独自の「探究総合」で自分の道が見えてくる…足立学園

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 足立学園中学校・高等学校(東京都足立区)は昨年度、調べ学習から一歩踏み込んだ授業「探究総合」を高校の必修科目として導入した。この授業は、答えのない課題に自ら取り組む探究力を養成するだけでなく、将来を考え、自分の生き方を見つめるキャリア教育にもなっている。また、海外研修も探究学習の一環として生徒の自立を促す役に立っているという。2年目を迎えた独自の探究学習について教諭と生徒たちの取り組みを紹介する。

答えのない課題に向き合うための「探究総合」

(左から)探究学習副責任者の飯山教諭、探究コース担任の三谷教諭、西巻教諭
(左から)探究学習副責任者の飯山教諭、探究コース担任の三谷教諭、西巻教諭

 同校は昨年度から、高校に「探究コース」「文理コース」「総合コース」という三つのコース制を導入し、同時に、探究能力を身に付けるため、「課題探究」と「進路探究」という2本柱から成る「探究総合」の授業を新設した。

 探究学習の副責任者である飯山泰介教諭は「一つの課題が解決すれば、また別の課題が出てくるのが世の中です。この授業は、そういった現実に対応できる思考力を養うのが目的です」と「探究総合」の狙いを説明する。

 1、2年次に週2時間設けられた「探究総合」の授業のうち、「課題探究」は既存の知識を活用して、新しいことを創造していく能力の育成に狙いがあり、「進路探究」は自己理解を深め、大学進学の先を見据えて将来を考えさせる目的がある。いずれも「いかに生徒に考えさせるか」を主眼とした内容になっている。

グループで「課題探究」に取り組む生徒たち
グループで「課題探究」に取り組む生徒たち

 三つのコースのうち、東京大学をはじめとする難関国立大学や海外の難関大学への現役合格を目指す「探究コース」は、特に「課題探究」を中心に学ぶカリキュラムになっている。

 高校1年次前半の「課題探究」では、グループごとに与えられた課題に取り組む。昨年度の最初の授業では、探究にあたって大切な心得を学んだ。その一つが言葉の定義付けで、各班が10分ほど話し合って結論を出した。「右」という課題には「縦書きの本を開いた時の、ページが若い方」「時計の3がある側」「アップル社のロゴマークのリンゴの欠けている側」などの答えが出たという。

 これらの回答について、国語教諭で探究コースA組担任の西巻洋太先生は「班によって全く違う解答が出ましたが、それでいいのです」とし、「抽象的な概念を説明することで、客観性や論理性の重要性を感じてもらえれば」と狙いを説明する。

 このほかにも、A4用紙を使って、3階の高さから落とす生卵が割れない方法を考える「エッグドロップ」という理科実験、新紙幣の肖像に選ばれる人の予想など、さまざまな課題に取り組む。

エッグドロップという理科実験に取り組む生徒たち
エッグドロップという理科実験に取り組む生徒たち

 9月の学園祭を境とする後半は、各自がテーマを決めて探究に取り組む。作業も基本的にはタブレットを使っての個人作業となる。

 探究コース2年B組の坂田光優(ひかる)君は「自分の好きなことをテーマにできるので、自主性を持って取り組めるし、自分が知りたいことについて調べられるから楽しい」と話す。野球部でピッチャーを務める坂田君の探究テーマは「相手打者に対する有効な球」。さまざまな問題を考えるうちに、探究の成果を実戦に生かして夏の大会を勝ち進もうと二つの問いを立てた。

 一つは「自分のピッチングスタイルに最も合った球種は何か」。坂田君がたどり着いた答えはスライダーだという。もう一つは「フォークとスプリットなら、自分が投げるのに適した球種はどちらか」。こちらはまだ探究中だが、「近いうちに答えを出したい」と話した。

 坂田君のクラスの担任である三谷淳教諭によると、「探究総合」の授業を始めた当初は、生徒から「こんなことをやって一体何になるんですか」という声もあったそうだ。しかし、1年ほどたった頃から、徐々に変化が出てきた。「探究総合の授業を受けてきた生徒は、授業でも面談でも、自分の考えをうまく説明して『なぜ』という問いに答えられるようになってきました」と手応えを話す。

