【特集】「触れて・感じて・表現する」五感を生かした探究学習…玉川学園

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 玉川学園中学部・高等部(東京都町田市)は、通常の授業の中でも社会の諸課題について解決策を考える探究型学習を実践している。昨年度は、中学1年生の「技術・家庭」の技術の授業で、SDGs(持続可能な開発目標)の目標達成に取り組む企業の協力を得て、身の回りから環境問題を考え、解決策をプレゼンテーションする新たな試みを行った。この学びの狙いや生徒たちの熱い取り組み、成果について担当教諭らに聞いた。

中高を通して深めていく探究的な学習

「五感を使っていろいろなものに触れる仕掛けを盛り込んだ授業を展開しています」と話す中西先生
「五感を使っていろいろなものに触れる仕掛けを盛り込んだ授業を展開しています」と話す中西先生

 同校は、生徒たちにさまざまな体験をさせ、本物に触れさせることを重要視しており、多くの教科で、教科書に縛られることなく現実社会の課題を考え解決方法を探る、探究的な学びを実践している。

 中1に相当する7年生から8年生にかけて、自らの興味・関心を伸ばす教科発展型の「自由研究」に取り組み、9年生で探究型学習のスキルを体系化したオリジナルの「学びの技」を学習する。高1に相当する10年生では、そのスキルを駆使して、高度な課題研究型の自由研究を行う。

 中学部長の中西 郭弘(かつひろ) 先生は、「中学部では、深みのある大人になるために、触れて・感じて・表現することを目標とし、生徒が五感を使っていろいろなものに触れる仕掛けを盛り込んだ授業を展開しています」と語る。

 昨年、「技術・家庭科」の中1の技術分野の授業では、SDGsの目標達成に取り組む企業に協力を得た「問題解決学習」と「キャリア教育」の二つの新しい試みに取り組んだ。

 この授業を担当した山田真也先生は「身近な商品に関わる企業の協力を得ることで、生活に密着した事柄から、さまざまな問題に目を向け、誰かの『困った』『こうなったらいいな』という思いに気付ける人になってほしいと考えました。また、企業の取り組みを知ることは、生徒が未来をつくるうえでの枠組みを知ることです。特に環境問題について考えないと私たちの未来はありません。そのためSDGsは外せないと思いました」と狙いを話す。

企業の協力でSDGsの課題解決に挑む

SDGsに取り組む企業に協力を得た新しい授業を担当する山田先生
SDGsに取り組む企業に協力を得た新しい授業を担当する山田先生

 最初の取り組みは、飲料・食料品メーカー「ネスレ日本」のSDGs達成に向けた活動を教材にした授業だ。山田先生はチョコレート菓子「キットカット」のテレビコマーシャルを見て、そのパッケージが紙に変更されているのを知り、同社に連絡を取った。コロナ禍のため自宅学習期間中だった昨年5月、商品外袋の紙パッケージ化を紹介する同社の動画を生徒に視聴させた。「企業がこのような取り組みをするのはなんでだろう」「企業はいつからこのような取り組みをスタートしたのだろう」ということを生徒に考えさせることからスタートし、「なぜコストをかけてリサイクル・リユース可能な素材に変えたのか」「社会ではどのような動きが起こっているのか」についてリポートにまとめさせた。

 次に、文具メーカー「セーラー万年筆」に協力を得て、シャープペンシルを題材にプラスチック削減について考える授業を行った。分散登校が始まった昨年6~7月、生徒1人に1本のシャープペンシルを配布し、観察や分解をさせながら「シャープペンシルはいくつの部品で構成され、なぜ部品ごとに異なる素材が使われているのか」「プラスチックの使用を減らすための代替品として、どんな素材や部品があるか」を考えていった。さらに、シャープペンシルの生産現場の人々に分解図を見せて講評・解説をしてもらうとともに、同社社員に働く意義についてのインタビューを行った。

