完全一貫校化で男子教育の高みへ…成城

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 創立133年の歴史を誇る男子校、成城中学校・成城高等学校(東京都新宿区)が、2019年度からの完全中高一貫校化を決めた。生徒が意欲と自覚に目覚めるのをじっくり待ち、育てたいという人間教育の伝統がある。栗原卯田子校長に、その狙いや教育方針について聞いた。

6年間、子供の成長を長い目で

成城中学校・成城高等学校の魅力を語る栗原卯田子校長
成城中学校・成城高等学校の魅力を語る栗原卯田子校長

 「私はいつも、お母さんたちに『ちょっと待ってね。男の子はいつか化ける。それを信じて』と言っています。6年間、子供の成長を長い目で見てほしいのです。本校の教員たちは、男子のことがよく分かっていますから、生徒が自分で学ぶのを見守る態勢ができています。これが男子校の良さだと思います」

 栗原校長が校長に就任したのは5年前のことだ。公立中高一貫校である都立小石川中等教育学校の校長を定年退職後、成城に迎えられた。女性が男子校の校長を務めることは当時異例で、話題となった。その栗原校長が男子生徒たちの人間的な成長を見守りながら、導入に踏み切ったのが完全中高一貫校化だ。

 高校からの募集人数は、すでに段階的に減らしてきている。2018年度に最後の高校募集を行い、翌年度から完全中高一貫校化する予定だ。

 「中学からの受験者は順調に確保できていて、卒業までの定着率も高くなっています。こうした状況を踏まえて正式に理事会に諮り、学則を変更して完全な中高一貫校とすることを決定したのです」

リーダー育成の伝統を引き継ぐ

 なぜ、「完全」中高一貫校なのか。その考えの基となっているのは、都立小石川中等教育学校に在職していた当時の経験だ。ちょうど同校低学年の生徒と、都立小石川高校の最後の生徒が、同じ校舎で学ぶ過渡期だったといい、中高一貫校と高校の二つのカリキュラムを同じ空間で展開することの難しさを痛感していた。

 「高校には高校の文化があり、12歳から18歳までの中高一貫教育とは、雰囲気が異なります。私は本校を、男の子が6年間じっくり育っていく教育の場にしたいのです」

 栗原校長は、完全中高一貫校化について、カリキュラムを一本化し、教育現場を整理する手段と考えているのではない。人間教育を重んじる同校の伝統を、一層高い次元で引き継ぐための取り組みなのだ。

 「本校に来て、私が一番驚いたのは、伝統の豊かさです。これは、何より大事にしなければいけないと思いました。本校は1885年(明治18年)、陸軍士官学校や幼年学校の予備校として創立されました。西南戦争を経験した陸軍関係者たちが、世界に伍していく日本になるために、知力・体力のバランスの取れた人材を育てる必要があると考えたのです」

 単なる学力強化を超えて、リーダーシップあふれる人間教育を目指すには、時間はいくらあっても足りない。「高校からの3年間では、生徒や保護者の関心が大学受験に集中しがちで、カリキュラムも受験中心になってしまいます。本校の伝統である人間教育を定着させるには、6年間の一貫教育にすることが望ましいと思ったのです」

 校章に表現されている知・仁・勇の三つを備えた人間の育成、これが創立133年の伝統であり、これからも変わらない「成城の教育」の本質なのだ。

新しい「成城の教育」

エンパワーメント・プログラムが学校に好影響を与えている
エンパワーメント・プログラムが学校に好影響を与えている

 伝統を踏まえたうえで、完全中高一貫校のメリットを生かし、栗原校長が実現したい教育は何か。それが現在、教育目標に掲げる「グローバル時代のリーダー育成」だ。「これは本校が、創立以来守り続けてきた、文武両道の男子教育の伝統に通じる言葉なのです」

 栗原校長は就任以来、リーダー育成を重んじる伝統の「成城の教育」に、グローバル教育の新風を吹き込んできた。自ら小石川中等教育学校以来の人脈を駆使し、国内外の関係先と交渉しながらさまざまなグローバル教育プログラムを作ってきたという。

 「プログラムのほとんどは、業者頼みにしない成城オリジナルなのです。試行錯誤はありますし、状況に応じた調整はしていきますが、新しい『成城の教育』は、今がほぼ完成形に近いと思っています」

 同校のグローバル教育プログラムは、米カリフォルニア大の学生を招いて生徒と交流させる「エンパワーメント・プログラム」や、クイーンズランド大学の協力を得て実施しているオーストラリア・グローバル・リーダー研修など多彩。そして今、力を入れているのが台湾グローバル研修だ。

年々内容が充実する台湾グローバル研修(写真は昨年の様子)
年々内容が充実する台湾グローバル研修(写真は昨年の様子)

 「台湾研修は、次第に内容が深まり、今は19校の教育機関と交流し、大学の先生にも参加してもらうようなものになっています」

 台湾の教育現場は、日本よりグローバル化が進んでいるという。国際的な大学評価で、日本の難関大学をしのぐレベルの大学も多い。「台湾の大学では、ほとんどの授業が英語で行われます。将来の進学先として考えてみるのもいいと思います。欧米の大学に行くより、費用ははるかに安く済みます。台湾の大学から欧米の一流大学や大学院に進む道もあります。台湾との関係は大事にしていきたいと思っています」

 ちなみに成城の第7代校長だった児玉源太郎は、明治30年代に台湾総督を務めていた。「台湾との関係には、長い歴史があることを知り、ご縁を感じています」

生徒の意思を重んじ、目覚めを待つ

2014年に完成した校舎
2014年に完成した校舎

 グローバル教育プログラムは、その内容は充実してきているが、生徒の全員参加は必ずしも目指していない。実際、参加する生徒の数は限られているという。海外研修の参加者を募集する際は、英検の点数などより、意欲を重視するからだ。「本校の特徴は、校訓にあるように自治自律、自学自習を重んじるところにあります。それが成城らしさなのです。部活や行事も、全員参加のものは少なく、本人の意思を大事にしています」

 同校は部活動(同好会ふくむ)も盛んで、参加率も非常に高いが、参加するかどうかは生徒の自由なのだという。「本校では、どんなことでも、生徒に無理にやらせることはしません。その一方、生徒がやりたいと思うことは、とことんできる環境を作りたいのです。45もあって、ちょっと多すぎる気もしているのですが、生徒たちがやりたいことはかなえてやりたいという教職員の熱意で、これだけの数になったのです」

 部活に集中できる時間が長いことも、中高一貫校の大きなメリットだろう。「本校が第1志望でなく、不本意な入学をした生徒でも、『成城に入って良かった』と思えるようになってほしい。そのために、部活動は良いきっかけになります。何か一つ興味を持てるものに参加して、ヘトヘトになるまで頑張ってみてほしい。先輩の活躍を目にすることや、自分の目標を乗り越える経験が、男の子を成長させるからです」

 「本校では、中学入学時と高校卒業時の成績に相関関係がほとんどありません。何かをきっかけに、自分が目指すものを見つけた途端、驚くほど成長するのが男子の特徴です。6年間の学校生活の中で、いろいろ経験してほしいと思っています」

 生徒の自覚が芽生え、成長していくのをゆっくり待つことができる。それが完全中高一貫校化の最大の利点かもしれない。

 (文と写真:織江理央 一部写真提供:成城中学校・成城高等学校)

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207294 0 成城中学校・成城高等学校 2017/10/19 05:20:00 2017/10/19 05:20:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20171012-OYT8I50070-T.jpg?type=thumbnail

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