自分のカラを破れ、2年目迎えた「A知探Qの夏」…多摩大聖ヶ丘

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 多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校(東京都多摩市)は7月18~31日の2週間、体験型のサマーセミナー「A知探Qの夏」を開催した。昨年スタートしたこのセミナーは、「普段の授業ではできないこと」を生徒に経験させようと先生たちが手作りした講座の数々で作られている。昨年の経験や気付きを振り返って、さらに厚みを増した今年の講座を紹介しよう。

教員が専門性を生かして講座を手作りする

「A知探Qの夏」について説明する吉岡和真教諭
「A知探Qの夏」について説明する吉岡和真教諭

 「A知探Qの夏」は「学び」を楽しむことを目的に、アクティビティーや文化体験、フィールドワークなどを取り入れたサマーセミナーで、「普段の授業ではできないことを、生徒に経験してほしい」という思いから昨年スタートした。

 セミナーの内容は全教員が各自の専門性を生かして計画した講座で、生徒も教員も楽しめる内容となっている。教科を横断して構成される講座や、外部から講師を招いて行われる講座もあり、今年は34種類の講座が用意された。

 1講座は4日間を1セットとし、生徒は期間中に6講座まで選択して受講することができる。それぞれの講座で初めの3日間は学習、4日目はリポートなどの「まとめ」を行う。その成果は、9月に行われる文化祭「聖祭」で発表する。また、講座の選択は学年を問わないため、中高校生が一緒に学べることも大きな特徴だ。

 入試広報部長の吉岡和真教諭によると、昨年の講座で、自ら調べて学習を進める楽しさに気付いた生徒は多かったという。さらに、あまり自分を表現することのなかった生徒が、自ら選んだ講座で活躍するなど、普段の授業では見られない生徒の意外な一面を発見できたそうだ。

 なかには「国際貢献」をテーマにした講座を通して、カメラマンの仕事を志望するようになった生徒もいるという。この講座のプログラムでカンボジアを訪問した際、現地で出会った子供たちの笑顔を世界に伝えたいという思いを抱いたそうだ。吉岡教諭は、「私たちの想像以上に、セミナーが生徒の将来を考えるきっかけになってうれしいですね。昨年は1年目だったこともあり、まだまだ教員もカラに閉じこもっている印象でしたが、今年は生徒も私たち教員も、よりいっそう楽しめる講座を目指しました」と話す。

模擬裁判を通して法律や言葉の難しさを学ぶ

生徒も教員も参加して開かれた模擬裁判
生徒も教員も参加して開かれた模擬裁判

 2年目を迎えた今年の講座から、国語・社会科の講座「逆転裁判~その発言、ちょっと待った!~」の様子を紹介しよう。

 この講座は、第一東京弁護士会の法教育委員会から弁護士の櫻井陽さん、関根久美子さんを講師に招き、模擬裁判を通じて、法的な考え方を身に付けるのが狙いだ。第一東京弁護士会では、弁護士の公益活動の一環として、派遣希望があった小中高校へ、弁護士を派遣し、模擬裁判などの出張授業を行っているという。この講座の企画を1年以上温めていたという国語科の佐野彩雪教諭は、「ここ数年、生徒たちの語彙(ごい)力が落ちていると感じ、言葉や言い回し一つで、物事の解釈が変わることを、模擬裁判という貴重な経験を通して学んでもらいたいと考えました」と語る。

 東京・渋谷の飲食店で起きた架空の放火事件を題材とした模擬裁判で、受講生7人と担当教員2人が、裁判長、裁判官、検察官、弁護人、被告人、証人の役を務める。第一東京弁護士会の法教育委員会が用意したシナリオに沿って審理を進めるが、判決について正解は用意されていない。

