自分の殻を破るシアターラーニング…桐蔭学園女子部

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※中学校(女子部)は、2019年度共学化する中等教育学校へ統合の予定です(2018年1月現在)。

 昨年から本格的にアクティブラーニングを授業に取り入れた桐蔭学園(横浜市)。タブレットなどの電子端末を使った授業や、相互学習を主体とした授業はすでに展開しているが、この度、「シアターラーニング」という一風変わったアクティブラーニングが行われた。その授業風景を取材した。

ミュージカルでコミュニケーション力を磨く

ステージ上の特別席。普段と違う雰囲気に生徒は緊張気味
ステージ上の特別席。普段と違う雰囲気に生徒は緊張気味

 通常は演劇鑑賞などに使われている桐蔭学園シンフォニーホールに生徒たちが集まる。案内されるのはいつもの客席ではなく、ステージ上に用意された特別席だ。

 シアターラーニングとは、グループで短いミュージカルを創作する体験型のアクティブラーニング。体を動かし、声を出して自分の思いを表現し、他者と意見をすり合わせる中で、コミュニケーション力やグループワークの力を育むという実践的な教育プログラムだ。もともと企業研修で行われていたものを、中高生向けにカスタマイズしたとして注目されている。

 同学園では、4月に中学校男子部の1年生が、6月に中等教育学校の1年生が既に体験しているが、ホールのステージを使った試みは、今回の中学校女子部1年生が初めて。普段は見ているだけのステージに生徒自身が立つことで、非日常的な雰囲気を体感してほしいとの思いだ。

 講師を務めるのは、1988年の旗揚げ以来、数々のオリジナル作品を上演してきた「音楽座ミュージカル」のメンバー。生徒が着席すると、音楽座ミュージカルで俳優・プロデューサーを務める藤田将範さんが進行役となり、シアターラーニングの趣旨が伝えられる。

 「今日は皆さんに、自分らしさを出したオリジナルのミュージカルを作ってもらいます。言うまでもなく、作品は一人では作れませんから仲間が必要です。時に衝突することもあるでしょう。また、さまざまな人と関わるのは恥ずかしさも伴うものです。そんな自分の限界、殻を破ってもらいたいと思います」

 人前に出て表現することを頭で考えると、どうしても恥ずかしいという思いが先立ってしまう。そこで一歩踏み出して、声を出して体を動かす。それが殻を破ることにつながるのだという。ミュージカル体験は、それにうってつけの題材というわけだ。

仲間と作り上げるミュージカルを体感

劇団員のアドバイスを参考にオリジナルのミュージカルを作り上げる
劇団員のアドバイスを参考にオリジナルのミュージカルを作り上げる

 未知の授業形態に、はじめは緊張していた生徒たちだったが、自己紹介や簡単なゲームを行ううちに和やかなムードになり、次第に主体性が引き出されてくる。そんな雰囲気が出来あがったタイミングを見計らって、音楽座ミュージカルが「リトルプリンス(星の王子さま)」のワンシーンである「王子とキツネが出会うシーン」を実演した。迫力の演技を間近で鑑賞し、どの生徒もミュージカルの世界に引き込まれているようだった。

 鑑賞の後、今度は生徒がオリジナルのミュージカルを作る番となる。生徒には「誰かと誰かが出会って仲良くなるまでのシーン」というお題が与えられた。

 生徒たちは6人1チームに分かれ、劇団員指導のもと、「いつ、どこで、誰が」という設定や脚本の打ち合わせを車座になって始める。5分ほど話して、おおまかな方向性を決めたら、後は実際に体を動かしながら話を詰める。その動き一つひとつに、メンバーの意見を混ぜ合わせて劇を完成させていく。

 「クラス内で対立する二つのグループ」という身近なテーマを選ぶグループもあれば、「ミックスのアイス」「野菜とドレッシング」のように人間以外の役を演じるグループなど、柔軟な発想力が見られた。そこへ劇団員から「感情は言葉だけではなくて、もっと体全体を使って、全力で表現する」などと実践的なアドバイスが与えられ、完成度が高まっていく。

発表を行う生徒たち。自分の殻を破れるか
発表を行う生徒たち。自分の殻を破れるか

 準備に与えられた30分間が過ぎると、いよいよ発表会だ。そこで藤田さんから「ショー・マスト・ゴー・オン(幕が上がれば何があろうと最後までやりきらなければならない)」という舞台人の格言が贈られる。その言葉の通り、各グループとも短い時間ながらも、練習したことを全力で出しきってステージを披露し、参加した生徒たちは一様に満足げな表情を浮かべていた。

 こうした体験を経て、生徒は自分の殻を破ることの楽しさを味わい、さらに体験したことを顧みて反省点を克服するという目標を見つけていくことになる。新たな目標が見つかることで、生徒たちのモチベーションはさらに呼び起こされるに違いない。

初の試みに成功の感触を得る

 シアターラーニングという新たな取り組みを企画した学年主任の大山夕先生は、今回の試みの感触を語る。

 「どうなるか心配な部分もありましたが、生徒の集中力は高く、音楽座ミュージカルの方が言うことにきちんと反応して、積極的に取り組んでいたので安心しました。『演じる』という経験から、狙い通り、自分の殻を破ることや人の気持ちを考えることを学び取ってくれたのではないでしょうか」

 一方、シアターラーニングを体験した生徒の大津玲花さんは、今回の体験をこう振り返る。

 「何もないところからみんなで話し合って、一つの形になったことに感動しました。プロの方の演技は一体感がありましたし、歌に迫力があって私も思い切り歌いたくなりました」と多くの刺激を受けた様子だった。

 中学1年という年頃は、頭が柔軟で他者の意見を取り入れながら、自分で表現していくということが無理なくできる時期だ。それでいて、子どもから大人に成長していく重要な時期でもあるこのタイミングで、シアターラーニングを体験できる意義は大きい。生徒のコミュニケーション力やグループワーク力を高める絶好の機会に違いないと感じた授業風景だった。

(文と写真:深澤恭兵)

553799 0 桐蔭学園中等教育学校 2016/08/15 05:20:00 2019/04/25 11:33:43 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/04/20190425-OYT8I50019-T.jpg?type=thumbnail

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