英語で美術を学ぶ「Art English」…女子美付

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 女子美術大学付属高等学校・中学校(東京都杉並区)は今年度から、美術に関わる表現を英語で学ぶ教科横断型の「Art English」の授業を始めた。美術の分野で世界的に活躍し、情報を発信できる人材の育成が狙いだ。中1の授業の様子を紹介するとともに、この授業を担当する英語科の三浦淳教諭に授業の狙いなどを聞いた。

グローバルに活躍するために必要な英語力を身に付ける

「Art Englishの授業では生徒の目の輝きが違う」と話す三浦淳教諭
「Art Englishの授業では生徒の目の輝きが違う」と話す三浦淳教諭

 「『Art English』の授業では生徒の目の輝きが違います。本校の生徒にとって関心が深いアートを題材にしているため、『次は何をやるんだろう』と楽しみにしている様子が手に取るように分かります」。三浦教諭は、この授業に対する生徒の反応をこのように話す。

 三浦教諭によると、同校は美術を指導するにあたって、広く世界に目を向けることを重視しており、以前から語学研修旅行や特別語学講座など、国際理解を深めるプログラムを充実させてきた。グローバル化の時代にいっそう対応し、「女子美らしい英語教育」とは何かを考えた結果、美術をテーマにした英語教育という教科横断型の授業を作ることにしたという。

 「Art English」は今年度、中1と高1で実施し、3年後には全学年で展開する予定だ。中学では、自分の作品を英語でプレゼンテーションすることを目指し、美術用語や作品を鑑賞する際に必要な英語表現を学ぶ。また、高校ではさらに専門性を高め、作品解説を英語で作成することや、対話型鑑賞をして作品理解を深めるといった課題に取り組み、最終的には卒業制作を英語でプレゼンテーションすることを目標としている。

授業の導入は文法の復習を兼ねたアクティビティー

授業は問いと答えのカードを使ったアクティビティーからスタート
授業は問いと答えのカードを使ったアクティビティーからスタート

 取材に訪れた6月19日、中1の教室では「Art English」のアクティビティーが始まっていた。教室前方にある机に、問いのカードと答えのカードが置かれていて、生徒はめいめい好きなカードを取って、問いと答えが一致する相手を探す。このアクティビティーを最初に行うのは、授業への積極的な参加を促すためだ。

 「私のカードは『Are you Gauguin?(あなたはゴーギャンですか)』だった」

 「私のカードは『No,I’m not.I am Cezanne(いいえ、私はセザンヌです)』だよ」

 「じゃあ、これで合っているね」

 生徒たちは、にぎやかに話し合いながら相手を見つけると、先生のところへ行って、英文を読み、和訳をしてOKをもらう。三浦教諭とネイティブのモーガン・シゲス教諭に「Great!(いいね)」と褒められると、生徒から笑みがこぼれた。

カードを和訳してOKをもらうため先生たちの近くに集まる生徒たち
カードを和訳してOKをもらうため先生たちの近くに集まる生徒たち

 この授業は、日本人とネイティブの2人の英語科教員が担当する。授業は原則的に英語で行われるが、授業の進行などは日本語で補足する。

 「気付いたかな。今日のQ&Aは、『Do you~?』という疑問文に対しては『Yes,I do』あるいは『No,I don’t』で答え、『Are you~?』という疑問文ならば『Yes,I am』か『No,I am not』で答えるという文法の復習になっていました」

 同校の英語は、教科書を中心に学ぶ英語B(ベーシック)が週3時間、会話中心の英語C(コミュニケーション)が週1時間、そして英語A「Art English」が週1時間で構成されている。この授業は、英語Bで学んだ事項のおさらいにもなっている。

モネの紹介を題材に、英語を聞き、答え、書くレッスン

 アクティビティーに続き、先生たちは、豊かなあごひげを蓄えた人物の写真を見せて「Who is he?(彼は誰かな)」と生徒たちに問いかけた。「板垣退助?」「フライドチキンのおじさん」など思い思いの答えの声が上がる。先生から「He is French(彼はフランス人です)」というヒントが与えられると、生徒たちは「フランス人」「分かった、モネだ」と気付いた。先生たちは「Good!」と声をかけながら、黒板に「Monet」と名前を書いた。

