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【特集】「模擬国連部」で自分を磨く…桐蔭学園

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整然とした校舎が印象的な桐蔭学園中等教育学校
整然とした校舎が印象的な桐蔭学園中等教育学校

 6年一貫の人気男子校・桐蔭学園中等教育学校(横浜市青葉区)には「模擬国連部」という部活動があります。発足は2007年。同校のなかでも歴史の浅いクラブながら、全国大会を勝ち抜き、ニューヨーク・国連本部で開催される世界大会に出場した回数は日本一です。具体的にはどんな活動をしているのでしょうか?

 6月1日のオープンスクールで行われた、小学生対象の体験講座「外交最前線!~二国間交渉を成功させよう!!」を取材しました。あわせて、NY世界大会に出場した部員や顧問の先生へのインタビューをお届けします。

「日本の当たり前」を疑ってみる

 模擬国連部というのは文字通り、国連会議の真似事をするクラブ活動だ。部員それぞれが一国の大使を任され、決められた議題について担当国の政策や歴史、外交関係などを考えながら、議論や交渉を行う。桐蔭学園中等教育学校(以下、桐蔭)では6年前、「文化祭で模擬国連をやってみたい」という生徒からの提案がきっかけになって部が生まれたという。どんな点が生徒たちをひきつけているのだろう?

校門横に大きな垂れ幕が
校門横に大きな垂れ幕が

 顧問の橋本雄介先生が言う。「私たちは日本人なので、知らず知らずのうちに“日本の当たり前”で物事を考えています。ところが、それは他の国にとっては当たり前ではないんですね」。たとえばアメリカ担当を任されたら、アメリカとして交渉に参加しなければならない。当然、「日本の当たり前」とは全く違うことを、本気で主張することもある。「そこで初めて、“そういう考え方もあったんだ”ということに気づくのです」。それぞれの立場を踏まえた上で問題解決の方法を探っていく。それが国際問題への関心を広げ、プレゼンテーション能力を身につけることにもつながっていくというわけだ。

 模擬国連の全国大会は2007年から始まった。英語での討論や文書作成まで求められる本格的な大会で、優秀賞を獲得した5組が、毎年5月に国連本部で行われるNY世界大会に出席できる。桐蔭の模擬国連部は、過去6回出場して4回ニューヨークに行った。その回数は日本一。つまり、日本で一番多く国連本部に行っている学校ということになる。ちなみに渡航に関する費用は、多くの企業が協賛している派遣事業のため、一切かからないという。

本物の外交官からアドバイス

クロアチア大使と懇談
クロアチア大使と懇談

 6月1日の講座では冒頭、今年の5月14~20日に国連本部を訪ねた時の様子を、橋本先生がプロジェクターを使って紹介した。「さすが国連本部、後ろを振り向くと拳銃をつけているガードマンがいました」「今年、桐蔭の模擬国連部はクロアチア大使として発言したので、国連のクロアチア政府代表部を訪問して大使や秘書官にアドバイスをもらいました」……。臨場感あふれる先生のお話に、会場に集まった子どもたちが引き込まれていくのがわかる。

子どもたちの二国間交渉

 その後、くじを使って、先生が子どもたちを2つの国に振り分けた。援助する側のA国。援助を受ける側のB国。A国、B国で1ペアだ。B国は援助を受けるかわりに自国の資源である「金」をA国に渡さなければならない。限られた国内資源と援助金を天秤にかけながら2国間交渉を進めていく。なお、担当する国についての情報は、あらかじめ先生が用意したプリントに記されているのだという。

 “対戦形式”の授業はどうやら、男の子の心をくすぐるらしい。政策を考えている間の表情は、真剣そのものだ。最後にペアごとに、自国の主張を発表する。小学生男子、意外にも!?相手国に配慮しながらの交渉ができている。

 「みんなすごいですね。私が最初に交渉した時は、相手から巻き上げられるだけ巻き上げてやろうという政策を考えました。そうしたら、逆に“国の看板を背負っている交渉ごとなのだからそれではダメ。外交は51対49での解決がいいんですよ”と言われたんですよ」。橋本先生による、こんなポイント解説があって、講座は終了。小学生対象の体験講座ということもあって、今回は英語を使う場面はなかったが充実した内容で、あっという間に40分間が過ぎた。

保護者の関心も高く

 印象的だったのは、講座が終わった後、保護者が橋本先生に質問を重ねていたこと。「子どもは他の部の体験に行っているのですが、この部活に興味があったので私だけで見学にきました」という人、「プリントの写真を撮ってもいいですか」と配られたプリントの写真を撮る人……。部活動の活動曜日を詳しく尋ねる人もいた。

 模擬国連部は、他の学校ではなかなかできない部活動だ。保護者の関心も必然的に高くなる。しかも、桐蔭学園の中等教育部門(中学校男子部、同女子部、高等学校男子部、同女子部、中等教育学校)の中でも、体系的な一貫教育で知られる中等教育学校の在籍者しか入部できない。この部で中心的な役割を果たしているのは、一般の学校の高1、高2にあたる中等4、5年生で、実際の活動がスタートするのは中等3年生(中3)からだが、「模擬国連部」が志望校選びの理由のひとつになっても不思議はないという気がした。

模擬国連部員に聞く~中学まではバスケ部、高校から部活動を始めてNYへ

 模擬国連部の活動は、帰国子女が参加するケースが多い。そんな中、一般生徒が中心になっているのが桐蔭の特徴だ。今年5月のNY世界大会に出場した中等6年(高3)の増渕翔君、小泉喜之介(よしのすけ)君に話を聞いた(以下、敬称略)。

――2人は帰国子女ではないそうですね。英語のクラブに入ろうと思ったキッカケは?

