思考力・判断力・表現力を培う「論理」の授業…日出学園

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 日出学園中学校・高等学校(千葉県市川市)は、中学の国語に「論理」という独自の授業を導入している。論理的な文章の作成を通して『思考力・判断力・表現力』を培うことが目的だ。「書く力」を身に付けることによって「読む力」も向上するため、他教科にも好影響を与えているという。この授業を導入した経緯や具体的な学習内容について、担当教諭に話を聞いた。

中学の3年間を見据え、段階的に「書く力」を習得

「論理」の学習内容について語る瀧口和隆教諭
「論理」の学習内容について語る瀧口和隆教諭

 「論理」の授業の発端は、約5年前に遡る。改定された学習指導要領に「思考力・判断力・表現力の育成を重視する」という内容が盛り込まれている点に国語科の教員たちが注目し、授業の改革を思い立ったことが始まりだ。

 「戦後の国語教育は情操教育を重視する傾向が強く、用意された文章を読み、主人公の気持ちを考えるといった内容が中心でした。さらに、作文も起こった出来事を時系列に並べる場合がほとんど。しかし、こうした従来型の授業で『思考力・判断力・表現力』を育成できるだろうかという疑問が生まれたのです」。3年前、中1生向けに初めて「論理」の授業を行った国語科の瀧口和隆教諭は、当時の教員たちの思いをこう語る。

 その疑問に対する答えを模索し、到達した結論が、論理的な文章の作成を通して『思考力・判断力・表現力』を培う「論理」の授業だった。従来の国語の授業とは異なり、「文章の構成やつながりを学び、論理的な文章を作成する」という目的を生徒に意識付けるため、授業の名称を「論理」とした。

 また、これまでは機会あるごとに行われていた文章作成の学習を、「論理」の授業では系統立てた内容とし、中学3年間を通して、少しずつ階段を上るように技術を習得するカリキュラムとした。最終的な目標は、自分の言いたいことが相手にきちんと伝わるよう論理的に書くこと、そして、相手に納得してもらうための効果的な書き方を身に付けることだ。

文章構成の型を学び、 推敲(すいこう) の習慣を身に付ける

中学2年生が使用している「論理」のテキスト
中学2年生が使用している「論理」のテキスト

 週に1回ある「論理」の授業は、生徒に文章を書かせることが主体となる。専用のテキストを使用し、毎回一つのテーマについて文章を書くが、テーマは「天気について」「地図が表しているものを文章で説明する」など多様だ。また、テキストには、少しずつ長文が書けるようになっていく仕掛けが盛り込まれている。

 1年生では接続詞の使い方を学び、まとまった文章を書くことに慣れる。2年生では段落に分けて書くことを学びつつ、最初に主張を述べ、次に主張を補強する根拠を並べるといった文章のつながりを意識する。3年生では、文章全体のつながりを意識しつつ、日本語として正しい表現になっているか、その場の状況にふさわしい表現になっているかを心がけ、文章を構成する力を身に付ける。

 1回の授業で書く文章は、低学年でも100~200字以上。毎回、目標の文字数に達するよう指導することで、長文を書くことに慣れさせる。さらに最初に主張を述べ、次に主張を根拠立てる具体例を挙げ、最後に結論を述べるという文章構成の「型」を学ぶ。文章構成の「型」を知っていれば、それを踏襲することで、さまざまな文章が書けるようになるという考えだ。

 常に文章構成を意識して書くことで、物事を時系列に並べるのではなく、自分の一番伝えたいことを見つけ、論理的に文章を書く力が向上するという。さらに、毎回自分の書いた文章を読み返すことで、推敲する習慣も身に付くとしている。

 「推敲の習慣は、メールを書くなど生活のあらゆる場面において重要です。書いたものを見返さずに送ると、トラブルの元になることもあります。現在はSNSの活用などにより、『一億総発信者』と言っていいほど、たやすく発信者になれる世の中です。だからこそ、『論理』の授業で学んだことを、生活のさまざまな場面で役立ててくれたらと思います」と、瀧口教諭は授業の大きな目的を説明する。

 「論理」の授業には指導法にも大きな特徴がある。教員は生徒の作文の中身については評価をしないという点だ。瀧口教諭は「『論理』という授業である以上、生徒の書いた内容の是非を問う場であってはならないと思います。おのおのが書こうとしている内容はおおむね認め、あくまでも、文章の道筋が論理的に展開しているかを最重要視し、指導していきます」と話す。

 長文を書く力が付いてきたおかげで、折々の学校行事について感想文などを書く場合、多くの生徒が、特に指導をしなくても最後まで書き切れるようになった。さらに、中1から「論理」の授業を受けてきた生徒が、中3の夏休みに「税についての作文」を書き、市川税務署長賞を受賞している。「論理」の授業を受けた生徒からは、「書くことが楽しくなった」という声が聞かれるという。スタートから3年、さまざまな成果が見え始めている。

「書く力」を鍛えると「読む力」も向上する

「論理」の授業で文章を書く生徒
「論理」の授業で文章を書く生徒

 「論理」の授業では、「書く力」が身に付くだけではない。論理的に書く練習を積み重ねることにより、生徒は、文章の主張がどこにあるのかを認識できるようになり、「読む力」も向上する。その結果、数学の文章題を解く力も向上したという。

 「数学の苦手な生徒に話を聞くと、『そもそも文章題の意味が分からない』という話をよく耳にします。読解力が向上することで、問題の意味を理解でき、解答に到達できるようです」と瀧口教諭は話す。

 「書く力」「読む力」は、数学以外にもあらゆる教科の土台となる。記述式問題が導入される新しい大学入試においては不可欠な力となる。

 「『論理』は学習指導要領の改定をきっかけに、生徒たちが社会に出た際、よりよく生きていくために必要な力を育てる授業としてスタートしましたが、結果的に、新入試制度にも対応できる形となったことはうれしいですね」と、瀧口教諭は笑顔を見せた。

 瀧口教諭はこの「論理」の授業をまだまだ改善していきたい考えだ。「今後の課題は、書いたことについて話し合う時間を確保すること。これまでも、できる限りディベートや発表の時間を設けてきましたが、もっとふんだんに『話す』時間を授業にちりばめることで、『話す・聞く』能力が伸びていき、今、重視されているコミュニケーション能力を向上させることができると思います」

 「論理」の授業の新しい展開によって、コミュニケーション能力が養われるならば、生徒の「生きる力」を大きく伸ばす役に立つことだろう。

 (文:籔智子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:日出学園中学校・高等学校)

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