【特集】ICT活用で臨時休校中も止まらぬアクティブラーニング…桐蔭中等教

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 桐蔭学園中等教育学校(横浜市)は、ICTを活用した独自のアクティブラーニング型授業に力を入れている。生徒1人1台のiPadとアプリケーションを使い、コロナ禍に伴う休校で登校できていない1年生に対しても、オンラインホームルームやアクティブラーニング型授業を実施したという。その内容や生徒たちの様子について取材した。

オンラインで1年生同士の自己開示を促す

ICTの活用について話す福田教諭
ICTの活用について話す福田教諭

 同校は「自ら考え判断し行動できる子どもたち」の育成を教育ビジョンに掲げ、2015年度からアクティブラーニング型授業を進めている。コロナ禍に伴う今年の休校中も、学びを止めないように生徒1人1台のiPadとアプリケーションを使い、オンライン授業を展開した。また、特に今春入学したばかりの1年生に向けて、アクティブラーニング型授業が実施できるようにするため、教師たちはオンラインの活用法を模索した。

 学年主任の福田周作教諭は、「一度も登校できていない1年生に対して、『何をするか』を決める前に、生徒に『どうあってほしいか=狙いの先の願い』を考えました」と話す。「そのうえで『中学生として一歩踏み出した状況を作りたい』という願いを教員が共有し、できることから進めていきました」

 まず手掛けたのは、学校ホームページ上での「バーチャル登校企画」だ。校舎の入り口から下足箱、階段を上がって教室まで、実際に歩いた目線で動画を撮影して配信した。1年生が学校の雰囲気を感じられるようにするためだ。

「『どこでもドア』があったらどこに行きたい?」という「お題」に対する生徒の答え 
「『どこでもドア』があったらどこに行きたい?」という「お題」に対する生徒の答え 

 次に、1年生の手元にiPadが届くと、授業支援アプリ「ロイロノート・スクール」を使った取り組みを開始した。毎朝オンラインのホームルームで「お題」を出し、生徒が答えるという「ワーク」だ。例えば「もし、『どこでもドア』があったらどこに行きたい?」という「お題」を出すと、「ハワイ」「月」「海外勤務をしている父のところ」など、さまざまな答えが返ってきて、生徒たちはその答えを画面で共有する。顔を合わせたことのない1年生たちが、互いの考えを少しずつ分かり合えるようにするための取り組みだという。

 福田教諭は「自分の内面を少しずつ開示し、クラスメートと共有することは、アクティブラーニングの最も大切な要素である『外化=頭の中にあることを外に出すこと』につながります。私たち教員は生徒の伴走者となり、生徒が安心して自分の内面世界を開示できる環境を、オンラインでも作りたいと考えました」と話す。

対面とオンラインの相乗効果で「傾聴と承認」の姿勢を培う

分散登校の初日に行われた「傾聴ワーク」
分散登校の初日に行われた「傾聴ワーク」

 6月の分散登校開始後は、同校が、自己肯定感を醸成する学びの基本としている「傾聴と承認」の姿勢を育てるため、「傾聴ワーク」を行った。

 1年生たちはペアになり、朝起きて登校するまでの出来事を30秒間話す。聴き手になった生徒は、最初はあえて相手の目を見ずに話を聞き流す。次に相手の目を見て笑顔でうなずきながら聞く。「このワークでは、聴き手の態度がいかに話し手の気持ちに影響するかを体感します」と福田教諭は説明する。さらに、ペアでお互いの自己紹介を行い、最後はクラス全員の前で、ペアとなった相手の「他己紹介」をする。

 福田教諭は「他己紹介」の目的について、「自分が紹介される時は、言いたいことがうまく相手に伝わっておらず、自分の話が他者を通して変換されることに気付きます。一方、相手を紹介する時は、聴くことが必要だと分かり、『話し手と同様、聴き手も大切』ということに気付くのです」と話す。