小泉 クラブ説明会の時に話をされた模擬国連部の先輩が、ものすごく話し上手だったんです。その先輩はNYにも行かれたそうなんですが、“自分は話すのが苦手だったけれど、模擬国連部の活動を通じて、こんなに話をすることが得意になった”と言っておられた。僕も話すことが苦手だったので、“あ、いいな”と思いました。

――英語を使うクラブだという認識はありましたか?

小泉 なかったですね(笑)。ただ話すことが上手になりたかったのと、扱っている国際問題に興味があったんです。

増渕 僕は中学時代はバスケ部で、模擬国連という部活があるのすら知りませんでした。顧問の橋本先生(国語科担当)が授業で、“模擬国連という部活の顧問をしているので、興味のある人は入ってみないか?”という話をされたのが入部のきっかけです。

――入部前から、英語は得意だったんですか?

増渕 いや、全然(笑)。むしろ、英語は苦手科目でした。それに模擬国連という名前の堅さから、難しい部活なんだろうなという気持ちもありました。でも、国際問題に興味があって、将来はそういう方面の仕事に就きたいと考えていること、“自分の知識をアピールできる場があるんだったら、これほど自分を出せる部活はないんじゃないかな”と思ったこと、そういった気持ちの方が勝ってチャレンジしてみようと思ったんです。

――英語の勉強はどんなふうにしているんですか?

小泉 CNNのニュースをアイフォーンで聴くなどはしていますが、とりたてて「コレが英語の勉強です」というような感じのことはしていないですね。

 英語を使うクラブだからと、英語についての質問ばかりしていたが、こちらが少々拍子抜けするほど、彼らには英語に対しての力みがなかった。どうやら模擬国連部に入った動機は、「英語を話したい」ということではなさそうだ。

顧問の橋本先生に聞く~生徒の人生を揺らしてやる!~

 模擬国連部顧問の橋本先生は言う。「僕はできるだけ生徒を驚かしてやろう、人生を揺らしてやろう、と思って顧問をやっています。日常の中にも面白いことがたくさんあるな、と思えたら、人生は開けると思うんです。そこに早く気がつくように促してあげたい」

 たとえば、先日は「国連大使は夜遅くまで仕事をしている。大使たちが食べる夜食のおやつを作ろう」という会議を行った。宗教的な理由などを考えて、生徒たちが決めたレシピは、とうもろこしのクレープ。「生徒はそこで終わりになると思っていたでしょうね。でも、“違うよ。これを実際に調理室に行って作るぞ!”」と橋本先生。実際にみんなでレシピ通りに作り、「この味で本当にいいのか?」を考える。こういったことも模擬国連部の活動のひとつなのだ。

学校の枠越え、模擬国連開催

 桐蔭では、港区神谷町にある桐蔭横浜大学法科大学院・東京キャンパスにおいて、模擬国連会議を開催するという活動も行っている。この会議には、渋谷教育学園渋谷、渋谷教育学園幕張、実践女子学園、聖心女子学院、聖光学院、栄光学園、鴎友学園といった首都圏の私立学校の生徒も参加し、ともに会議をつくる。「参加する生徒たちは、学校の枠を越えた大きな会議を経験することで、模擬国連の技を磨くのです」

 模擬国連部における“技”とは?橋本先生が具体例をひきながら答えてくれた。「生徒たちは全員、会議のためにリサーチや発表準備をしてきます。でも、全員がすべてを発表する余裕はない。そこで“交渉”が始まるわけです。相手の主張の本質を見抜き、自分たちの本音との共通点を見出す。そうして、話し合いの地平を作る。話し合いの地平をつくれる者こそ、話し合いを主導できる者なのです」。つまり、“技”を磨くとは、いかにして話し合いの地平をつくっていくか、という根幹の部分に関わってくるわけだ。

自分の持ち味に磨きをかける

不公平がないように国の割り当てはクジ引き
不公平がないように国の割り当てはクジ引き

 話し合いの地平をつくる――何と魅力的なフレーズだろう。その能力は、いわば、生きる力そのものといっていい。では、実際の部活動ではどんな練習をするのだろうか?

 「国際問題の研究や英語の勉強もしますし、弁論部的な訓練もやります。でも、一番大切なのは生徒自身が“自分の長所と短所”を考えること。長所を伸ばすなり、短所を減らすなり。自分で勝手な訓練をしています(笑)。つまり、一人ひとりが自分の持ち味に磨きをかけているんです。それが一番強いカードになることを彼らは知っていますからね。だから、“これが我が部でやっていることです”という統一した何かをお示しするのは難しいんです」(橋本先生)。

 なるほど、親世代の部活動とは一味も二味も違う。部活動は確実に進化している、ということを強く実感した。

 (文と写真:楢戸ひかる、模擬国連NY世界大会の写真は桐蔭学園中等教育学校提供)

 桐蔭学園中等教育学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1965542 0 桐蔭学園中等教育学校 2021/04/06 15:00:00 2021/04/06 16:03:49 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/04/20210406-OYT8I50064-T.jpg?type=thumbnail

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