「未来への扉」を開く探究の授業…桐蔭中等教

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 今春から共学校化した桐蔭学園中等教育学校(横浜市)は、「未来への扉」と名付けた探究の授業の充実に力を入れている。生徒に、変化の時代を生き抜くための学び続ける力を養ってもらうことが目的だ。今春入学したばかりの共学の1年生270人は、まさに「未来への扉」を開くためにこの授業に取り組んでいる真っ最中だ。進化する授業風景を取材するために6月5日、1年7組の教室を訪ねた。

4000年前にタイムスリップしたらどうするか

模擬国連部の顧問でもある橋本教諭
模擬国連部の顧問でもある橋本教諭

 「未来への扉」は、生徒たちに「未来を自分の手で切り開くための学び続ける力を身に付けてほしい」という願いから2016年度に始まった探究の授業だ。自ら問いを立て、必要な情報を集め、整理・分析し、解決する力を養成するのが目的だ。毎週1校時分(50分)、1年生から5年生までの5年間をかけて取り組む。1、2年生では、テーマに沿った情報の集め方、整理の仕方、プレゼンテーション資料の作り方などの基礎スキルを身に付けていく。

 この日の授業は、スクリーンに「テーマ」を映し出すことから始まった。1年生の7クラスに共通するこの大きなテーマは「もしも4000年前にタイムスリップしたら、どうやったら生き延びられるか」だ。

 7組では前回の授業で、この大きなテーマに沿って、学校の敷地内にある「食べられる植物」と「食べられない植物」を探した。木の実や雑草、花などを「食用にできるか、できないか」の視点で観察し、調べ、分類するサバイバル・ネイチャー体験だ。その日調べたことなどを「発表用のスライドにまとめて提出する」というのがこの日の課題だった。

 授業を担当する橋本雄介教諭が、「始めてください」と合図をすると、40人ほどの生徒たちは机と椅子を持って移動し、4人ずつの班に分かれた。発表用に作成するスライドは4パート8枚で構成することになっている。各班内で1人が2枚ずつ作成を担当し、4人全員がそれぞれ発表する予定だ。

 発表の口火を切る「はじめに」役は、聞き手の心がつかめるように話の上手な人、2人目は発見がうまく伝わるようにいい写真を選べる人、3人目は調べたことを的確な言葉でまとめるのがうまい人、最後は「全体をまとめる」キャプテンになれる人がふさわしいという。

 橋本教諭が役割の説明をしたうえ、「それぞれ適性を考えて役割を決めるように」と指示を出すと、すぐに各班で話し合いが行われ、それぞれの役割が決まった。その後はめいめいiPadを駆使して調べものをしたり、発表用のスライドにタイトルを付けたり、写真を選んだり、話し合いながら作業を続けていた。

 この授業の進め方について橋本教諭は「4人がベストなのは、5人、6人になると何もしないでその場にいるだけの生徒ができてしまうからです。それぞれが何を担当するか決めることによって、仲間同士、よく観察していいところを引き出したり、認め合えたりする。協働するために大切な形です」と説明する。

 探究の授業を統括する登本洋子教諭も「教室での学びがまばらにならないように、できるだけ均一になるようにしたいですね」と話す。やや集中力の落ちた生徒がいたら、すぐに席まで駆けつけ、目の高さを合わせて「今、どういうことを考えているの」などと問いかけ、生徒本人の言葉を引き出すなどし、丁寧な指導で学びの密度を維持する。

 なお、この授業では、授業支援アプリ「ロイロノート・スクール」が活用されている。各自が提出したスライドなどをクラス全員で共有できる機能があり、生徒たちは手元のiPadで、出し合った意見を一度に見比べ、互いに進捗(しんちょく)を把握し合うことができる。協働して学ぶうえで役立つICTツールだ。