 探究コース1期生に当たる44人の高2生は現在、それぞれのテーマに取り組んでいる。これから学園祭で中間発表を行い、来年2月には論文発表を行う予定だ。

松下政経塾で自分の「こころざし」を見つめる

 同校は探究学習の一環として2018年度末に、松下政経塾が高校生と大学生向けに行っている「こころざし探究プログラム」に参加した。自分がどうありたいか、何を成し遂げたいのか考え、その志を参加者の前で発表するものだ。

 三谷教諭が、このプログラムのことを知ったのは昨年の秋だった。「ちょうど個人探究のテーマを決める時期で、夢や目標を見つけられず、なかなかテーマを設定できない生徒のことが気になっていました」。プログラムの内容が「探究総合」にリンクしていることに加え、世のため人のために役立ちたいという志を重視している点が決め手となり、高1生全員で参加することを決めたという。

 今年3月、現在の高2生12人が参加した。探究コースA組の相澤涼君もその一人だ。引率した三谷教諭によると、相澤君は「平和な世界を作るために海外の大学に行って学び、外務省に行く」との志を発表したという。相澤君は「探究総合」について、「通常の授業は、誰か偉い人が発見・発明したことを覚える作業。『探究総合』でやるのは、まだ知られていないこと、なされていないことを探し、考えて、自分なりの答えを見つける作業。すごく面白いし、絶対に役に立つと思う」と生き生きと話した。

 相澤君の探究テーマは「市区町村の合併のメリット」。自身が住む千葉県松戸市に、20~30年前から柏市との合併話があることを知り、「合併したら何が変わるんだろう」という疑問が湧いたという。「いろいろ調べてきて、合併すべきだという結論になりつつあります。今、自分の考えていることが、将来、地元の政治を動かすことになれば」と話した。

モチベーションを高める海外研修

高1を対象とした約3か月間の「カナダ特別留学プログラム」
高1を対象とした約3か月間の「カナダ特別留学プログラム」

 また、グローバル教育も広い意味で探究学習の一環と位置付けられており、国際的な視野を養い、自立心を促す目的で、希望制の海外研修プログラムを三つ用意している。中1から参加できる2週間の「オーストラリア・スタディーツアー」、高1、2を対象とした2週間の「イギリス語学研修」、高1を対象とした約3か月間の「カナダ特別留学プログラム」だ。

 探究コース2年A組の鈴木翔大君は「カナダ特別留学プログラム」に参加し、この3月に帰国した。留学中に探究が遅れることが気になり、カナダでも探究を進めていたという。幼稚園から12年間茶道を習っている鈴木君の探究テーマは、「ヨーロッパに茶道を広めるために必要なこと」。茶道具を持参し、ホストファミリーに茶道の歴史や精神をプレゼンテーションしたという。英語力が十分でなく、きちんと伝えられなかったところもあったが、その反省もまた収穫になったそうだ。

 甘えられる家族のいない海外では、生活面でも自立する姿勢が養われる。鈴木君がホームステイした先は生活時間に厳格で、インターネットが午後11時までしか使えなかった。このため早寝早起きの習慣が付き、今でも毎朝4時に目が覚めるという。

 ほかにも、鈴木君と同様に帰国した後、早くも9月から2年間のカナダ留学を希望してビザ申請を進めている生徒、「英語力をキープしたい」と朝学習に英語で話す「スモールトーク」を提案する生徒、起業を決意して帰国した生徒など、高いモチベーションを抱くようになった生徒は多いという。

 予見が利かないこれからの時代にも、志を持って、やりたいことを探究し、大きく世界に視野を広げていけば、自分の道が見つかることだろう。

 (文:佐々木志野 一部写真提供:足立学園中学校・高等学校)

 足立学園中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

無断転載禁止
811201 0 足立学園中学校・高等学校 2019/09/25 05:21:00 2019/09/25 05:21:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/09/20190924-OYT8I50039-T.jpg?type=thumbnail

会員校一覧

東日本 共学校ページTOP

── 女子校ページTOP

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

 


東京オリンピックパラリンピックオフィシャル新聞パートナー

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)
ページTOP
読売新聞社の運営するサイト
ヨミダス歴史館
ヨミドクター
The Japan News
発言小町
OTEKOMACHI
ささっとー
元気ニッポン!
未来貢献プロジェクト
YOMIURI BRAND STUDIO
美術展ナビ
教育ネットワーク
活字・文化プロジェクト
よみうり報知写真館
読売新聞社からのお知らせ