「テンポがいい」「読むスピードが速い」「背景と文字は同じ色にしないほうがいい」など、さまざまな意見が出された。

 石井教諭は「友達の発表を見て、触発されるのでしょう。すぐに生徒たちは自分のスライドを直し始めます。こうして次の発表はよりよいものになっていきます」という。

 「このキャリア教育発表は1年間の学習の集大成です。入学したての頃から比べると、大きく成長しています」と石井教諭は話す。生徒たちは、発表を通して自分の夢を少しずつはっきりさせていく。将来に向けて今の自分を見つめ直す意識の変化が、学校生活をより充実させていくに違いない。

 (文・写真:小山美香)

 京華女子中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

454556 0 京華女子中学・高等学校 2019/02/21 10:09:00 2019/02/21 10:09:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/02/20190220-OYT8I50003-T.jpg?type=thumbnail

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