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【特集】「真正な学び」が磨くコミュニケーション力…実践学園

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 実践学園中学・高等学校(東京都中野区)は、ICT関連など様々なワークショップへの参加を通した独自のコミュニケーション教育を実施している。この教育の柱となるのが青山学院大の苅宿俊文教授の協力を得て実践している「ALEプログラム」だ。生徒たちはプログラムの体験を通して互いの特性を知り、コミュニケーションの術を学ぶという。中学1、2年合同で行われたワークショップの模様を紹介する。

学びで養う三つの力

社会科・コミュニケーションデザイン科の森圭司教諭
社会科・コミュニケーションデザイン科の森圭司教諭

 実践学園は、中高一貫教育をスタートした2009年度に「コミュニケーションデザイン教育科」を創設した。社会科・コミュニケーションデザイン科の森圭司教諭によると、同科の目標は「自ら発信する力」「仲間と共感する力」「コミュニケーションの場をつくる力」の三つの力を身につけることだという。コミュニケーション力を高めるため、座学だけでなく「参加する」ことに重点を置き、体験授業など独自の活動を進めてきた。

 さらに2020年の大学入試改革をにらみ、同科創設に際して協力を得た青山学院大学社会情報学部の苅宿俊文教授研究室とともに、2015年度から取り組みを進めているのがALE(Authentic Learning Environments 真正な学びの環境)プログラムだ。アクティブラーニングの考えを取り入れ、芸術表現体験活動としての「ワークショップ」と省察活動としての「振り返り」を組み合わせた内容となっている。

 ALEプログラムは中1、中2の合同授業で実施されており、1学期は3回のワークショップとそれぞれの「振り返り」を実施した。3年生になると夏のニュージーランド研修に向け、食べ物や文化の違いなどをテーマにグループごとのワークショップを行うという。

ワークショップで協働性や発想力を養う

グループでアイデアを出し合い、制作を進めていく
グループでアイデアを出し合い、制作を進めていく

 1学期のワークショップのテーマは、ICTを活用し、遊びながらコンピューターやプログラミングの仕組みなどを学ぶこと。タブレット上で手書きした絵を使い、直感的にゲームなどをプログラミングできる「ビスケット」というソフトを使う。苅宿研究室の長島奈緒美特別研究員と、「ビスケット」を開発した合同会社「デジタルポケット」の原田康徳博士やスタッフが生徒たちの指導にあたった。

 1回目のワークショップではまず、「ビスケット」の基本的な使い方を学んだ。2回目は倉庫の中の荷物をゴール地点まで運ぶ「倉庫番」というゲームで遊び、その後「ビスケット」で各自オリジナルの「倉庫番」作成にチャレンジした。6月16日に実施された3回目のワークショップでは、これまでに使い方を学んだ「ビスケット」で、まったくオリジナルのゲームを制作した。

 1年1組と2年1組の生徒が体育館のサブアリーナに集まり、学年・男女混合で5、6人ずつ、12のグループに分かれた。まず、今回初めてグループを組む仲間と5分間、自己紹介などをして互いの緊張をほぐした。これはアイスブレイクといい、基本的なコミュニケーションの技術だ。

 場の緊張がほぐれたところで、「デジタルポケット」の原田博士から授業の課題についての説明があった。「グループで一つのタイトルを考え、共通のキャラクターを作ってください。それからステージを作ります。明確なゴールがあることと、長すぎないことがポイントです」

 説明が終わると生徒たちは早速、制作に入った。「デジタルポケット」が用意したタブレットを1人1台使い、タッチパネルで思い思いに、ゲームのキャラクターやアイテムの絵を描いていく。最初は、あまりアイデアが出なかったグループも、原田博士らのアドバイスを受けて作業を進めるうちに、活発に意見が出るようになり、制作に集中していった。

 1時間ほどすると、それぞれのグループのゲームが完成した。あるグループが作ったのは、トレーニングして痩せるというゲーム。キャラクターを操作して階段のようになっている道を一歩進むごとに少しずつ体重が減っていき、ゴールまで行くとクリアというもの。また、画面下部に描いた発射台をタッチして、泳いでいる魚などを狙い撃つシューティングゲームや、迷路を抜けてゴールへ向かうゲームなどアイデアも様々だ。どのゲームもルール自体は単純なものだが、アート作品のようにカラフルな仕上がりだ。この後、出来上がったばかりのゲームを使って、みんなで遊び、感想を書き、面白かったものに投票した。人気が高かったのは、シューティング系のゲームと迷路を抜けてゴールへ向かうゲームだった。

「美術が苦手な子も、タブレットを使うと絵を描くことに抵抗がないようですね。プログラミングという作業を通して、論理的に考える力ばかりでなく発想力や表現力が身についていくことも、このプログラムのメリットの一つです」と森教諭は語った。

自分の特性を知る「振り返り」

ゲームのキャラクターやアイテムの絵を描く
ゲームのキャラクターやアイテムの絵を描く

 ワークショップの後は毎回、「振り返り」を行う。今回は主に、アプリケーションはうまく使えたか、プログラミングの仕組みを理解して自分なりに活用できたか、などを省察し、体験の定着を図った。 

 「このほか、グループの雰囲気や自分の役割についても振り返ります。例えば、自分は意見をよく言えたとか、自分は人の話に耳を傾けられたかなど。振り返りの中で、自分はどんな特性を持っているのかということを自覚していきます」と森教諭は話す。

 実際にワークショップを終えた中2の生徒に話を聞いてみると「みんなで話し合って一つのゲームを作れたことが楽しかった」「挨拶などコミュニケーションの大切さを学びました」「1年生と一緒にいい雰囲気を作ることができた」など感想は様々だ。中でも「普段はクラスであまり話さない方だけど、今回はいろんな意見が言えて自分でも驚きました」という声が印象的だった。生徒たちは、自分の特性を知ることを通して、自分流のコミュニケーション術を模索しているようだ。

違いを受け入れ高め合うことで強く

 ちなみに、森教諭が顧問を務める男子バスケットボール部は、2015、16年度に、全国中学校バスケットボール大会で2年連続優勝を果たした。バスケット部の指導にもコミュニケーションデザイン教育が生かされているのだろうか。

 「バスケットでは、明確なゴールイメージをチーム全員でシェアできていることが大切です。そのためには普段のコミュニケーションや成功体験が欠かせません。コミュニケーションデザイン教育は、お互いの特性を理解するために役立っていると思います。例えば、A君は駆け引きがうまく、B君はパワーがあり、C君はスピードがあるとみんなが理解していれば、それぞれの特性を生かしてプレーできますよね。お互いの特性を理解し、違いを受け入れ、高め合うことが強さの鍵だと考えています」

 2学期からは、動画の撮影や編集をテーマにしたワークショップを予定している。仲間と協力して学ぶ体験を通して、生徒たちは協働性や創造性、論理的思考力、提案力など、コミュニケーションに欠かせない様々な力を身につけていくことだろう。

 (文・写真:石井りえ、一部写真:実践学園中学・高等学校提供)

 実践学園中学・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1900599 0 実践学園中学・高等学校 2021/02/12 16:00:00 2021/03/10 16:51:52 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/02/20210212-OYT8I50008-T.jpg?type=thumbnail

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