 モーガン教諭が英語でモネとその作品について説明を始めた。作品「印象・日の出(Impression・sunrise)」を見せながら、クロード・モネはフランス人の画家で、自然光を強く意識していたことや浮世絵の影響を受けたことなどを話していく。生徒たちは耳を澄ませて聞き入っている。

 「sunriseは日の出、その前の単語は何だったかな」

 「Impression」

 「そう、つまりこの作品のタイトルは『印象・日の出』です。モネが所属するグループがImpressionist、印象派と呼ばれるようになったのは、このタイトルが始まりです」

英語によるクロード・モネの作品の説明
英語によるクロード・モネの作品の説明

 次に、モネが自分の妻に日本の着物を着せて描いた「La Japonaise(ラ・ジャポネーズ)」と「睡蓮(すいれん)」を見せて浮世絵の影響を具体的に指摘したり、たくさんの花を描いたこと、とりわけ睡蓮が有名で、パリのオランジュリー美術館には鑑賞者を取り囲むような大作が展示されていることなどを紹介したりした。

 その後、用紙が配られ、空白の箇所に学んだことを記入し、暗唱した。

 授業を受けていた生徒の一人は「ゴーギャンの授業では、家族構成や住んでいたところ、ゴッホとの初対面の様子なども分かり、興味が湧きました。画家についてだけでなく、絵の道具の名前なども学べるので、将来、留学するときに役立つと思います」と話した。

 また、別の生徒は「AからZまで、美術に関する単語を辞書で調べたことが印象に残っています。外国の人に自分と自分の作品のことを話せるようになりたい」と話した。

 三浦教諭は「美術やデザインは世界共通の分野であり、美術を通じて交流したり、自分をアピールしたりする際には英語が不可欠です。そのため、この授業では背景の文化も大事に考えています。例えば画家や作品の背景をリサーチして、どんな時代だったのか、どんな生活をしていたのか考えてみるといった仕掛けをたくさん設けています」と、授業の意図を話した。

「英語表現が仕事や制作の場を広げる」

 生徒たちが将来、国際的な仕事をすることを視野に入れ、同校は以前から国際交流や海外研修に力を入れてきた。

 現在、スイスのバーゼルで版画の制作と指導を行うかたわら、バーゼル大学大学院で美術史を学ぶ卒業生の話を聞いた。

 「中3のとき、イギリスで1か月のホームステイをした際、英語で話すことによって居心地のいい場所や友人の数がぐっと増すことを実感しました。当時から英会話の授業は、実践的な口語表現などが多く取り入れられていました。ネイティブ流の相づちの打ち方や疑問を投げかける表現を身に付けると、会話の幅が広がり、話がどんどん続いていくのが楽しかったです」と生徒時代を振り返る。

 また、英語のライティングに伸び悩んでいた時には、美術科教員に「絵を描くように書いてみては」というアドバイスを受け、英語表現が生き生きとして一段と成長することができたと言う。「中高生の頃に大好きな美術と英語に没頭できたことは、今の自分に計り知れない影響をもたらしています」

 今年度始まった「Art English」の授業についても、「英語で表現できることで、生きていける世界やものの見え方、仕事や制作の場が圧倒的に増えます。中学生から美術だけでなく語学の感性も同時に伸ばしていくことによって、より世界で通用する人材になれるのではないでしょうか」と期待を語った。

 同校は今後、「Art English」で、できるだけ多くの画家を紹介するとともに、形や色、線を英語で説明する授業や、美術の授業で実際に制作した作品を英語で表現するアクティビティーなどを取り入れていきたい考えだ。

 美術という国境のない世界で活躍する日のために、「Art English」の授業は生徒たちの可能性を大きく広げることだろう。

 (文:山口俊成 写真:中学受験サポート)

 女子美術大学付属高等学校・中学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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863783 0 女子美術大学付属高等学校・中学校 2019/10/30 05:21:00 2019/10/30 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/10/20191025-OYT8I50010-T.jpg?type=thumbnail

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