【特集】書道を学ぶ中で「行学二道」の精神を知る…立正大立正
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立正大学付属立正中学校・高等学校(東京都大田区)は書道教育に力を入れ、中1から中3まで必修、高校でも選択式で授業を実施している。さまざまな芸術の学習は、建学の精神である「
人間形成のために欠かせない芸術教科

同校には、多目的ホールと音楽室・美術室・書道室・暗室・陶芸用の窯などを備えた4階建ての「芸術棟」がある。中1から中3まで、すべての生徒がここで音楽・美術・書道を学び、高校に入ってからも、3科目のうちいずれかを選択して学習を続ける。
「さまざまな経験を経て自分の得意分野を見つけ、創意工夫によってそれを伸ばしていってほしい。芸術は、人間形成のために欠かせない教科だと考えています」と、校長補佐・入試広報部長の今田正利先生は話す。
日蓮宗系の仏教校である同校は、「行学二道」を建学の精神としている。知識や経験(学)を行動で示す(行)という、開祖・日蓮の教えに基づく理念だ。「美術では基礎のデッサンから始め、書道では筆の持ち方を一から教えます。基礎・基本をしっかり学び、行動に移して作品を仕上げるという一連の活動は『行学二道』につながり、芸術のみならず、すべての教科に共通する学びの道筋となります」と今田先生は説明する。
僧侶を養成する学校として1580年に創始された同校では、写経が僧侶の修行の一部であることから、書道教育に特に力を入れ、多くの中高で書写・書道の授業が減少しているなか、中学3年間必修として固くその伝統を守ってきた。「書道や美術は個人が一つのことを突き詰め、音楽は共同作業によって一つのものを作り上げる分野です。総合的に芸術を学ぶことで、一層の教育効果が表れるものと考えています」
書道によって勉強に集中する姿勢が養われる

特別進学クラスに所属し、テニス部で活動している伊藤
「中学の時からずっと授業で書道を続けてきたことで、普段書く字がきれいになったように思います。特に、書き順の間違いを直すことができるようになりました。今では、家で慶弔用の封筒を書く時など、私が筆ペンで宛名を書くことを任されています」
「漢字の書き順は、非常に大切です」と、中高で18年間書道の指導を行っている国語科の梅田克彦先生は話す。「書き順は、その文字本来の美しさを表現できるように考えられています。楷書から行書に移行する際にも、書き順の習得は必須となります」
書道の授業では楷書・行書のほか、中国古来の文字である

新年の書き初めでは、「新春の富士」「
「書道の場合、ただ字がうまければよいというものではなく、やはり強弱メリハリがあってバランスの取れたものが、作品として優れていると考えられます。伊藤さんの場合、明るくてはっきり話す性格が、そのまま強く堂々とした字に表れていますね。基本の書写を丁寧に行うことから自らの個性の表現へ、見事に発展していると思います」と梅田先生は説明する。
伊藤さんは芸術に関心がある一方で人と話をすることが好きで、将来はインテリアデザインの仕事がしたいと考えている。「どんなお部屋を作りたいか、お客様とお話ししながらアイデアをふくらませていけるといいですね。人とコミュニケーションを取りながら創造活動をする仕事をしたいと思っています」

梅田先生は、人としての落ち着きを高めるうえでも、書道を習うことは大切であると考えている。「最近、全国的に中学でも、授業中、椅子にずっと座っていることができず、教室をうろうろと歩き回ってしまう生徒がいると聞きますが、書道を学ぶことで防げるはずです。最初は落ち着きがなさそうだった生徒も、いったん筆を持てば、じっと取り組むようになります。その積み重ねを1年、2年と続けていくことで、座って勉強に集中するための姿勢が養われるようになるのです」。
長年の指導により、同校書道部は、校外の展覧会に定期的に出品する伝統の部活となった。「書の甲子園」と呼ばれる「国際高校生選抜書展」などに毎年参加し、しばしば入選を果たしている。卒業生の中には堀井寛齋氏や酒井
「最初はお手本に忠実に、きちんとした字を書けるようになることが大切です。そのうち、字を書くことの面白さに気付き、自由に表現できるようになります。ぜひ、自分なりのスタイルを確立させ、それぞれが力を発揮してほしいと思います」と、梅田先生は生徒たちへの期待を語った。
(文・写真:足立恵子)
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