「黒板の無い教室」で授業が飛躍的に効率化…瀧野川女子

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 授業のICT化(情報通信技術化)を推し進めている瀧野川女子学園中学高等学校(東京都北区)は2018年、壁面に大型ディスプレーだけを設置した「黒板の無い教室」を導入した。教師オリジナルの「ノート」を活用することで、板書を不要としたスピーディーな授業が可能になるという。その授業風景をリポートするとともに、山口龍介副校長に抱負を聞いた。

iPadのオリジナル「ノート」で授業を効率化

ディスプレーを使えばモンゴル帝国の版図拡大が一目で分かる
ディスプレーを使えばモンゴル帝国の版図拡大が一目で分かる

 「今日の授業のテーマは『蒙古(もうこ)襲来』です。鎌倉時代の日本に攻めてきたモンゴル帝国は、当時このように版図を拡大していました」。日本史の齋藤辰彦先生がiPadを操作すると、モンゴル帝国がアジア一帯に広がっていく様子が、教室の大型ディスプレーにスライドショーで映し出された。ヨーロッパや中東にまで、見る見る版図が広がっていく。

 この授業は昨年12月7日に行われた高3の日本史Bの授業だ。「『資料集の何ページを見なさい』という指示を出す手間が、まったくありません。画像やスライドショー・動画を使い、生徒に見てほしい情報をすぐさま提示することが可能なのです」と、齋藤先生は話す。

ノートと鉛筆の代わりにiPad ProとApple Pencil
ノートと鉛筆の代わりにiPad ProとApple Pencil

 生徒の手元にはタブレットPC「iPad Pro」と手で書き込みができる「Apple Pencil」がある。いずれも2016年から全生徒に配布済みだ。各生徒のiPad上には、先生があらかじめその日の授業内容をまとめておいた「ノート」が開かれている。「モンゴル帝国を築いた人物の名前を書きなさい」と齋藤先生が指示すると、生徒たちは「ノート」上の空欄に名前を書き込んだ。「ノート」にはメモを取るスペースもあるので自分なりの気付きを書き込んでいる生徒もいる。

 先生は自分の手元のiPadで生徒たちの「ノート」を閲覧することができるので、一人一人を指して答えさせることもない。生徒たちの回答を手元で確認しながら「ちょっと字が違うぞ」などと、即座に指摘していく。

 齋藤先生に限らず、教師たちはテキストや画像を盛り込んだオリジナルの「ノート」を、各自工夫を凝らしながら作成しているそうだ。

自宅学習も受験対策もICT化で容易に

先生の手元の画面で生徒の解答が確認できる
先生の手元の画面で生徒の解答が確認できる

 この日の授業を受けた生徒は「ほかの高校の友だちは、教科書やノート、資料集とたくさん持ち歩いているけれど、私はこれ1台。『すごく軽いね』とビックリされました」と話す。別の生徒も「この学校に入るまでは、iPad ProもApple Pencilも使ったことはありませんでした。感覚的に操作できるので、すぐに使いこなすことができました」と、授業のICT化を積極的に受け止めているようだ。

 iPad ProとApple Pencilは家に持ち帰り、自宅での復習に使うことができる。「授業の中で大切なところはiPadで録音し、家で聞き返しています」とある生徒は話す。「親が日本史に興味があるので、一緒に『ノート』を見て勉強したことを話し合っています」という生徒もいる。

 授業で受験対策となる内容を学んでいるため、高3でも予備校に通う生徒はほとんどなく、学校でも家でも専らiPad ProとApple Pencilで学習しているそうだ。

 「板書をする、それを書き写すという手間を省いたことで、時間に余裕が生まれ、授業の中に高度な内容を数多く盛り込むことが可能になりました。前の授業で学んだ箇所もiPadですぐに開けるので、『どこに書いてあるか分からなくなった』という言い訳は通用しません」と齋藤先生は話す。

壁一面のスクリーンにパフォーマンスを投影

 同校は学校全体でICT化を進めている。教師全員がノートパソコンMac Book ProとiPad Proを持って業務を共有しており、体育館や多目的ホールには高解像度の4Kレーザープロジェクターを設置して、学園祭などのイベントに活用している。

自ら動画の撮影・編集も行う山口副校長
自ら動画の撮影・編集も行う山口副校長

 同校のICT化推進を担う山口龍介副校長は、「iPad ProとApple Pencilが出たときに、『コレだ!』と直感し、一気に導入を決めました」と話す。「まず、授業の効率が圧倒的に違います。半分以下の時間で授業ができるので、残りの時間を、生徒が考え、自分で書く、話し合うといった意義のある活動に使うことができるのです」

 日本史の授業で、インターネット上で公開されている「東京裁判」の動画を生徒に見せたことがある。第2次世界大戦終結時の生の映像を見た生徒たちから、「淡々とした様子が、逆に印象に残った」という感想が漏れたという。「単に年号や名称を暗記するのではなく、音と映像、そしてそこにある物語によって、日本史を学ぶのです。生物の授業では、顕微鏡下でうごめく微生物の映像を見て、生徒たちは生き物の姿をリアルにとらえます。テクノロジーの力で、授業の質が格段に上がっているのです」

 「メディアクリエーションラボ」と呼ばれる部屋には映像編集などが容易にできる最新型のiMacパソコンが並び、プロのクリエーターが使うアプリケーションがインストールされている。教師たちは自分で撮影した学校紹介の動画を、ここで編集して動画共有サイトYouTubeにアップする。生徒たちも日々の学びの中でごく普通にムービーを作り、プレゼンテーションなどに生かしている。「言葉だけでは伝わりにくいことでも、映像を使うことで多くの人に分かりやすいメッセージとして発信することが可能です。『自分の思いを形にして世に送り出す』という本校の『創造性教育』を、ICT化によって実現しているのです」

 同校の学園祭「あかつき祭」では、美術部が自ら製作した映像を体育館の壁いっぱいに映し出し、その映像と音楽にダンスを合わせたパフォーマンスを繰り広げた。その様子はYouTubeで公開した。山口副校長は「我々の予想を超え、生徒たちの中から次々と新しいアイデアが生まれています。ここにある環境を最大限に生かし、未来へつなげていってもらいたいと思います」と話す。

 生徒たちの発信力・表現力を育て創造性を引き出すことは、増加するAO入試や2020年からの大学入試改革にも有利に働くだろう。山口副校長はICT化の効果に大きな期待を寄せている。

(文・写真:足立恵子 写真提供:瀧野川女子学園中学高等学校)

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297087 0 瀧野川女子学園中学高等学校 2019/01/23 05:20:00 2019/01/23 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190121-OYT8I50064-T.jpg?type=thumbnail

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