民泊と農作業体験で人と人とのつながりを知る…芝高

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 芝中学校芝高等学校(東京都港区)は今夏、高校1年生を対象に、群馬県みなかみ町などで2泊3日の農作業体験を行った。自分たちの関心の高まりに応じて実現した農作業体験で、生徒たちは「食」のありがたさを知り、人と人とのつながりを学んだ。この校外学習の内容や体験した生徒の声を紹介する。

ディベート大会を機に高まった「農作業」への関心

校外学習を引率した福本興司教諭
校外学習を引率した福本興司教諭

 同校は中学、高校を通して、さまざまな場所でユニークな校外学習を行っている。中1生は、真鶴半島で磯の生物観察をしたり、千葉県富津市の寮で臨海学校に参加したりする。中2生と高1生もラフティングや富士登山、琵琶湖自転車一周など宿泊を伴う校外学習を、中学3年生と高校2年生は沖縄や京都などへ修学旅行を行っている。

 これらの校外学習の大きな特長は、学年で企画を立てて実行することにある。高校1年生担当の福本興司教諭によると、今年度の校外学習が、民泊と農業体験に決まった理由の一つは、生徒の間で「農作業」が関心の的になっていたことだという。

 「生徒たちが中学3年生で行ったディベート大会で、『今後、AIなどの人工知能に多くの職業が取って代わられると言われているが、農作業は自動化されるのか』をテーマに議論しました。これまで世界の大半の人々が、農作業によって自給自足の生活をしてきたにもかかわらず、生徒のほとんどが農作業を体験したことがない。仮に将来、農作業が自動化されてしまうとしたら、その前に自分たちが体験することは、いい機会ではないかと考えました」

つらい農作業で「食」のありがたさを実感

畑を耕す生徒たち
畑を耕す生徒たち

 今年の高1生の校外学習は8月30日から9月1日にかけ、群馬県みなかみ町の農家の協力を得て行われた。初日、正午近くに、みなかみ町に到着した約280人の生徒たちは、昼食と開村式のあと4~6人の班に分かれ、民泊先の家族と対面して各家庭へと移動した。

 兼業農家の家庭に泊った秦耀君は、庭の野菜畑の草むしりや畝を作る作業、種植えなどを体験した。「畝を作ったのは初めてですし、草むしりもほとんどしたことがありませんでした。生徒たちが少しずつ作っていた畝を、農家の方は3倍くらいの速さで作るのを見て、熟練の技に驚きました」

 秦君は農作業以外にも、面白い体験をさせてもらったという。「地元の名所である土合駅に連れて行ってもらったり、牛肥から取ったミミズをエサに釣りをしたりしました。受け入れ家庭のお父さん、お母さんが、いろいろと考えて計画を立ててくれました。東京とは全く違う環境で、車でしか移動できず、隣の家も遠い。でも、畑の上に大きな空が広がる風景が新鮮でした」と笑顔を見せた。

 現在は兼業農家だが、代々この地で農業を営んできた農家に泊まった生徒もいる。甘糟輝一郎君の泊まった家は古民家で、ヤギや鶏、犬などさまざまな動物を飼っていたという。「トウモロコシを収穫し、その茎を動物のエサや畑の肥料にし、野菜を育てる。教科書にあるような循環を、実際に見ることができて面白かったです。2泊3日という短い期間ですが、農作業はすごくつらくて、その作業をずっと積み重ねて、初めて僕たちに食べ物が届くことを実感でき、改めて食べることのありがたさを感じました」と感想を話した。

畑にネットを張る作業なども行った
畑にネットを張る作業なども行った

 「食」のありがたさを実感することは農業体験の大きな目的の一つだ。「本校は都心にあり、生徒たちは食べ物が食卓に上るまでの過程をほとんど知ることなく、幸せな生活を送っています。そこで、農作業の楽しさと大変さを知り、自分が作業を手伝った作物を食べることで、食のありがたさを再認識してほしい」と福本教諭は話す。

 生徒は農作業だけでなく、受け入れ家庭の家族との団らんなど、さまざまな社会体験をする。「生徒は普段、家族や学校の教員と接することが中心の生活です。校外学習では、日常とは異なる環境の中で、初めて会う人と生活を共にすることで、受け入れ家庭の方々が温かく接してくれることのありがたさを感じ、良好な関係を築く力を養ってほしいと思っています」

 広く校外学習について佐藤元紀教頭は、「生徒はいろいろな体験をして大人になっていくもの。そのため、できるだけ多様な体験ができる機会を増やしています」と話す。さらに、「生徒の生活は、家庭や学校など限られたグループの中だけで完結しがちです。そこで、自分が属するグループとは別の世界に触れ、人と面と向かって関わることで社会力を身に付け、世の中は人と人とのつながりでできているという原点を再認識してほしいと考えています」と語った。

事前インタビューで、受け入れ家庭との交流を深める

 今回の校外学習では、宿泊先の農家と交流を深めるために、生徒は受け入れ先の家族に事前インタビューを行っている。

 甘糟君は、「日々の苦労を癒やす息抜きの時間は、どうしていますか」と質問した。返ってきた答えは、「庭に座って、自分で作ったトウモロコシを食べてビールを飲み、たき火を眺めることが癒やし」というものだったという。「これを聞いて、都会に住む自分にとって自然から得られる癒やしは何かと考えたとき、皿洗いなどで水に触れることなども、自然に触れることで得られる癒やしではないか、そういった機会は都会にもあると気付きました」と話した。「おすすめの散歩スポットはどこですか」と質問をした秦君は、受け入れ先のお父さんに実際、連れて行ってもらったそうだ。

 3日間の体験を終えて生徒たちは、お世話になった受け入れ家庭の方々に向けて色紙を書いた。「感謝の気持ちを表す色紙の言葉を見て、他人を思いやり、気遣うという初めての生活を経験した生徒たちの成長を感じました」と、福本先生は感慨を込めて話した。

 夏の校外学習で得た生徒それぞれの体験は、早くも実りの気配を見せているようだ。

 (文:籔智子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:芝中学校芝高等学校)

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944873 0 芝中学校 芝高等学校 2019/12/12 05:22:00 2019/12/12 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/12/20191211-OYT8I50019-T.jpg?type=thumbnail

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