【特集】教育改革4年目、生徒たちの個性の輝きに目を見張る…女子美付

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 女子美術大学付属高等学校・中学校(東京都杉並区)は、2017年に就任した石川康子校長のもと、自己表現入試や美術を英語で学ぶ「Art English」の導入、ICTの積極活用などさまざまな教育改革を進めてきた。改革から4年目の今年、石川校長に手応えを聞いた。

教職員に「学校をさらに良くしよう」という気概が生まれた

 ――就任以来進めてきた改革で、学校はどのように変化しましたか。

 まずは教職員の意識に変化が見られました。教職員全員に「生徒の意欲を引き出すために学校をさらに良くしていこう」といった気概が生まれました。ICTや「アートイングリッシュ」を導入した時も、教員たちは推進チームへ積極的に参加してくれました。職員室は情熱にあふれ、さらなる改革への提案も生まれています。そして、それが生徒へも伝わり、学校全体がますます元気になっているのを感じています。

 ――ICTの活用状況について教えてください。

iPadを作品作りに活用する生徒たち
iPadを作品作りに活用する生徒たち

 現在は中1、中2と高1、高2が全員iPadを持っており、来年度で全学年が所持することになります。もちろん教員も全員がiPadを活用していましたから、このコロナ禍でも生徒に学びを届けることができました。

 美術では、作品づくりに手による作業が重要であることは言うまでもありませんが、小学校でプログラミングを学ぶ時代に、情報ツールの活用も必須の素養です。ラフスケッチをiPadで行ったり、制作において日に日に変化していく作品を撮影することで振り返りに役立てたりといった活用を行っています。また、ポートフォリオの作成やプレゼンテーション用のスライド作成などを通して、自分の作品の意図や説明を文章化し、より分かりやすく伝える力が伸びています。

 他教科でも、紹介したい作家や見せたい資料をデータで配布できるため、高画質・高解像度で、より多くの資料を共有できます。また、グループワークや発表などでも活用して生徒の学びを深めることにつながっています。

興味がある美術だけに英語への意欲が広がる

 ――「アートイングリッシュ」の授業はどのように実践していますか。

「アートイングリッシュ」の授業で、スキットを発表する生徒たち
「アートイングリッシュ」の授業で、スキットを発表する生徒たち

 昨年から開始した「アートイングリッシュ」の授業は、美術という生徒が興味を持つ分野を対象にしているため、英語が苦手な生徒でも取り組みやすいことが分かりました。多くの美術作品を見せながら進行するので視覚的に楽しみながら学べています。

 プレゼンテーションやスキットの発表などは期待以上のパフォーマンスに驚かされました。例えば画家の役で英語劇の一場面を行うという課題では、それぞれの画家の人形を粘土であっという間に作ってきたこともありました。個人面談をした教員からは、海外留学や海外での活動に興味を持つ生徒が増えたという報告も受けています。生徒たちの意欲の広がりは頼もしいばかりです。

 現在、卒業生たちの活躍の場は、ますますグローバル化しています。今後の授業では各ステップの目標をより明確にし、高3では自分の作品を英語でプレゼンテーションし、質疑応答するというゴールにつながるようにしたいと考えています。

 他の教科についても、中高生に必要な学力をしっかり身に付けるように配慮しています。美術大学以外への進学を目指す生徒には、高3に進級する際、学科選択ができるようにしています。美術の10時間の授業を、受験に必要な科目の授業に振り替えることができる制度です。受講生が1人でも開講し、教員が授業形式で指導します。

美術という価値観でつながり、多様性を理解する生徒たち

 ――校長の目から見て、女子美生ならではという特長はありますか。

「教職員に学校をさらに良くしようという気概が生まれた」と話す石川校長
「教職員に学校をさらに良くしようという気概が生まれた」と話す石川校長

 私は公立高校でも教員をしていましたが、女子は特定のグループに分かれ、ほとんど交流がないまま卒業していくのが普通だと思っていました。しかし、女子美は違いました。おしゃれな子、おとなしい子、スポーツ系、勉強好き、といろいろあっても、それぞれが普通にコミュニケーションしています。

 趣味や好みが違うのになぜだろうと思ったものの、すぐに美術という価値観でつながっているからだと気付きました。一般の教科と違って、美術には絶対の正解がありません。たとえ先生が高評価を付けても、「私はこっちの作品の方が好き」と言える多様性がある。互いの個性を認め合える開かれた姿勢も美術を通して育まれるものだと思います。

 学内のコンテストでも美術教員が十数人で評価しますが、いつも評価は割れ、議論が白熱します。もちろん厳しい批評もあり、挫折することも一度や二度ではありませんが、自分と向き合い、他者の視線に磨かれながら、作品作りを通してアイデンティティーを確立し、生徒たちは力強く成長していきます。

 本校の生徒は約7割が女子美大に進学するため、大半の生徒は、ぎりぎりまで卒業制作に打ち込み、自分の作品、自分の芸術と向き合うことができます。ですから出来上がった作品は、どれを見ても、受験のためのテクニックからは生まれない個性の輝きにあふれています。

 もちろん他の美術大学への進学を希望する生徒もおりますが、自己推薦のプレゼンテーションやポートフォリオの作成など、美術科の教員が丁寧にフォローして、受験に備えています。学校生活、学習カリキュラム、卒業制作なども他の生徒と同じように行います。

 ――受験生へのメッセージはありますか。

 感性を育てれば知性が伸びる、そして知性は感性を補完する。本校はそうした思いで教育を行っています。美術を学ぶことで培われる創造力やひらめき、表現力、ゼロから1を生み出す力は、これからのAI社会で最も必要とされる能力です。

 実際、ビジネス界もデザイン思考や芸術的な感性の重要性に気付いています。卒業生が力を発揮する分野も、プロダクトやパッケージ、広告デザインなどから、商品コンセプトやビジネスモデルそのもののデザインまで飛躍的に拡大しています。くわえて、商品開発は自動車でも女性の感覚を重視するように、社会が女性の力を求めています。今、まさに、時代が美術の新しい価値に目覚め、やっと社会が女子美に追いついてきたと感じています。

 そうした時代に向けて、生徒たちは「美術が大好き」という気持ちを胸に、美術を深く広く学び、切磋琢磨(せっさたくま)しています。受験生たちもぜひ本校の門をたたいて、美術教育の価値を知ってもらいたいと思います。

 (文:山口俊成 写真:中学受験サポート 一部写真提供:女子美術大学付属高等学校・中学校)

  女子美術大学付属高等学校・中学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1509273 0 女子美術大学付属高等学校・中学校 2020/10/01 05:01:00 2020/10/26 11:21:25 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/09/20200929-OYT8I50021-T.jpg?type=thumbnail

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