豪州ホームステイ「先発隊」生徒3人の“冒険”…桜丘

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 中3生全員のオーストラリア研修旅行を行っている桜丘中学・高等学校(東京都北区)は、3人の生徒を特に「先発隊」として選抜し、2週間早く、教員の同行なしに現地に向かわせる試みをしている。先発組はホストファミリーが決まっている以外、すべて1人で手探りしながら現地での研修期間を乗り切る。昨年12月13日に同校を訪れ、昨年度と今年度の「先発隊」メンバーに、“冒険”への思いを聞いた。

生徒3人だけのオーストラリア先発隊

留学プログラムについて話す藤岡教諭
留学プログラムについて話す藤岡教諭

 同校は、フィリピン・セブ島の英語研修、シンガポールなどでの異文化研修、アメリカやオーストラリアの姉妹校への短期留学など、海外研修プログラムを数多く用意している。中3になると、全員参加のオーストラリア研修旅行があり、約10日間ホームステイしながら姉妹校に通う。特徴的なのは、希望者の中から選抜された「先発隊」3人が、自分たちだけで2週間早く現地に入ることだ。先発隊の生徒には、より深い異文化交流をしてもらいながら、後発組の生徒が現地校でスムーズに学べるよう、橋渡し役にもなってもらう狙いがある。

 中3を担任する藤岡和宏教諭がこう説明する。「中3のオーストラリア研修旅行は20年前から続いていて、先発で行く3人には添乗する教員が付きません。いわば海外に“放り込む”わけで、文字通りクリエイティブでサバイバルな経験を積んできます。本校は『勤労と創造』という校訓を大切にしています。コツコツやるだけでなく、クリエイティブさが大切であり、それを養うのが異文化研修なのです」

 もちろん、先発隊を“放り込む”と言っても、緊急時には同校と20年来の協力関係にある現地の旅行代理店が安全対策を取っている。また、姉妹校「Trinity Anglican School」の国際交流・留学担当教諭で日本通のジョイス・レスター先生が担任役を務める。その上で、基本的に自分たちから積極的に希望を伝え、学習プログラムを作っていくところが、後発組のグループ研修との大きな違いだ。

 後から来る他の生徒たちは2人で1家庭にホームステイし、現地校にも2、3日通うだけなのだが、先発隊の3人は1人で1家庭にホームステイし、現地の学校で約3週間しっかり授業を受ける。放課後の時間の使い方もホストファミリーと相談しながら決める。

留学先の姉妹校の副校長先生(右)と
留学先の姉妹校の副校長先生(右)と

 藤岡教諭は「ホストファミリーには、自分の子供が1人増えたと思って、特別扱いせずに、いつも通りの生活をしてくださいとお願いしています」という。

 昨年度選抜されたのは、小林光さん、山崎豪士(たけし)君、鳴澤碧乃(あおの)さん(いずれも現在高1)の3人だ。

 小林さんは「後から来るみんなは、毎日行くところのスケジュールがきっちり決まっているのですが、私たち3人は、事前に何もスケジュールが決まっていなくて、学校の時間割も知らされていませんでした。着いた当日、学校で水泳の全校大会があってびっくりしました」と振り返る。

 山崎君も、「空港ではバディの出迎えもなく、お迎えの先生に急に学校に連れていかれて、図書館でやっとバディに会えた時にはホッとしました」と話す。鳴澤さんも到着翌日にバディが学校を休んでいたという。「困惑しましたが、自分で積極的にやるしかないと覚悟を決めて、クラスメートに話しかけ、何とか乗り切りました」

 生徒たちの話を聞きながら藤岡教諭は「失敗することが大事です」と、先発隊の狙いを話す。「これまでは失敗しないように親や周りの助けがあって生きてきたでしょう。しかし、大人になったら、一人で生きていかなければなりません。ですから、あえて過剰な情報は与えないで行ってもらうのです。失敗して、英語を学ばなくてはと感じれば、それでいいし、たくましくなれば、それでいいのです」

予想外の出来事を乗り越えてこそ、たくましく成長する

現地校のプログラムでは、バディの生徒と一日中一緒に授業を受ける
現地校のプログラムでは、バディの生徒と一日中一緒に授業を受ける

 小林さんのホストファミリーは70歳代の夫婦で、夫のロバートさんは子供たちが独立し、50歳になってから大学で学んだ人だという。「『君はお母さんに愛されているね。自分のためだけでなく、お母さんのためにも勉強を頑張りなさい』と真剣な表情で話してくれて、心に響きました」

