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【特集】「Art Lab」拠点にものづくりで社会に発信…玉川学園

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 玉川学園中学部(東京都町田市)は約1年前に「Art Lab」を開設し、さまざまな手法で生徒がものづくりを学ぶ拠点として活用している。ここには3Dプリンターなどの最新機器から、のこぎりなど手作業の道具までがそろい、生徒の創作意欲を刺激している。「Art Lab」を活用して美術表現・立体技法を指導している瀬底正宣(せそこまさのり)教諭にオンラインで取材した。

生徒たちとペンキを塗って倉庫を変身させる

「Art Lab」を活用して美術技法を教える瀬底教諭
「Art Lab」を活用して美術技法を教える瀬底教諭

 「Art Lab」は、同校の美術専門校舎「アートセンター」内にある。中には樹脂で立体造形物が作れる3Dプリンターや、アクリル板・木材などを加工できるレーザー加工機、コンピューターを使って大型の木材を加工できるCNCルーターなどの最新機器から、のこぎりのような手作業の道具までがそろっている。

 この「Art Lab」を活用した授業のきっかけとなったのは2年前に、当時中2で、天文学の自由研究を進めていた生徒が、NASA(アメリカ航空宇宙局)が考える宇宙基地の設計図を持って「模型を作りたい」と瀬底教諭のもとへ相談に来たことだった。

 「導入して2年目の3Dプリンターがあったので、それでやってみたらどうかと助言したのが最初の出会いです。そこから彼はどんどんものづくりに夢中になっていきました」

 その後、瀬底教諭は他の生徒たちとも一緒に小さなプロジェクトを重ねるうち、「アートセンター」内の倉庫だった場所を使用する許可を得て、一緒に壁のペンキを塗るなどして「Art Lab」を作り上げた。

 「本校では、授業、自由研究、クラブ活動などさまざまな枠がありますが、『Art Lab』はどの枠にも属していません。物理の自由研究で構造体の模型を作るのに利用したこともあるし、例えば、社会の授業で大きな地図を作ったり、ロボットクラブで必要な部品を作ったりすることもできます。面白いものができてくると、どんどん子供たちが寄ってくるんですね」

 「Art Lab」は、美術科の瀬底教諭のほか、技術科や理科など数人の教諭が関わって運営していて、生徒たちが自由に来て、ものづくりを楽しんでいるという。

 「最近は特に低学年の生徒たちが遊びに来ることが多いです。今は私たち教員がアイデアを投げかけていますが、そのうち生徒だけでどんどんやっていくようになってほしいですね。自分の楽しみだけでなく、世の中の役に立つものを作るように声をかけています。きっかけを作ってくれた生徒も高1になり、後輩たちにいろいろなアドバイスをしてくれています」

「こんなことができるんだ」という気付きが大事

3Dプリンターを使って生徒が制作した作品
3Dプリンターを使って生徒が制作した作品

 瀬底教諭は現在、この「Art Lab」の機能をフル活用し、高3の選択授業で「美術技法(立体)」を教えている。

 「新型コロナウイルスの影響で、現在はオンライン授業と対面授業を併用しています。3Dデザインができるクラウドアプリ『TINKERCAD』を使って、生徒は自宅のパソコンで3Dデータを作製し、学校へ送信します。すると、学校に来た時には、3Dプリンターでプリントアウトした立体造形が出来上がっているのです」

 生徒たちからは「私がパソコンで作ったものが、目の前に本当にある」など喜びの声が上がるという。スタンプホルダー、スマートフォンのホルダーなど、生徒たちは創造性を発揮して自由にデザインし、それが実際に出来上がってくるのを楽しむ。

 いわゆる美術表現のイメージと異なるこの授業のアイデアの発端は、12年前にさかのぼるという。玉川学園はIB(国際バカロレア)プログラムを導入しており、「Art」を教えることになった瀬底教諭は、準備のために「IB Art」の研修を受けた。