「みらとび」の時間は生徒たちの楽しみ

探究の授業「未来への扉」でiPadを駆使してスライドを作製する生徒たち
探究の授業「未来への扉」でiPadを駆使してスライドを作製する生徒たち

 この日作成したスライドは、後日、班ごとの発表で使われる。さらに、1年生の7クラスでそれぞれ選ばれた最優秀班同士でプレゼンテーションを競い合う予定だという。

 橋本教諭は「今の時点ではさほど内容は問いません。インターネットや書籍から引用する時の参考文献の記し方に始まり、膨大な写真から適切な枚数の写真を選び取ること、盗用は禁じられているという初歩的なマナーなど、将来論文を書く上での約束事をしっかりと学んでもらうことが狙いです」と話す。また、そのために今後、発表の作法や資料のひな型をたくさん用意して生徒たちに学んでもらうつもりだという。

 「未来への扉」授業を受けている1年生たちは、どう受け止めているのだろう。ある男子生徒は「僕たちは『みらとび』と呼んでいて、毎週楽しみにしています。僕たちの班のテーマは『家を建てること』です。4000年前なので建材は石になると思います。僕は班のまとめ役のキャプテンなので、みんなに指示を出しながら作業を進めています。小学生の時も、総合的な学習の授業はありましたが、『みらとび』のほうが時空を超えていて楽しめます」と話す。

 ある女子生徒は、「未来への扉」授業がきっかけとなり、クラスメートとの仲間意識が高まったという。「班でテーマについて話し合ううちに、それぞれの考えていることが分かり合えて、すごく仲良くなれました。班ごとの学習が楽しくて、ほかの教科でも授業が楽しみです」

 別の女子生徒は、探究の授業が「コミュニケーション力アップにつながりました」と話す。同じ小学校から入学したのは自分だけだったので心細かったが、「未来への扉」で班の作業をするうちに不安も消えたそうだ。「手を挙げて意見を言うのは恥ずかしいけれど、『みらとび』なら、自分の意見を伝えたり、友だちの意見を聞いたりするのもとっても楽しい」と話した。

模擬国連や論文執筆へと発展する

「探究の授業から、将来の進む道が見つかるかも知れない」と話す登本教諭
「探究の授業から、将来の進む道が見つかるかも知れない」と話す登本教諭

 同校が探究の授業をスタートさせたのは4年前になる。現在の1年生、2年生は「未来への扉」として整理された探究の授業によく適応し、着実に自ら学ぶ力を付けてきている。同校は、この力をベースとした新たな取り組みを検討している。それは3年生徒全員参加で行う、模擬国連をベースとした探究の授業「15歳のグローバルチャレンジ」だ。

 模擬国連は、参加する生徒が一国の大使などの立場から担当国について調べ、国連を模した会場で政策を戦わせ、交渉しながら国際社会の問題解決を図るゲームであり、レベルの高い探究学習の一つと位置付けることができる。橋本教諭が顧問を務める同校の模擬国連部が、世界大会で準優勝を果たしたこともあるほどの強豪チームということもあり、その教育効果を部活動にとどめず、授業にも広く取り込みたい考えだ。

 登本教諭によると、「未来への扉」授業は、3年次に模擬国連を経験したうえで、4年次(高1相当)には、各教科の教員が指導するゼミを選んで研究を深め、5年次(高2相当)に論文を書き上げて発表するという流れで総仕上げとなるという。

 論文は最低で3000字。ネイティブの英語科教諭が指導するゼミでは、英字1500字以上という規定がある。多い生徒になると1万字以上の論文を書き上げる生徒もいるという。

 「探究の授業でゼミを選び、自分の課題を見つけることで、将来の進む道が見つかる生徒もいるかもしれません」と登本教諭は話す。

 自分のテーマを見つけて、追究していくことは人生そのものと言えるだろう。探究の授業を通して、青春時代にそれを見つけられる生徒は幸せだ。

 (文:田村幸子 写真:中学受験サポート)

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687722 0 桐蔭学園中等教育学校 2019/07/16 05:21:00 2019/07/16 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/07/20190711-OYT8I50010-T.jpg?type=thumbnail

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