 「傾聴ワーク」を行った週末、生徒に自宅で「私の一番〇〇」というテーマで「1分間スピーチ」の動画を撮影させ、翌週から毎朝のオンラインホームルーム時に1人ずつロイロノートで配信した。生徒たちは発表者の伝えたいことを自分なりに理解し、それによって自分にどんな心境の変化が生じたかをメッセージカードに書いて送信する。

 このワークを通じて、福田教諭は1年生たちの変化を感じたという。「傾聴ワークを行う前に音声だけでプレゼンテーションを行った時は、多くの生徒がメモを一方的に読んでいましたが、傾聴ワーク後のスピーチでは、他者を意識して話すようになりました。さらに、メッセージカードを見ることで、生徒は自分の話がクラスメートにもたらした心境の変化を知り、『承認された』という安心感を得ています」

 理科担当の藤森小枝子教諭は、臨時休校中にロイロノートを使ったオンラインアクティブラーニング授業を1年生に実施した。一人の生徒が、それまでに学んだ内容を踏まえて「穴埋めクイズ」の答えや「単元のポイント」を書いた「カード」を送信すると、これに対してクラスメートがコメントを返すという方法だ。生徒はお互いのカードを見ることで、自分の気付かなかった授業のポイントを知って理解を深め、知識を共有できる。

 さらに、分散登校後の授業では、生徒同士が対面して問題を出し合い、解説するワークを行った。藤森教諭は「生徒同士が出題し、解答し、解説するという体験を通して、生徒も私も楽しみながら、授業の理解度を俯瞰(ふかん)できたと思います」と話す。

 こうしたオンラインと対面の相互作用について、福田教諭は「最初にオンラインで少しずつ自己開示を行い、学びを共有したからこそ、対面での傾聴ワークや理科の問題の出し合いで、生徒がのびのび活動できたと思います」と説明する。

未来の自分を想像し、今の自分を俯瞰するワーク

1年生を対象に行われた体感ワーク「タイムトラベル」
1年生を対象に行われた体感ワーク「タイムトラベル」

 6月に入って2回目の登校日には、1年生を対象に「学校と出会う」というテーマで5分間の体感ワーク「タイムトラベル」が行われた。

 まず、体育館に椅子を並べて「1年生」から「6年生」までの列を作る。生徒は上の学年へと席を一つずつ移動しては立ち止まり、各学年に予定されているイベントで「一切の制約がなく、何でもできる自分がどう活躍したか」をイメージする。生徒は最高の6年間を送った自分を想像したあと、1年生の椅子をふり返って見て、「入学当時の自分に何を言ってあげたいか、今できることは何だろう」と自問する。

 福田教諭は「6年後の自分を想像するのは難しいでしょう。でも、中学生としての一歩を踏み出したことを実感し、何でもできる最高の自分の姿を彼らなりにイメージすることで、今の自分を俯瞰して見る感覚を身に付けてほしい」と話す。

 取材に訪れた7月28日は、1年生に向けて、生徒会が発案した「オンライン生中継部活動紹介・校舎案内」が行われていた。生徒会長の上村渚君は発案の経緯について、「新入生歓迎会は部活を決めるだけでなく、その先のイメージを持ってもらう非常に大事な機会です。コロナ禍で中止となりましたが、この危機的状況だからこそ、新入生がより部活に興味を持ち、すんなりとその環境になじめる手助けをすることは先輩としての最低限の仕事だと思いました」と話す。「この準備を通して、私たちの活動の可能性は無限大だと実感しました。コロナ禍による不自由もありますが、その価値観をこれからも大切にしていきたいです」

 福田教諭は上村君の話を聞き、「部活動紹介の『狙いの先の願い』を、彼らが見据えていることに感動しました。先輩として何かしてあげたいという気持ちは、必ず1年生に伝わると思います」と話した。

 (文:籔智子 写真:中学受験サポート)

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1590322 0 桐蔭学園中等教育学校 2020/11/05 05:01:00 2020/11/05 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/10/20201030-OYT8I50017-T.jpg?type=thumbnail

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