【特集】改革へとかじ切って「学びの感動を与える」学校に…多摩大聖ヶ丘

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 多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校(東京都多摩市)は来年度以降、新入試の導入や修学旅行の見直しなど、さまざまな改革に着手する。コロナ禍をきっかけとして、本来の学校のあり方を見つめ直した結論だという。導入から3年目を迎えた独自の体験型サマーセミナー「A知探Qの夏」もさらにブラッシュアップする予定だ。これらの改革の構想や目的について石飛一吉(いしとびかずよし)校長に聞いた。

日本語のリスニングテストを導入する

「学校の役割は、いかに学びの感動を与えるか」だと話す石飛校長
「学校の役割は、いかに学びの感動を与えるか」だと話す石飛校長

 「今回のコロナ禍で、私たち教員は『学校って、何だろう』と改めて考え、学校の役割は『生徒たちに、いかに学びの感動を与えるか』であるという結論に行き着きました」。石飛校長は、自らの思索をこう振り返る。

 「そのためには、まず教員が学びの楽しさを体験し、新しいことに立ち向かう姿を生徒に見せると同時に、生徒と共に考え、学びと格闘することが大切です。そして、1人の生徒の感動が別の生徒に伝播(でんぱ)し、さらに広がっていく。これが本校の目指す『協働性』の一つであり、学校が成り立つ意味ではないかと思います。その意味で『大人が輝けば、子供も輝く』と思うのです」

 石飛校長はあらためて学校のあり方を問い直す中で、より進化した学校作りのために、来年度以降に実施するいくつかの改革に着手した。

 まず、2021年度から新しい入試方式を導入する。従来の2教科・4教科入試と「適性型入試」に加え、日本語の「リスニングテスト」を取り入れる。3分半~5分程度の日本語を聞いて設問に答え、最後に自分の意見をまとめるという試験だ。

 その目的について石飛校長は、「多くの学校が、グローバル社会で活躍し、多様性を尊重できる人間の育成を課題に据えていますが、そのためにはまず、日本語の理解力、読解力、表現力、そして論理力や健全な批判的精神が必要だと考えています。そこで、人の話をしっかりと聞き、論理的に解釈する力を評価するために、日本語のリスニングテストを導入します」と話す。

 この入試改革には、収束の見通しが立たないコロナ禍の中での入試に挑む受験生への配慮もあるという。学習塾に通うことができなくても、それまでに培った日本語力で受験できる機会を作りたいという意図だ。「いずれの試験を経て入学しても、私たちが目指しているのは論理力や表現力、健全な批判的精神などの育成です。それが『学びに向かう力』につながると思っています」

修学旅行先の先島諸島でフィールドワーク

 高校の修学旅行についても見直しを進めている。現在、高校2年次に行っている修学旅行は、生徒が国内の3エリアから行き先を選択する「多方面修学旅行」となっている。これを来年度からは全員が沖縄の先島(さきしま)諸島を訪れる形に変更する。

 「本校は多摩丘陵の端にあって海から離れているため、実際に海で泳いだことがない生徒もいます。海の近くに住む人と、山や畑の近くに住む人たちとは考え方が違うでしょうし、先島諸島には現地ならではの生活の楽しさや苦しさがある。便利な都市に住む生徒たちに、先島諸島の暮らしを実際に味わってもらいたいと考えています」

 生徒たちには一人一人、自由な発想でテーマを決め、現地でフィールドワークを行ってもらうという。フィールドワークを通じて現地の人と交流し、言葉や文化の違いを肌で感じることも目的の一つだ。石飛校長は、「世界の多様性を認めるには、まず日本の中にある多様性に気付くことが重要」と話す。

 行き先に先島諸島を選んだのは、石飛校長だという。その背景には、石飛校長自身の経験がある。「本土復帰直後の先島を訪れ、畑にいたおばあちゃんと話したとき、『パイナップル』以外の単語が一切聞き取れず、『ここは日本なのか』と異国を訪れたようなショックを受けました。実際に沖縄に行ってみると、その土地の文化の中で生まれた言葉がある。その言葉から生まれた物語や音楽がある。生徒は教科書のうえで、それらを知っているかもれしれませんが、実際に現地の人たちと話し、体験して感性を磨いてほしいと考えています」

 さらに、この修学旅行は、同校が掲げる三つの教育方針「少人数できめの細かい指導」「本物から本質に迫る教育」「主体性と協働性の育成」を実現する場でもあるという。

 「海の文化に触れ、ローカルな言葉と文化に触れ、本土にはない豊かな自然の多様性に触れる。そうした体験から新たな発見が得られまず。海洋プラスチックごみの問題や、今年7月に始まったレジ袋有料化の意義も、生徒は身近に感じることでしょう。これこそ本校の目指す『本物から本質に迫る教育』です。そして、生徒が自らテーマを決めて行うフィールドワークを、『主体性と協働性の育成』に結び付け、SDGs(持続可能な開発目標)について考えを深めてほしいと思っています」

「A知探Qの夏」もブラッシュアップ

昨年の「A知探Qの夏」では手作り電池に挑戦した
昨年の「A知探Qの夏」では手作り電池に挑戦した

 今年で3年目を迎えた体験型のサマーセミナー「A知探Qの夏」も、ブラッシュアップが図られる。このプログラムは例年7月下旬に実施されていて、中1生から高2生までを対象に、学年を問わない選択制の講座だ。全教員が各自の専門性や興味を生かして作り上げた内容となっている。1学年約120人という小さな学校だからこそ実現できる「少人数できめの細かい指導」だ。

 今年度はコロナ禍の影響で、「A知探Qの夏」は中止となったが、2022年頃までに、内容をいっそう洗練して通常の授業に組み込み、探究学習と結び付ける計画だ。また、付属校のメリットを生かし、多摩大学と情報を共有して新しい学びを開発していくことや、教員たち自身が、多摩大学の教授に大学でのゼミの進め方を学んで研さんすることなどを検討しているという。

昨年の文化祭での「A知探Qの夏」の展示
昨年の文化祭での「A知探Qの夏」の展示

 石飛校長は、「現代は『正解のない時代』と呼ばれていますが、生徒たちはあらゆる面で答えを求め、それを暗記しようとします。しかし、それでは私たちの求めている教育にならない。答えのない問題にどう立ち向かっていくか、『A知探Qの夏』を通して考えてほしい」と語る。

 こうしたさまざまな体験学習を充実させる目的について石飛校長は、「多様性のある社会を生きるには、自分の中の多様性にどれだけ気が付けるかが重要だからです」と語る。「家族の中の自分、勉強に向かう時の自分、部活動での自分、趣味を楽しむ自分といった多様な自分を認めることができたとき、他人の多様性も認められるようになります。そのうえで、時代や社会に沿いつつ、しなやかに変化し、適応できる人間を育てたい」

 「私もいろいろなことにチャレンジして、自分の可能性を試し、試行錯誤しながら教員にたどり着きました。生徒たちもさまざまな体験をし、変化し続けながら、将来幸せになるための方法をつかんでほしいですね」

 (文:籔智子 写真:中学受験サポート)

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1633198 0 多摩大学附属聖ヶ丘中学高等学校 2020/11/20 05:01:00 2020/11/20 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/11/20201117-OYT8I50024-T.jpg?type=thumbnail

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