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東海大学菅生高等学校中等部(東京都あきる野市)は7月19日に第1回オープンスクールを開催した。新型コロナ感染への不安が残る時期ながら、換気や手指消毒、社会的距離などに最大限配慮して65組の参加者を集めた。模擬授業や給食、クラブ活動体験の様子を紹介するとともに、就任2年目の下平孝富校長に学校の特色や今後の構想を聞いた。
最大限の感染予防対策を行って開催

前日までの雨はやみ、カラリと晴れ上がったこの日、午前9時半頃から参加者が続々と集まり始めた。広報室長の井上松雄教諭は、「コロナの影響が心配でしたが、65組の応募がありました。80組が参加して大盛況だった昨年には及びませんが上々です」と
参加者は教員の案内を受けて6階の講堂に入り、午前10時になると下平校長がマスク姿で登場し、開会のあいさつを行った。「こうした時期に開催すべきかどうか迷いましたが、本校の真の姿を安心してご覧いただくため、最大限の感染予防策を行った上で開催することにしました」
同校の校舎は24時間換気システムが稼働していて、1時間で全館の空気が入れ替わるという。廊下には各所に手指消毒液を用意し、子供たちの授業体験も10人程度の人数で十分席の間隔を取って行われた。
また、例年は中等部の有志生徒が、授業体験の補助やクラブ体験の案内に当たるが、今回は教員主体で行われ、生徒は参加しなかった。新型コロナ感染対策の休校に伴って日程が変動し、翌日から試験が行われるためだ。
さまざまな配慮、検討を重ねて、ようやく開催にたどり着いたオープンスクールだけに、下平校長も感慨ひとしおの様子で、「自分の将来のヒントを見つける『幸せ探しの旅』を、本校で始めてくれればと思います」とあいさつを締めくくった。
授業、クラブ体験においしい給食も

午前中、子供たちはまず授業体験だ。国語、社会、算数、英会話、美術、音楽から2教科を選んで、25分ずつ授業を体験する。
国語はことわざがテーマだった。教員が「一富士 二鷹 三
社会では、歴史上の人物についてのクイズが行われた。「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」など、戦国武将にまつわる三つの俳句や、室町時代の画家・雪舟の「足の指でネズミを描いた」伝説などを取り上げ、黒板に掲げたいくつもの肖像画の中から当てさせた。
英会話の授業はネイティブの講師が担当した。前半は、英語のヒントを聞いて国内外の人気キャラクターを当てるクイズ。後半はビンゴゲーム形式で、講師が読み上げる番号とさまざまな食べ物の名前を聞き取って「ビンゴ」の完成を競った。
美術は、有名な不可能図形の一つ「ペンローズの三角形」を鉛筆とペンの濃淡で描くことに挑戦。音楽は、打楽器カホンを用いたリズム演奏で、練習の後に参加児童による、合奏を行った。
ゲーム性のある楽しい授業がほとんどだったが、算数だけは通常の授業に近い形で行われた。素数、素因数分解、最小公倍数と最大公約数について丁寧な説明を受けたあと、子供たちは熱心にプリントの問題を解いていった。

この授業の意図について中等部数学科主任の川杉正和教諭は「近年数学に関心が高い子の参加が多いので、本校の入試問題の範囲を取り上げました」と説明する。授業を担当した佐保田顕洸教諭は「5年生にも分かるよう一から説明しました。皆関心を持って一生懸命解いていました」と手応えを話した。
授業終了後は、給食体験だ。緑豊かな丘陵を見晴らす6階のカフェテリアで、ハヤシライスにミニサラダ、デザートの手作りパンナコッタとオレンジジュースを味わった。
「給食も本校の特色の一つです。有名ホテルの勤務経験があるフランス料理のシェフが専任でメニュー作りから調理まで担当し、土曜や試験期間中も含めて年間156食を提供しています」と井上教諭は話す。食材は当日収穫の有機野菜や地元食材を多く使い、おいしく食べられる温度にも配慮しているという。
テーブルには向かい合わせの席の中央に仕切り板が取り付けられ、スプーンや箸は教員が配布するなど、細かな感染対策への配慮が見られた。

食後は午後1時頃まで希望者を対象とするクラブ体験があった。八つの運動クラブと三つの文化クラブの中から一つ選んで参加する。
運動系では男子向けの野球とバスケットボール、女子向けのバレーボール、バドミントン、ソフトボール、男女参加できるサッカー、テニス、剣道があり、それぞれ顧問の教員や高校生部員の指導を受けながら30分ほどの練習に汗を流した。
文化系では、エコクラブでマツボックリやドングリなどを使ったマスコット作り。吹奏楽クラブではさまざまな楽器と練習方法の説明。美術クラブでは自動車の写真の模写などに取り組んだ。
中高完全一貫カリキュラムや12年一貫教育も
昨年度から初等学校と中等部の校長を兼任している下平校長は、慶応大学経済学部を卒業して銀行に勤務した経験を持つ。のちに教員に転身してからも、経営の視点を生かして中学校の創立やいくつかの学校で改革に携わってきた。
下平校長は、東海大菅生について、「自然の豊かさと体験学習の多彩さが特長」と話す。 「子供が将来伸びるには、数多くの体験による知識の引き出しを持つことがカギです。特に中学時代は、体験を基に思考力や表現力を培う重要な時期。そうした意味で本校は、ふさわしい環境とプログラムがそろっていると言えます」
同校は、近隣にある都立羽村草花丘陵自然公園などの豊かな自然環境を活用して、野草や野鳥の観察、郷土学習などの校外授業を行っている。また、入学後間もなく行う静岡県の「東海大学三保研修館」でのオリエンテーション合宿を手始めに、鎌倉の校外学習や東京グローバルゲートウェイでの英語研修、北海道への修学旅行など、さまざまな体験活動を重ねる。さらに「夢育て講座」と名付けたキャリア教育では、各分野の職業人の講演会や職業体験などを聞く。盛んなクラブ活動や質にこだわる給食も、重要な体験の一つと位置付けている。下平校長は、こうした多様な研修や体験学習を体系づけ、生徒が自分の興味ある領域や強みを自覚し、将来を構想できるようなプログラムを整えたいという。
また、下平校長は、こうした体験学習をベースとした教育に加えて、生徒の人間力を長期的視野で育てるための学校改革も検討中だ。「21世紀を生きるには、未知の課題に取り組む気合と論理的思考力、チームで協働するためのコミュニケーション力、自分の意見を構築する力とそれを伝える表現力、そしてグローバル社会を生きる英語力の四つがベースになると考えています」
今年度の中学入試から導入した「算数特化型入試」は、「論理的思考力」の早期育成を狙ったものだ。「数学は、数式や論理という、いわば数学という言語で物事を理解・説明する学問。そうした感覚を持つ生徒を増やし、全体のレベルを上げていきたい」
また、来年度に新設する「医学・難関大コース」では、初めて中高6年間の完全一貫カリキュラムを導入する。さらにその先には、初等学校も合わせた12年一貫教育の確立も見据えているという。
「これができるのは、良い学園環境あってこそ。さまざまな体験を楽しみながら自分を伸ばせる学校であることを、多くの子供たちに感じてもらうため、オープンスクールには今後も力を入れていきます」
(文:上田大朗 写真:中学受験サポート)
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