 裁判官役の生徒3人は、櫻井弁護士と共に別室に移動して判決について議論し、そのほかの生徒も、教室で自分の判決を考えた。裁判官役の生徒たちは、「被疑者は放火の下見をした可能性がある」「目撃者は気が動転しており、犯人を見間違えたかもしれない」などさまざまな角度から検討し、悩みに悩んだ末、目撃者の証言の曖昧さなどを理由として「無罪」と判決を下した。

 生徒の判決について、櫻井弁護士は「裁判官役の3人は、今まで生きてきた中で得た経験や知識を基に判決を考えていました。この『経験則から判決を考える』という、本物の裁判官も行う考え方を実践していて、とてもよかった」と評価した。

 一方、関根弁護士は、「さまざまな要素を踏まえつつ、自分の考えを筋道立てていく作業は、今後生きていくうえで重要なものです。バランス感覚を持った思考を、これからも身に付けていただけたらと思います」と話した。

 模擬裁判で裁判長を担当した高校1年生の男子生徒は、「小学生の頃から法律や裁判に興味があり、法律についてはある程度知っているつもりでした。でも、実際に裁判をしてみると、法律だけではなく、一般論や常識から判断すべきこともあり、難しいと感じました。これからは常識を身に付けながら、法律家を目指していこうと思います」と感想を話した。

絵コンテに合わせて、アニメのセリフに挑戦

「アニメで国語」講座で、講師を務めた音響監督の伊藤巧さん(奥)
「アニメで国語」講座で、講師を務めた音響監督の伊藤巧さん(奥)

 「アニメで国語」という講座も興味深かった。受講生は25人で、1、2日目はオリジナルのシナリオと絵コンテを制作する。3日目は、音響監督の伊藤巧さんを講師に招き、アニメの声優のようにセリフを話す体験をした。

 まず、伊藤さんから音響制作や音響監督の仕事について説明があった。知っている声優の名前が挙がると、生徒たちから感嘆の声が漏れる。次に、シナリオと絵コンテに沿ってのセリフ朗読だ。最初は何も考えず、ただセリフを読み上げることから始まり、徐々に登場人物の気持ちや距離感を意識して話すことに挑戦していく。生徒たちは初め戸惑っていたが、講座の後半には、遠くにいる人に呼びかけるためセリフの語尾を伸ばすなど、生き生きとした表現が飛び出した。

 伊藤さんは、「声優でなくても、実社会では、はっきりと話すことが求められます。会社の面接、上司との会話、大切な人に思いを伝える時など、まっすぐ前を向き、自分の思いをしっかり伝えることが重要です。必要なときに、自分の気持ちを、自分の言葉で表現できる。そんな魅力的な人になれることを祈っています。すてきな人生を歩んでください」と授業を締めくくった。

講座の目的について話す出岡由宇教諭
講座の目的について話す出岡由宇教諭

 同校の教育企画部長である出岡由宇教諭は、この講座について「生徒も自分も一緒に楽しめることは何かと考えたとき、アニメが思い浮かびました。アニメを通じて、たくさんの大人から『働く』ということに関するメッセージを伝えてもらい、生徒はバリバリと仕事をする大人たちの話から、社会の厳しさを知る。そこに十二分の価値があります」と話す。「大人が前向きな気持ちで仕事をしていることを知り、生徒も前向きなモチベーションを持ってくれること、そこに付随して、読む力や想像力、表現力が養われればいいと思います」

 この講座を受けた中学3年生の女子生徒は、「アニメを作ることは簡単ではないと改めて実感し、その仕事をしている人たちはすごいと思いました」と素直な感動を口にしていた。

 吉岡教諭は「A知探Qの夏」のさらなる展開を考えている。「現在は夏休みだけの講座ですが、今後は新学習指導要領に盛り込まれる『総合的な探究の時間』と結び付けていくことが課題です」

 体験型のセミナーと通常の授業を融合させることで、生徒たちの多様な「学び」はよりいっそう広がっていくことだろう。

 (文:籔智子 写真:中学受験サポート)

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906809 0 多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校 2019/11/22 05:21:00 2019/11/22 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191119-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

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