5年間培った起業家精神、ハワイのバザーで試せ…瀧野川女子

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 瀧野川女子学園中学高等学校(東京都北区)は、中1から高2までの5年間を通して、起業家精神を育む創造性教育を行っている。この集大成となる高2の「事業化実習」では、模擬会社を設立し、文化祭やハワイ大学で行うチャリティーバザーで、オリジナル商品を販売し、売り上げを全額寄付して社会に貢献する。事業化実習に向けて奮闘する生徒たちの様子を紹介する。

模擬会社を設立して、オリジナル商品を製作・販売

文化祭での販売に向けて、商品製作に励む生徒たち
文化祭での販売に向けて、商品製作に励む生徒たち

 取材に訪れたのは、文化祭「あかつき祭」の約2週間前の9月6日。5年(高2)のどのクラスも、文化祭での販売に向けて急ピッチで作業を進めていた。

 5年A組では、生徒たちが布製ブックカバーやしおりなどを製作しながら楽しそうにおしゃべりをしていた。

 「この商品名、何にしようか」

 「ゴルゴンゾーラ、とかはどう」

 「いいね、それ。創造性を働かせなくちゃね」

 「これ、いくらなら売れるかな」

 「500円なら計算しやすいし、会計作業も楽だよね」

 「でも利益率も考えないと。先生にいくらなら買うか聞いてみよう。マーケティングだね」

 5年生の各クラスは、4月に会社を設立し、社長、秘書、経理部、広報部、製作部、営業部の役割分担を決める。これまでにさまざまな企画を出し合い、販売するオリジナル商品を決め、仕入れから利益まで考えて、製作を進めてきた。広報部はCMも制作し、実際にネット上で公開している。文化祭で販売した後は、反省点や改良点を加えて、再度商品を製作し、10月のハワイ修学旅行で訪れるハワイ大学のチャリティーバザーで販売することになる。

5年間一緒に学んだ絆が、事業化実習を成功させるカギに

2017年に行われたハワイでの事業化実習
2017年に行われたハワイでの事業化実習

 5年A組の会社「万華栞(まんげかん)」の社長を務める山下久乃さんは、こう話す。

 「私たちのテーマは『日常に彩りを』です。万華鏡で見る模様と同じように、一日一日はすべて違い、同じ日はありません。だからこそ、一日に彩りを与えることのできる小物を考えました」

 製作しているのはしおりやブックカバーなど、さまざまな工夫を取り入れたオリジナル商品で、文化祭では200個を販売予定だという。

 5年A組の生徒は12人。中高一貫コースが設置された年に入学した第1期生として、5年間同じクラスで学んできた。

 この学年は中1からデザイン思考を学んでおり、ブレインストーミングもお手の物だ。

「こんなことに困っている。それなら、それを解決する商品を作ろうと、アイデアがどんどん出てきます。急にオリジナル商品を作れと言われたら困るのでしょうが、私たちはずっと創造性教育を受けてきていますから」と山下さんは話す。

 中1ではデザイン思考を基に理想の街のジオラマを作り、中2ではゲームプログラミングやアプリ制作を学んでロボットコンテストに挑戦した。中3では自由研究発表、高1では商品企画コンペティションで近未来の夢の商品を考えてきた。これらの創造性教育の集大成が高2の事業化実習なのだ。

5年A組の生徒の成長について話す担任の鈴木教諭
5年A組の生徒の成長について話す担任の鈴木教諭

 こうした授業を受けてきた生徒たちは、みな積極的でユニークだという。なかには、アメリカの姉妹校に1年留学した生徒や、フィリピンに1年留学した生徒もいる。山下さんは、「うちのクラスの12人、みんなすごいんです。それぞれ個性が強くて、とても影響を受けています。そして、やるときはみんなで協力してやる。私が苦手なところは、みんなが補ってくれます。ハワイでの実習も楽しみです」と話す。

 山下さんが5年間の思い出として一番心に残っているのは、中2の奄美冒険旅行だという。「シーカヤックをこいだり、ウミガメに出会ったり、まさに冒険でした。こうやってこいだらいいんじゃないかとか、みんなで一緒に試行錯誤してやってきました。体育祭も合唱祭もみんなで協力して乗り越えてきたから、深い絆があります」

 こうして育てた絆や協調性が、事業化実習を成功させるカギとなる。担任の鈴木裕太教諭も、クラスの成長ぶりを語る。「5年間同じクラスなので仲はいいのですが、それゆえに配慮を欠いてしまう面もありました。しかし、事業化実習を通して、『親しき中にも礼儀あり』が分かってきました。『社長』の山下さんが謙虚に頑張っているので、みんながついてくる。『自分がカバーできるところはないか』と、お互いに足りないところを助け合っているようです」

ハワイでの事業化実習の経験が生徒たちの糧になる

 文化祭での販売後、生徒たちはオリジナル商品にさらに改良を加えて、ハワイ大学でのチャリティーバザーに臨む。

ハワイでの事業化実習について話す芝辻教諭
ハワイでの事業化実習について話す芝辻教諭

 昨年、芝辻憲子教諭が引率したクラスでは、練り香水をリップスティック形にした「ペイステッド・パフューム」を開発し、販売した。「あかつき祭のテーマは、『学生生活をよりよく再デザインせよ』です。生徒たちは体育の時に汗をかくので、臭いを防ぐもので、かつ、香水のように匂いがきつくないものを考えました。練り香水自体は既存のものですが、それをリップスティック形にするという新しいアイデアで、これまで世の中にないものを作り出しました」

 ハワイでは、事前に販売する時の英語のセリフも用意していたというが、「実際に使うことは少なく、生徒たちは身ぶり手ぶりで苦労して伝えていました」と芝辻教諭は話す。

 9チームの生徒105人で、売上は計997ドル。生徒たちから「お金を稼ぐって、大変なんですね」と声が上がったという。

 「仕事をしてお金を稼ぐには、相手を喜ばせなければなりません。商品を売って、お金をもらう以上、その責任があります。事業化実習では、お金の大切さに気付き、その背後に何があるのか、何のために売っているのか、利益をどう使うかを考えることになる。それが生徒の大きな成長につながったと思います」

 この「成長」の中身について芝辻教諭は、「正解はありません。生徒それぞれ答えが違うし、感じたこと、得たことも違います。それはそれでいいと思います」という。「ただ、こうした体験を通して高校生のうちから起業家精神を育むことは、社会に出てから大きなアドバンテージになると思います」と語る。

 事業化実習を通して生徒たちは校外の大人たちや社会の仕組みに接する。それは小さな経験かもしれないが、その中で気付いたもの、得たものは進学しても、社会に出ても、生徒を支えるかけがえのない糧となることだろう。

 (文:小山美香 写真:中学受験サポート 一部写真提供:瀧野川女子学園中学高等学校)

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900828 0 瀧野川女子学園中学高等学校 2019/11/20 05:22:00 2019/11/20 12:50:38 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191115-OYT8I50022-T.jpg?type=thumbnail

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