 「IBでは、『Art』がカリキュラムの6分の1を占めていて、大きな役割を担っています。日本の美術では、いい作品を作るとか心を育てることに主眼が置かれますが、『IB Art』では、社会のさまざまな事象をキャッチしてかみ砕いて表現することが必要とされます。考えることや試行錯誤のプロセスを評価して、『Art』で社会へ発信することが求められるのです。衝撃を受けました」

 そこから試行錯誤してたどりついたのが今の授業だ。「機材の使い方を覚えることが目的ではなく、こんなことができるんだという気付きを大事にしています。『Art Lab』は機材がそろっている部屋というより、作りたいものがある生徒が気軽に集まる場です。そこへ行けば詳しい先生がいて、みんなでワイワイ楽しみながら作れるようになっています」

素材の強さを感じられる手作りの制作も

生徒たちが制作した「ゴッホの椅子」
生徒たちが制作した「ゴッホの椅子」

 最先端の機器を使う一方で、瀬底教諭は昔ながらの手法を用いた造形も大事にしている。 2年前から始まった「TAMA TREE プロジェクト」は、広大な学園敷地内の林から出た間伐材を使用して、教育活動の中で再利用しようという運動だ。

 「学園の創立当時、未来のためにと植えた木々ですが、80~90年たって大きくなりすぎ、たまたま台風で敷地沿いの線路に倒れかかったことがきっかけです。間伐しなければならなくなったので、それを再利用するために、のこぎりなど昔からの道具を使ってものを作っています」

 業者がチェーンソーで木を切るところに立ち会い、倒れた木をみんなでロープを使って引っ張り出す。製材の仕方を体験し、切り出した木材でさまざまな木工用品を制作している。「素材にしっかり触って、素材の強さを感じることが大事です」と瀬底教諭は話す。

 2年前はテープカッターを作り、昨年は「ゴッホの椅子」を作って併設の幼稚園に贈った。 「ゴッホが晩年を過ごしたスペインのアンダルシア地方で作られてきた伝統的な椅子で、ゴッホの絵にも描かれています。これを幼稚園児のために、小さなサイズにしたものを作ろうというプロジェクトでした。テスト休みの日などに『クラフト・デイ』を設定して、ポスターで生徒たちに呼びかけたところ、興味を持った生徒たちが集まり、楽しんで作業できました」

 「『Art Lab』は手作りのよさと、最新機器を使ったものづくり、両極端があるのがいいと思っています」。今年は面談の時に使えるよう、新型コロナウイルス感染予防のためのアクリル板を製作する計画が進んでいるそうだ。

大学と連携し、ものづくりの楽しさと可能性を広げる

最新機器を使ってものづくりに取り組む生徒たち
最新機器を使ってものづくりに取り組む生徒たち

 玉川大学に4月、「STREAM Hall 2019」が完成した。学園が推進する「ESTEAM教育」(注)の一環で、学部を超えた学生が集まり、多様な価値観を融合させて、新しい価値観を創造したり、新しいものづくりを進めたりし、イノベーションを起こそうというものだ。「STREAM Hall 2019」は、その議論やものづくりをする場として活用が期待されている。

 「『Art Lab』も、今後は大学のこの施設と連携していきたいと考えています。大学生にインターンとして運営を手伝ってもらったり、中高生たちが大学生と交流したり、さまざまな連携を計画しています」と瀬底教諭は話す。「『Art Lab』でのものづくりを通して、社会への発信力を持つ『Art』の魅力を生徒たちに感じてほしいですね」

 さまざまなものづくりの楽しさと可能性が、小中高大の別や教科の枠組みも超えて、広がっていくさまに目を見張りたくなる。

注)ESTEAM教育(E:English as a lingua franca=共通語としての英語、S:Science=科学、T:Technology=技術、E:Engineering=工学、A:Arts=芸術、M:Mathematics=数学)

 (文・写真:小山美香 一部写真提供:玉川学園中等部)

 玉川学園中学部について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1345999 0 玉川学園中学部 2020/07/21 05:21:00 2020/10/22 09:55:40 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/07/20200716-OYT8I50015-T.jpg?type=thumbnail

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