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【特集】ICTによる授業効率化で35講座の「ゼミ」実現…瀧野川女子

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 瀧野川女子学園中学高等学校(東京都北区)は今年度、高2、高3生を対象に専門性の高い学習内容を盛り込んだ「ゼミ」をスタートさせた。ICT環境の充実によって効率化できた分の授業時間を活用するもので、全35講座の中身は、教科の学びを深化したものから総合型入試に特化した「プレゼンテーション演習」、検定試験対策など多岐にわたる。ゼミの導入を推進した山口龍介副校長に狙いを聞き、油彩画ゼミの風景をリポートする。

専門性の高いゼミで大学入試改革に対応

35講座の「ゼミ」について説明する山口副校長
35講座の「ゼミ」について説明する山口副校長

 同校は、今春からカリキュラムを改訂して35講座の「ゼミ」導入に踏み切った。「大学入試が音をたてて、変わってきています。偏差値よりも、その生徒の主体性や、これまで何を学んできてこれから何を学びたいかを明確にし、主張できることが求められています。そのために、より専門性の高い『ゼミ』を授業として時間割に入れたいと考えたのです」。山口副校長は、ゼミ導入の理由についてこう話す。

 「ゼミ」導入に踏み切れる条件も整っていた。ICT環境の充実による授業の効率化だ。同校のICTの導入は2010年からスタートし、19年9月には全普通教室から黒板をなくし、大型ディスプレーを使用するなど大きくICT化を実現した。教員、生徒たちは、普段からiPad Proを使った授業に慣れており、コロナ禍に伴う休校中もGoogle Meetの機能を使った双方向型のオンライン授業にすぐに適応して、時間割通りの授業をスムーズに行えたという。

 山口副校長は、「テクノロジーのおかげで、2倍、3倍のスピードで授業が進められるようになりました。ゼミを着想したのも、学習指導要領以外のことにも時間を使えるようになったからです」と話す。

 同校も高1までは、学習指導要領にのっとって美術や家庭科を選択必修科目としているが、「これまで選択必修では、選択科目の中で興味がなくても、少なくない数の授業の必ずどれかを履修しなければなりませんでした。それでは生徒たちの興味もそがれ、意欲も湧かないでしょう」と山口副校長は話す。「そこで高校2年生以降は、35講座の多岐にわたるゼミを用意して、生徒たちに本当に自分の関心があるものを選ばせるようにしたのです。授業の復習など自由に学習したい生徒には、自習も承認しています」

 35講座のゼミの内訳は、大学入試改革を見据えて国語、英語、数学、理科、地歴公民、家庭科、芸術など、教科の内容を掘り下げたものや、総合型入試に特化したプレゼンテーション演習、さらには学園直営食堂を営む料理長が講師を務める「飲食店のメニュー開発と経営」など実務に直結する実践的な講座もある。このゼミは、平日に1コマ50分間の授業を2コマ通しで行っている。

絵と対峙し、自分で考える油彩画ゼミ

「絵とじっくり対峙して考えることで、より深みが増します」と話す石川教諭
「絵とじっくり対峙して考えることで、より深みが増します」と話す石川教諭

 10月29日の4時間目に、高2生の油彩画ゼミを見てきた。指導する石川一樹教諭は東京芸術大学美術学部絵画科で油画を専攻し、卒業後の1990年から瀧野川女子で美術教諭を務めている。

 この日は4人の生徒が、それぞれキャンバスに向かっていた。4人中3人は美術部員だという。その中に古い写真を見ながら、幼い頃に祖父と花見に行った時のことを描いているという生徒がいた。石川教諭は、生徒の絵筆がなかなか進まない様子を見て近寄ると、色調や陰影の付け方について一言、二言アドバイスして、そのまま傍らに立っていた。

 「生徒たちには自分で考える時間が必要だと思っています。絵とじっくり対峙(たいじ)して考えることで、より深みが増します。場合によっては生徒と1、2時間、言葉を交わさないこともあります。その余白も大切なのです」と石川教諭は話す。

 ケージに入った愛犬を描いている生徒もいれば、誰もいないキッチンを題材にしている生徒もいる。自画像を描いていた生徒は、「放課後に美術部で油彩画を描き、さらにこのゼミで描けるのは、本当にうれしい。美大を目指していますが、ゼミのおかげでわざわざ校外の美術予備校に行かなくても、しっかり学べます」と話した。

 石川教諭は、「放課後の部活とはまた違う雰囲気で、ゆったりと絵に向かえるのは、とてもぜいたくな時間だと思います」と話す。油彩画のゼミも休校中にオンラインで開始されたという。「学校が再開して、やっと対面で生徒たちに教えられるようになりました。オンラインでは難しい『空間の共有』ができることで教える幅が広がったと思います」

 もっとも、美術部員たちは普段から創作活動でiPadを使い慣れていたため、非常にスムーズにオンライン授業に対応できたそうだ。8月8日に実施された「体験入学」でも、受験生向けにオンラインで美術部体験を実施した。「美術教室を舞台にして、ダイナミックにペインティングしている動画を流しました。参加者にも追体験してもらえたと思います」と山口副校長は胸を張った。

生徒たちの未来につながる講座作り

油彩画ゼミで、キャンバスに向かう生徒たち
油彩画ゼミで、キャンバスに向かう生徒たち

 石川教諭が指導する美術部員たちは、これまでも同校がICT教育を推進する中で、パイロット的な役割を果たしてきたという。

 「受験生を対象にした説明会で、次年度の新入生全員へのiPad導入を告知したことがあります。そのとき、iPadとApple Pencilを使ってデモンストレーションを手伝ってくれたのが美術部の部員たちです。その様子を見た他の在校生たちが『新入生だけずるい。私たちも使いたい』と主張したこともあって、全学年へのiPad導入が決まったという経緯があります」と山口副校長は愉快そうに語る。

 このほかにも部員たちは、デジタルデバイスを使ってデッサンを描いたり、コンピューターグラフィックスを作製したりと、自由自在な使いこなしを動画にしてYouTubeで紹介するなど、表現活動の幅を広げているという。

 近年、大学入試は大きく変容している。例えば総合型選抜では、スポーツや文化活動、資格取得など、中学、高校時代の活動歴も評価の対象になる。「大学入試は、これまでの偏差値重視から、コミュニケーション能力や問題解決能力、そして、無から有を生み出す創造性や新しい仕事を仲間と創り出す起業家精神などが重視され、そのため、これまでに学んだことが評価されるようになりました。医学部に現役合格した生徒は、学力も合格水準に達していましたが、グループディスカッションでコミュニケーション力を大きく評価されたと聞いています」と山口副校長は話す。

 同校の卒業生の進路を見ると、全体の7割以上が推薦やAO入試で12月中に志望校合格を果たしている。今年度、導入されたゼミは、生徒が自分をPRするための武器を見つける絶好の機会となるだろう。

 「今期は35講座ですが、生徒たちからの要望も反映しながら、学期ごとに内容を更新しています。たとえばグラフィックデザインやロボット工学など、生徒たちの未来につながるものも加えていきたいですね」と山口副校長は抱負を語った。

 (文:田村幸子 写真:中学受験サポート)

 瀧野川女子学園中学高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1675010 0 瀧野川女子学園中学高等学校 2020/12/09 05:01:00 2020/12/09 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/12/20201204-OYT8I50018-T.jpg?type=thumbnail

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