生徒の自主的サポートで軌道に乗るオンライン授業…広尾学園

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 広尾学園中学校・高等学校(東京都港区)は4月15日から、全コース全学年でオンライン授業を開始した。朝礼に始まり、1~6時間目の授業、終礼まで、通常の時間割通り行うほか、部活や面談、学年集会もオンラインで行っている。順調なオンライン化を可能にしているのは、ICT(情報通信技術)リテラシーにたけた生徒たちの自主的なサポートだという。オンライン授業のサポートサイトを立ち上げた生徒たちと、それを見守る教諭らに話を聞いた。

生徒に頼り、教えてもらうからこそ成功できた

 同校は他校に先駆け、2005年からインターナショナルコースで1人1台のパソコンを導入した。11年には医進・サイエンスコース、翌12年には本科コースでも導入し、いち早く全校的なICT化を実現している。

 金子暁副校長は「本校のオンライン授業が順調に進んだ背景には、得意な生徒たちの力に頼る、むしろ教えてもらう、という先生側の姿勢がありました。先生が完璧にICTを使えるようになって生徒に教える、という思い込みがありますが、それではうまくいかないんです」と話す。

 今年3月7日、同校は、新型コロナウイルス対策のため参加者が卒業生と教職員だけとなった卒業式を保護者ら向けにオンラインで配信した。これを手始めとしてオンライン化の取り組みに弾みがつき、同月下旬には「医進・サイエンスコース研究成果報告会」もオンラインで発表された。

 このときオンライン発表会のサポートサイトを作ったのが小山大樹君(当時中2)たちだ。「僕も1年間の研究成果を発表する側だったので、多くの人がスムーズに見られるようにと参加方法を案内するサイトを作ったのです」。この活躍には「本来は教員が作るべきところでしたが、教員が考えるより先に、小山君たちが作ってくれていたのです」と金子副校長も目を丸くする。

オンライン授業に向けて生徒がサポートサイト立ち上げ

小山君とサルキシャン君が中心になって製作したオンライン授業のサポートサイト
小山君とサルキシャン君が中心になって製作したオンライン授業のサポートサイト

 同校でオンライン授業が始まると聞いた3月31日、小山君たちはすぐに一緒にサポートサイトを作った仲間に声をかけ、オンライン授業をサポートするサイトを立ち上げることにしたという。ICT委員だったマイク・サルキシャン君(高3)らも加わり、計6人のスタッフ(中学生2人、高校生4人)で製作が始まり、オンライン授業開始3日前の4月12日にはサポートサイト「オンライン授業案内ページ」が完成した。

 サポートサイトでは、どういう手順で入力すればオンライン授業に参加できるかを分かりやすく動画で解説してある。「何より重視したのが、新入生のサポートです。新入生はまだ一度も登校していなくて、クラスの顔合わせもできていない状況です。パソコン操作に戸惑ってしまうと、オンライン授業も受けられなくなってしまいますから」と小山君は話す。

 サポートサイト内には、新入生向け、在校生向け、先生向けに分けられた三つの質問フォームがある。「先生の質問フォーム作りが一番苦心しました。ICTが得意な先生が多いですが、苦手な先生もいます。少しでも助けになればと思いながら、言葉遣いには気を使いました」と、小山君は苦笑する。実際、生徒からの質問だけでなく、先生からも「画質を良くするにはどうしたらいいか」「授業を録画するにはどうしたらいいか」など質問が寄せられたという。

 同校のICT担当である榎本裕介教諭も、「教員にはオンライン授業の研修をしましたが、生徒にはほとんど説明していません。本校のICTをけん引していくのは生徒たちです」と彼らに全幅の信頼を寄せる。同校は6年前からICT委員を各クラス2人置いている。「生徒のパソコントラブルを担任が正確に把握するのは難しく、ICT委員が対応して解決してくれることがほとんどです。彼らはものすごいスピードで成長していて、先生から教わるのではなく、自分からアグレッシブに学んでいます」

