多様な入試で集まった多様な個性が切磋琢磨…浦和実業

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 浦和実業学園中学校・高等学校(さいたま市)は、2016年度に導入した「適性検査型入試」を手始めに多様な入試方式を展開してきた。従来型の入試では測りきれない個性や能力を持つ生徒に門戸を開くのが目的だ。昨年度から導入した「英語入試」でも学習意欲の強い生徒が集まるなど、さまざまな生徒が肩を並べる環境で、生徒たちの関係性も大きく変化しているという。入試改革を手がけてきた生徒募集担当の小池克弥教諭に話を聞いた。

読み取る力や思考力を問う「適性検査型入試」

適性検査型入試を導入した背景を説明する小池克弥教諭
適性検査型入試を導入した背景を説明する小池克弥教諭

 近年、公立の中高一貫校の入試で採用されてきた適性検査型試験を取り入れる私立校が増えている。同校も3年前から適性検査型入試を行っている。生徒募集担当の小池克弥教諭は、「公立の併願として受けてもらうことと、従来の入試では見極めきれない発想力や思考力、自分の考えを的確に表現できる力のある生徒を掘り起こすのが狙いです」と、この試験を導入した背景を説明する。

 この試験では、国語力を見る作文型の「適性検査1」(100点 50分)と、算数・理科・社会などの科目複合型の「適性検査2」(100点 50分)の合計200点満点で評価する。なお、2020年度は、これに数理的な思考力・表現力を見る「適性検査3」(100点 50分)を加え、300点満点で評価する試験も行う予定だ。

 適性検査型入試の試験問題には毎回、テーマがあり、オリジナリティーに富んだ内容となっている。昨年の第1回目の「適性検査1」のテーマは「ルールとマナー」だった。本屋でのスマホによる写真撮影と、ワールドカップでボール回しをして時間を稼ぐことについての新聞記事を読み、「ルールとマナー」について考えさせた。また、第2回目入試のテーマは「落語」で、「歯医者・雪だるま・オリンピック」という三つの言葉を使って400字の「三題噺(さんだいばなし)」を創作させるなどの出題をした。

オリジナリティーに富んだ適性検査型試験の問題
オリジナリティーに富んだ適性検査型試験の問題

 「適性検査2」では、さまざまな「橋」がテーマに設定され、「橋」を巡る計算問題や、地図の読み解きなど、多角的な視点から出題した。また、「電車」をテーマとして、路線図や乗車人数のグラフ、時刻表を読み解いたり、記述させたりする問題もあった。

 こうした試験問題を作るにあたり、小池教諭は「試験問題に興味を持ってもらうために、身近なトピックや小学生が関心を持ちそうな題材を取り上げています」と話す。「最近では、過去問題の内容や傾向を見て、受験する学校を決める生徒もいます。入試は最初の授業とも言われますから、学校が楽しそうだと感じてもらえるような試験になるよう、教員も毎年力を入れています」

 今年度は、中1生80人のうち16人が適性検査型入試で入学したという。受験者数も年々増えてきているそうだ。

 同校の「適性検査」の問題は、1も2も文章量が多いのが特徴だ。今年入学した中1の中野響君と秋吉竜祈君に、入試に向けて対策してきたことを聞いてみると、「新聞や本をよく読んだ」と声をそろえた。中野君は「読んだ文章を200字に要約して作文する練習をしました」と言い、秋吉君は「記事の一番重要なところにマーカーで線を引き、何を伝えようとしているか考えました」と言う。単なる読解力だけでなく、書かれている情報を整理する力が求められているのが分かる。

 実際に入試を受けた感想は、「落語の問題が印象に残っています。落語はまったく知りませんでしたが、面白かったです」と中野君は話す。また、「電車が好きなので、電車の問題は最初に全部解きました」と笑顔を見せた。

 理系の科目が得意だという秋吉君は、「橋の試験が印象に残っています。試験で出た珍しい橋の話が授業でも取り上げられたので、興味が深まりました」と話した。

「英語入試」の生徒に学習意欲が強い傾向

独自の「英語イマージョン教育」にも力を入れている
独自の「英語イマージョン教育」にも力を入れている

 同校は、体育や音楽、技術家庭を英語で教えたり、副担任をネイティブの教員が受け持って日常の伝達事項を英語で伝えたりする独自の「英語イマージョン教育」に力を入れている。「小学校の英語教育が始まってから、本校の英語イマージョン教育に対する関心は高まっていますね」と小池教諭は話す。

 こうした英語教育への取り組みに関心を持つ児童に門を開こうと、同校は昨年度から「英語入試」を導入している。この入試では、英語・日本語の筆記試験と英語による面接を行っている。「特に面接では、拙い英語でも伝えようとする気持ちや意欲があるかどうかを重視しています。『英語が楽しい』ということを伝えられるよう、ネイティブの教員が面接の仕方や問題作りに創意工夫しています」

 小池教諭によると、英語入試で入ってきた生徒は、学習に対する意欲が強い傾向があるという。昨年、英語入試で入学した中2の吉田美咲さんも、「英語入試の人は積極的で、勉強に対しても興味のある人が多いです」と話す。吉田さん自身、小5で実用英語技能検定準2級、中2で2級を取得しており、現在は準1級合格を目指して猛勉強中だ。将来の夢は、「子供に英語を教えること」だという。「学校ではネイティブの先生とできるだけ会話するようにしています。今年の夏は初めて家族でハワイへ旅行に行くので、現地の人と英語で話す機会を作りたい」と意欲を見せた。

それぞれの個性を認め合って成長する

 さまざまな入試方式を通じて同校に入学してきた生徒たちは、多様な個性を持っており、生徒同士の関係性にもさまざまな変化がもたらされているという。

 「適性検査型入試の生徒は、考え方が柔軟でリーダーシップを発揮する子が多く、英語入試で入ってきた生徒には学習意欲の高い子が多い。お互いに苦手な教科を教え合ったり、物事の考え方のヒントをもらったりしているようです」と小池教諭は語る。「こうした環境で学んでいるためか、人に対して寛容な生徒が多いですね。英語が得意な子、じっくり物事を考える子、表現力が豊かな子など、いろいろなタイプがいることを知り、お互いを認め合えることは、社会に出てから役に立つはずです」

 「臆することなく外国人と話せる生徒が増えてきたことに驚いています。価値観が急速に変わる時代に柔軟に対応するためには、コミュニケーション能力が不可欠。多種多様な人間がいる中で、話を聞く力、表現する力、そしてツールとしての英語力を、ますます磨いてほしいですね」

 中学生の多感な時期に、多様な個性を持つ仲間と出会い、切磋琢磨(せっさたくま)しながら過ごせることの意味は大きい。

 (文・写真:石井りえ 一部写真提供:浦和実業学園中学校・高等学校)

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