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【特集】「学びの技」の授業が生徒の将来を開く…玉川学園

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 教育信条の一つに「自学自律」を掲げる玉川学園中学部・高等部(東京都町田市)は、物事を体系的に学ぶための「学びの技」を8年前から授業に取り入れている。この授業で学んだ生徒たちは、その「技」を駆使して玉川学園が創立以来行っている探究型学習「自由研究」という授業に取り組み、学外の研究発表会などでも高い評価を得ている。このプログラムを指導している後藤芳文教諭に話を聞いた。

自分で学ぶ方法を学ぶ

「学びの技」を説明する後藤芳文教諭
「学びの技」を説明する後藤芳文教諭

 「臓器移植を行うために脳死を人の死とすることは許されるのか」。これは玉川学園の9年生(中3に相当)が学ぶ「学びの技」の授業の集大成として作成され、2013年度の最優秀賞に輝いた論文だ。この難しい問いについて序論から結論までの5章で検討し、図書、新聞、論文、インターネットなど30の参考文献、九つのグラフデータと四つの図で論述を補強している。

 「その後も高等部でこうした学びを深め、大学の医学部へ合格しました。『学びの技』の授業が大学進学やその後の将来へと大きく関わっているケースはたくさんあります」と後藤教諭は話す。「学びの技」とは実際どんな授業なのか。

 玉川学園では7年生(中1に相当)になると、自分の興味、関心に沿ってテーマを決めて調べ、まとめて発表する「自由研究」に取り組む。そして、10年生(高1に相当)以降のより高度な自由研究において論文をまとめるのに先立って、9年生(中3に相当)で学ぶ基礎講座が「学びの技」だ。

 「創立以来、玉川学園では『自学自律』を掲げ、自分で学ぶ方法を学ぶラーニングスキル修得のため『自由研究』に取り組ませてきました。現在はこのスキルがさらに重要になっています。社会の変遷するスピードが速くなり、学校だけでなく、社会人になってからも学び続ける必要があります。大学入試改革でも探究的な力が問われるようになります。正解が何か分からない問いに対して、どう対応するか。その学習法のベースとして作り上げたのが『学びの技』の授業です」

七つのスキルのオリジナルプログラム

「学びの技」のテキストと論文集
「学びの技」のテキストと論文集

 「学びの技」は、後藤教諭、情報科教諭、図書館司書が作成した玉川学園オリジナルのプログラムだ。

 プログラムを作るにあたっては、国内外の学校や国際バカロレア機構の教育プログラムなどを検討し、カナダで使われている探究型学習のモデルをベースに選んだ。このモデルは「計画を立てる」「情報を検索する」「情報を分析する」「創作する」「共有する」「評価する」の六つのスキルで構成されているが、「学びの技」は、これに計画を立てる前に必要な「周辺知識を得る」というもう一つを加えた七つのスキルからなっている。

 授業には年間約60時間を費やす。内容は論文に必要な「問い」を作るスキル、そのテーマに基づいて情報を収集、選別、整理するスキル、探究マップなどのツールを活用した論文の書き方、プレゼンテーションの方法などを学ぶ。

ポスターセッションで完成度の高い論文に

5W1Hを使って「問い」を設定する
5W1Hを使って「問い」を設定する

 後藤教諭は「一番難しいのが『問い』の設定です」と話す。「5W1Hを使って『問い』を検討し、仮説がある程度見えてから、そこに向けて情報収集をするのが、初心者にとっては取り組みやすくなります」

 具体的な手順としては、「問い」への結論について賛成と反対の両方の立場から検討した「証拠収集シート」を作成し、検討を重ねるという。「人間誰しも自分が出した結論に偏った見方をしがちですが、反対の立場でも情報を集めて検討し、その意見の根拠を知ることが大事です」。同時に、情報収集が偏っていないかどうかを知るために、「問い」を紙の中心に書き、収集した情報のキーワードを「問い」に対して放射状に関連付けした図を作る。

 この検討内容を約10枚のスライドにまとめ、ポスターセッション形式で中間発表する。これは「学びの技発表会」といって、欠かせないプロセスになっている。「プレゼンテーションをして友達や先生から意見をもらうことで、何を残して何を削るか、順番をどう入れ替えるか、など内容を整理します。これが論理的一貫性のある論文を作成するためには重要なのです」

 「学びの技」の授業を始めた最初の年は、論文を書きあげた後にプレゼンテーションをさせたという。しかし、いったん書き上げてしまった論文は、論理的一貫性がなかったり、本筋からずれたりしていても修正が難しかった。この失敗を反省して取り入れたのがポスターセッションで、論文の作成途中に問題点を指摘してもらえるので修正が容易になり、完成度が高くなったという。

「学びの技」「自由研究」から将来が開ける

「問い」に対して収集した情報のキーワードを放射状に関連付ける
「問い」に対して収集した情報のキーワードを放射状に関連付ける

 「学びの技」では、論文の長さは3000字以上と義務付けられているが、中には16000~17000字に及び、参考文献が100以上に達する論文もある。そうした力作の中から、最優秀賞、金賞、銀賞を選び、毎年、論文集としてまとめている。

 この論文作成で見出した興味、関心を、さらに発展させていく生徒もいる。2013年度の金賞に輝いた論文「和食と長寿に関連性はあるのか」を作成した生徒は、翌年、このテーマを発展させた論文で立命館論文大賞の優秀賞を受賞、その後も玉川学園SSH(スーパーサイエンスハイスクール)プログラムで研究を継続。その成果を大学のAO入試で認められ、慶應義塾大学へ入学した。

 地名の由来を論文にした生徒が、その後も研究を深め、自己推薦で明治大学の史学地理学科に合格したケースもあるという。「『学びの技』や『自由研究』は、キャリアデザインの一環にもなります。この学びを通じて、将来、大学でやりたいこと、やりたい仕事をつかむ。そういった種を撒く作業でもあるのです」と後藤教諭は話す。

 玉川学園では「学びの技」で関心を深めた分野を、その後も研究していく環境が整っている。サイエンス、ロボット、脳科学、数理科学、サンゴ研究、模擬国連など様々なプログラムが用意されていて、生徒たちの興味、関心に合わせて研究を深めていくことができる。その成果はロボカップジュニアの日本大会・世界大会、日本学生科学賞、インテル国際学生科学技術フェアなど国内外の様々な大会で評価され、賞を取るなどしている。

 昨年度入試から、東京大学で初めて推薦入試が行われて話題となったが、この難関を突破した1人が玉川学園の生徒だ。「模擬国連の活動に継続して取り組んで国際政治への関心を深め、東大に推薦で合格しました。現在は国際法模擬裁判大会に向けて取り組んでいて、将来の選択肢として国際弁護士を考えていると聞いています」

 玉川学園の「学びの技」と「自由研究」が、生徒たちの未来を作る種となっている。「学びの技」の授業導入から8年、その種から次々と花が咲き始めている。

 (文と写真:小山美香 一部写真提供:玉川学園)

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207609 0 玉川学園中学部 2017/10/26 05:20:00 2021/03/25 15:57:03 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20171018-OYT8I50036-T.jpg?type=thumbnail

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