 実際、小山君は中学に入ってから独学で、タイピング練習から始めてプログラミングまで勉強したという。サルキシャン君もコーディングクラブ(インターナショナルコースのパソコン部)でプログラミングを学んできたそうだ。

授業中のチャットで生徒の声が拾いやすくなる

自宅からオンライン授業をする榎本教諭(画面下)
自宅からオンライン授業をする榎本教諭(画面下)

 生徒たちのサポート体制もあって、オンライン授業は順調に運営されている。取材に訪れた5月28日、榎本教諭が担当する中1の理科の授業を実際に見せてもらった。中間テスト前とあって、生徒たちはお互いに試験範囲内で作問し、解答し合って学んでいた。

 榎本教諭 「じゃあ、答え合わせするよ。論述問題で、正解にしていいか分からないところは、チャットでどんどん質問を書いてください」

 「先生、これ、20点満点中10点なんですけど、どこが足りないですか」

 「先生、20点満点なのに25点って採点されてきちゃいました」

 パソコン画面には榎本教諭の説明する画面が共有され、発言する生徒の顔が入れ替わり映る。さらに右下にはチャットが吹き出しで次々と表示される。「ほぼ全部記述、つらすぎるううう」「先生がチャットに書いてくれたさっきのリンクに飛んだんですけど、そこからまたグルグルしてます」「むっず」など。双方向オンライン授業ならではのライブ感だ。

ライブ配信による体育のオンライン授業
ライブ配信による体育のオンライン授業

 オンライン授業を始めてから分かったさまざまな発見があるという。榎本教諭は「オンライン授業になって、以前より生徒の様子が分かりやすくなりました」と話す。「静かに座っているだけでは、生徒が理解しているかどうか把握できません。一方、オンライン授業ではチャットでどんどん生徒が意見や感想を書いてくるので、把握しやすく、生徒の意見を拾いやすい」。また、「教員も生徒も画面に集中するので、単元の進度は例年より速くなっています」。このほか、中1の生徒とは一度もじかに会えていないが、「生徒の顔と名前が一緒に画面表示されるので、例年より早く覚えられました」とも言う。

 生徒にも「通学時間がなくなっていい」「職員室に先生を探しにいく手間が省ける」「オンラインになって課題の提出忘れがなくなった」と好評だ。「通常授業に戻っても週に1日くらいはオンラインにしてほしい」と希望する生徒もいるという。

学校生活を通して育まれた貢献する気持ち

 生徒たちは今回、どういう気持ちでオンライン授業のサポートを買って出たのだろう。小山君とサルキシャン君に尋ねると、2人は自分を変えてきた学校生活の思い出について語った。

 サルキシャン君は、中2から高2まで、音楽祭でクラス合唱のピアノ伴奏を担当してきたという。「音楽祭の練習を通して、自分の能力を最大限に生かして、みんなのモチベーションを上げることが自分の役割だと思うようになりました。自分のできることをみんなのために最大限に生かす、そうやってきて、今の自分があります」

 「入学した頃の僕は、おとなしくて目立たない方でした」と言う小山君は、中1のとき、歌とダンスのワークショップ「ヤングアメリカンズ」を体験したことが大きく自分を変えたという。「その体験のおかげで、もっと自分を表に出してもいいんだ、出しゃばってもいいんだ、と思えるようになったのです」

 2人は、学校生活そのものの中で、自分の主体性を見つけ、周囲との協働を学んできたということなのだろう。だから、学校が危機の時には、自主的に磨きをかけてきたICTリテラシーでみんなのために貢献する気持ちが生まれる。生徒たちの母校愛も、今回の試練が証明したものの一つではないだろうか。

 (文・写真:小山美香)

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1278480 0 広尾学園中学校・高等学校 2020/06/17 05:21:00 2020/06/17 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/06/20200615-OYT8I50052-T.jpg?type=thumbnail

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