 小林さんはロバートさんの言葉を胸に、高校では特に英語に力を入れている「クリエイティブ・リーダーズ・クラス」に入った。「明後日からはセブ島の英語研修に行ってきます。将来は英語を使う仕事に就きたいと考えています」と目を輝かせて話した。

 山崎君のホストファミリーは、敬虔(けいけん)なキリスト教信者だったという。「食事の前に聖書を読んだり、日曜日には教会に行ったり、最初は慣れないことだらけでした」。あるとき、お父さんのジェイムズさんに、「もっと自分の家族のことを知らなくてはいけないよ」と言われたのが胸に残ったという。「一家を見ているうちに、自分ももっと家族を大事にしようと思うようになりました」

 鳴澤さんのホストファミリーには、1歳から10歳まで4人の女の子がいた。初めて会ったとき、なぜか4歳のオリビアちゃんにだけ、「Don’t touch me(触らないで)」と拒絶されたのがショックだったという。それでも家のプールで遊んだり、映画を見たり、夜は星空を眺めたりするうちに打ち解けていった。「帰る時は悲しくて泣いてしまいました。するとお母さんのエイミーさんが優しくハグしてくれて、オリビアちゃんもハグしてくれて、すごくうれしかった」

 鳴澤さんは一家と今もメールで連絡を取っている。もっと英語を話せるようになろうと猛勉強し、成績も急上昇したそうだ。

オーストラリア研修に向けて意気込む中3生

ホストファミリーとの別れを惜しむ生徒(右)
ホストファミリーとの別れを惜しむ生徒(右)

 今年2月に出発する先発隊もすでに決まっている。中3生の高野祐輝君、山下怜愛(れあ)さん、高宮真悠(まゆ)さんの3人だ。先発隊に立候補した生徒は10人いたが、英語と日本語の作文、英語と日本語によるグループ面接を経て、この3人が選ばれた。

 高野君が先発隊に手を挙げたのは、電車で外国人に話しかけられたことがきっかけだったという。「話しかけてきたのはお年寄りの男性で、電車を降りるまで20分くらい英語で話したのですが、自分の英語でも通じるんだとうれしくなりました」。「今日は華道を初めて体験しました。僕は浅草寺(東京都台東区)の近くに住んでいるので、そうした日本の文化や街並みの雰囲気を外国人に伝えたいと思っています」と意気込んでいる。

 山下さんは「小学生の頃から留学に憧れていたので、楽しみです」と話す。洋楽好きの母親の影響で、小さい頃から英語に興味があった。目下、オーストラリア研修に向けて英語の勉強に励んでいる。「私は人に頼ってしまうところがあるので、今は洗濯の仕方を母に教えてもらったりして、オーストラリアで自分のことは自分でできるように努力しています」。将来は長期留学も経験して、英語を使う仕事に就きたいと考えている。

 高宮さんは「将来は青年海外協力隊を目指しているので、オーストラリアで英語力を付けたい」と具体的な将来目標を話す。小学生のとき、街の募金活動を見て、世界には恵まれない人々が多くいるのを知った。さらに中3の夏にセブ島の英語研修に行き、スラム街を見て、恵まれない人々を助けたい思いが強くなったという。「英語を少しでも上達させて、外国人の意見も聞いてみたいと思っています」

 藤岡教諭は、「彼らにとっては大冒険でしょう。中3でこんな体験ができれば、確実に成長します。そして、自分がいかに世界を知らなかったかということを知るのです」と話す。

 「帰ってきた生徒が、『海外に行って初めて日本を知った』と話したことがありました。まだ行っていない生徒たちは気付いていないでしょうが、海外に多く行った人ほど日本を知ろうという気持ちになります。異文化の中でこそ日本を知り、自分を知るのです」

 先発の3人だけでなく、後発の3年生たちも、現地で大きな刺激を受け、新たな発見をしてくることだろう。互いに経験を語り合い、高め合ってほしい。

 (文:小山美香 写真:中学受験サポート 一部写真提供:桜丘中学・高等学校)

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992225 0 桜丘中学・高等学校 2020/01/10 05:25:00 2020/01/10 05:25:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/01/20200109-OYT8I50021-T.jpg?type=thumbnail

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