マニアックな知が開花する中学卒業論文…西武文理

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 西武学園文理中学・高等学校(埼玉県狭山市)は2月17日、中3生による「卒業論文代表者発表会」を開催した。同校の中3生は、自分の好きなテーマを1年間かけて探究し、2万字ほどの「卒業論文」を制作する。その中から選出された代表8人が「発表会」でユニークな研究成果を披露し、プレゼンテーションの腕前を競った。

自らの興味関心を1年がかりで調べる

「卒論論文」教育の狙いについて話す、谷史彦教諭
「卒論論文」教育の狙いについて話す、谷史彦教諭

 中3学年主任の谷史彦教諭は「卒論論文」教育の狙いについてこう語る。「卒業論文は、中学校が開設された1993年度から取り組んできました。自分の関心事を、調べ学習や実験、思考を通して一つの作品に仕上げる作業により、思考や論理構築、プレゼンの能力を育てるのが狙いです。特にこれからの時代、こうした力はますます大切になっていくと考えています」

 テーマは生徒が自分の興味関心に合わせて選ぶ。そのため、得意教科や趣味、時事トピックなど幅広い。これまでの作品は全て年度ごとに冊子にして学校の共用スペースに保存されており、後輩たちが閲覧することもできる。「自分の興味が出発点なので、多くの生徒が意欲的に、マニアックに取り組みます。この時の研究テーマを大学の推薦入試に活用する生徒もいます」と谷教諭は話す。

 卒論論文の作成指導は、中3を受け持つ8人の教諭全員があたり、1人で約15人の生徒を担当する。月曜7限の「特別活動」の時間を月1、2回、卒論に充て、題材選びやまとめ方の指導、グループ間の中間発表・討論などを行う。 

冊子にして保管されている「卒業論文集」
冊子にして保管されている「卒業論文集」

 「教員は内容には踏み込まず、人に伝わる文の書き方やプレゼンのノウハウを指導するのが基本です。進捗(しんちょく)が遅い生徒に対するアドバイスも適宜行います」

 卒論制作の下準備となる学習は入学時から始まっている。まず、中1から本を数多く読むことを奨励して知識を広げる。さらに読書感想文の作成やビブリオバトルを通して、内容の要約や伝達のトレーニングにしている。

 今年度の中3生は、入学時から1人1台iPadを所有しており、プレゼンテーション作成ソフト「Keynote」を使ってスライドショーが作れる。中1の夏休みには、「ミュージアムレポート」という課題をスライドショーで発表したという。

入念な準備とプレゼン手法の工夫が光る

代表者8人が競い合った「卒業論文代表者発表会」
代表者8人が競い合った「卒業論文代表者発表会」

 2月5~7日、中3の全4クラスで各生徒による卒論のプレゼンテーションが行われ、各クラス2人ずつ代表者が選出された。2月17日の「卒業論文代表者発表会」は、その8人によって競われた。

 月曜日の5・6限、「BSホール」に集まった中2、中3の全生徒と発表者の保護者ら約220人を前に、代表の生徒たちはそれぞれ8分間の発表を行い、その後2分ほど質疑応答を行った。

 「進化する3D」をテーマに発表した津川柚香さんは、3D映像作成の基本原理である「両眼視差」を説明した。目の前に人さし指をかざしてスライドを見るように聴衆に求め、左右の目による見え方のズレに気づかせるなど、工夫を凝らしたプレゼンテーションを行った。

 山崎友里愛さんは、自分の髪が天然パーマであることから「天然パーマがストレートになるには」をテーマに語った。髪をストレートにするというシャンプーを試して他製品と比較実験したり、同じ髪質の母親に協力してもらって湿度による髪の状態の変化を観察したりして、しっかりとしたデータに裏付けられた発表を行った。

 原田海里君は「ドローンがつくる未来のビジネス」をテーマに語った。原田君は実際にドローンを数台購入して性能を比較したり仕組みを研究したりしたうえ、ドローンを活用した社会問題解決ビジネスへと考えを進めたという。最初はドローン郵便を考えたが既に実験段階にあると知り、この日はスマホアプリと組み合わせたフードロス・貧困撲滅のための配達システムを提案した。

 上夏生さんは「宇佐山城の戦い~彼らはなぜ戦ったのか」というテーマで、織田信長の家臣で宇佐山城主の森可成(もりよしなり)が討ち死にした「宇佐山城の戦い」について、時代背景や城の特色、戦の経緯などを細かく紹介した。資料集めの段階で実際に宇佐山城址(じょうし)を訪れ、地形や城の構造などを確かめたといい、戦にかかわった森軍や織田軍、浅井朝倉軍、石山本願寺の動きを記号や矢印のアニメーションで見事に再現した。

 通傳冴佳さんは「人類は霊長か」をテーマに語った。人間と数種類の動物の意思疎通の形式・内容を比較考察していった結果、「必要に応じて発達させた能力によって生き延びてきた生物は、どれも『霊長』と言える」というユニークな結論を出した。通傳さんは、かたいテーマを扱う一方、キリンの画像を出して「ご存じの通り『ギラファーカメロパーダリス(学名)』ですね。ヒョウ柄のラクダという意味です」などととぼけた語りも交え、場を沸かせていた。

 その他のプレゼンテーションも、芝居っ気たっぷりのせりふ回しで要点を際立たせたり、アニメのキャラクターや名シーンの画像で状況説明を補ったりと、いずれも工夫を凝らし、熱の入った発表だった。

ともに卒論に取り組んだ仲間同士のリスペクト

審査の結果、表彰を受ける生徒たち
審査の結果、表彰を受ける生徒たち

 8人の発表が終わり、教員による審査の結果、最優秀賞には「人類は霊長か」の通傳さん、優秀賞には「進化する3D」の津川さん、「天然パーマがストレートになるには」の山崎さん、「宇佐山城の戦い」の上さんが選ばれた。優秀賞は例年2人だが、良い発表が多かったため特例で3人を選んだという。

 優秀賞に輝いた上さんは、小学校の図書館にあった歴史漫画で日本史の面白さを知ったそうだ。織田信長関連の小説やドラマを見るうち、「信長の背中を守って死んだ森可成のサムライ魂に引かれました」と話す。戦の経緯をたどるスライドアニメーションの作成には、まる1学期を費やしたという。「発表では8分にまとめるため、原稿用紙40枚の論文のどこを抜粋するか、とても悩みました」

 また、資料集めを通して参考文献の管理の仕方も学んだという。「大学の研究や卒論の練習にもなりました」と上さんは話す。卒論制作を通してさらに探究心をかき立てられたといい、「高校生になったら、岡山県の図書館にある史料『森家先代実録』を見に行きたい」と今から楽しみにしている様子だった。

 2時間の発表会を終え、「到達レベルに違いはあれ、それぞれの形を残せたと思います」と谷教諭は感慨深げに話した。「発表者の話を真摯(しんし)に聞く生徒たちの姿勢も良かった。卒論の授業などで練習できていたのでしょうが、1年間、ともに卒論に取り組んだ仲間同士のリスペクトもあったと思います」

 来年度以降の卒論についても「1年次から3年間かけて一つのテーマを探究する構想もあります。また、グローバルコースの生徒については英語による発表も良いのではないでしょうか」と谷教諭は意欲を見せる。「生徒たちが自らの個性を足がかりに、世界を広げていける方法を今後も考えたい」

 (文・写真:上田大朗 一部写真提供:西武学園文理中学・高等学校)

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