シャープペンシルを分解して部品の素材や形状を観察する生徒たち
シャープペンシルを分解して部品の素材や形状を観察する生徒たち

 「実際に自分の手でシャープペンシルを分解することで、クリップホルダーに折れにくい工夫がされていたりすることに気が付く生徒や、先口部分は回転させて外すのに対して、ノック部分は引っ張って外すようになっているのはなぜだろうと考える生徒もいました。気付いたことを踏まえて分解図を描く時も、ペンを横や縦、斜めに描くなど表現の仕方は生徒によってさまざまです。これは中学部の目標としている『触れて・感じて・表現する』ことにもつながっています」と山田先生は話す。

 最後は、2月から3月にかけて、1年間の学習のまとめとして、企業に向けてのプレゼンテーションにチャレンジした。課題は、「少子高齢化」「ソサイエティ5.0」「プラスチックゴミ問題(大量生産・大量消費・大量廃棄)」のいずれかを解決する「未来の自動販売機」をグループごとに考えるというものだ。各クラスの予選会を勝ち抜いたグループが、自動販売機を製造している大手電機メーカー「富士電機」と、自動販売機を管理運営する企業「八洋」の担当者にオンラインでプレゼンテーションを行った。

 「技術分野では中1で素材、中2で電気エネルギー、中3でコンピューターの計測・制御システムの仕組みを学びます。自動販売機はそのすべてにかかわっていて、誰でも触ったことがある身近なものであり、教材として最適です。このテーマについては1本の柱として、中学3年間の学びに据えたいと思いました」と山田先生は話す。「実は自動販売機は紀元前のエジプトから現在まで存在しています。自動販売機について考えることは、社会科の『過去から学んで未来につなげる』という学習にもつながります。技術・家庭科の学びから他教科への横断ということも念頭にありました」

企業の担当者にオンラインでプレゼンテーションを行う生徒
企業の担当者にオンラインでプレゼンテーションを行う生徒

 生徒は校内の自動販売機を観察して、その特徴や社会での役割などを考えたあと、どの問題解決に挑むかをグループごとに話し合って決めた。その後、グループのメンバーで協力して具体的な解決案を考え、模造紙に発表内容をまとめていった。プレゼンテーションではさまざまなアイデアが披露されたが、なかには人口が減少した町でも飲料の補充がスムーズに行えるよう、補充するトラックを地下に埋めるといった奇抜なアイデアも飛び出し、企業の担当者を驚かせたそうだ。

 プレゼンテーションに挑んだ生徒の様子について山田先生は、「生徒はとても緊張していましたが、それは一人一人が本気だったからこそです。また、クラスの予選会で負けてしまったグループの生徒が泣いている姿を見て、とても熱い気持ちでメンバーと協力して取り組んでいたのだと実感しました」と話した。

独自の授業から生徒が得る多くの気付き

 これらの授業を通して、生徒も多くの気付きを得たようだ。授業のあと、山田先生の元には「先生の授業を受けて、リサイクル素材の服を買ってもらいました」「海のプラスチックを集めて作ったボールペンを見つけました」など、生徒が報告に来るようになったという。

 中西先生は、「今後も各教科の特色を生かして、探究型の授業を進めていきたいです」と話す。「例えば、未来の自動販売機について考えると、生徒は普段から自動販売機に目を向けるようになり、『もっと、こうだったらいいな』などと考えるようになります。そのように、身の回りのさまざまなものにアンテナを立て、豊かな発想へとつながるきっかけを授業の中でつくっていきたいと考えています」

 山田先生は「これからも『触れて・感じて・表現する』という目標を僕なりに解釈し、どう授業に落とし込めば生徒たちを輝かせられるかを考え、授業を行っていきたいですね」と抱負を語った。

 (文:籔智子 写真:中学受験サポート 一部写真提供:玉川学園中学部)

 玉川学園中学部について、さらに詳しく知りたい方は こちら

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2559840 0 玉川学園中学部 2021/12/06 07:00:00 2021/12/06 07:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/11/20211130-OYT8I50011-T.jpg?type=thumbnail

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