【特集】コロナ禍をバネとしICT教育に新局面…足立学園

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 マイクロソフト社の「教育ICT先進校」認定を受けている足立学園中学校・高等学校(東京都足立区)は、これまで培ったICT(情報通信技術)のノウハウを生かし、新型コロナ感染に伴う休校中の学習に速やかなオンライン化で対処している。逆境への対応に頭を悩ませる中にも、教師の授業スキルが向上したり、生徒自身がICTの学びを発展させたりするなど、思わぬプラス効果も生じているという。井上実校長らに現状を聞いた。

社会で主流となっている機材に慣れさせる

「逆境が糧となり、これまでにないほど学内がまとまった」と話す井上校長
「逆境が糧となり、これまでにないほど学内がまとまった」と話す井上校長

 足立学園は現在、中2以上の生徒全員に、タブレットとしてもノートパソコンとしても使えるマイクロソフト社の2in1PC「Surface Go」を個人で購入して持たせ、学習や学内コミュニケーションに役立てている。

 ICT教育にアップル社のiPadを使う学校が目立つなか、WindowsPCを選んだ理由について、井上校長は「社会の主流となっているWindowsOSやOfficeソフトを、学生のうちに使い慣れるアドバンテージは高いでしょう。さらに、キーボードを使うスキルの必要性や保証・メンテナンス面も考慮し、マイクロソフト純正のSurface Goを選びました」と説明する。

 Windowsデバイスの導入にあたっては、まず2015年度に中2の1クラスに授業用として使用し、1年間検証したうえで、中2の全員に持たせた。その後、順次、中1以外の各学年に広げるとともに、5年がかりでWi-Fi環境も全館に整備した。

 導入当初の使い方は、Office365のファイル共有サービス「SharePoint」でクラスの掲示板を作って連絡などに活用するほか、電子黒板の学習支援ソフト「xSync」を使って、授業中に学習資料の共有、課題の配信や回収・添削を行うというものだった。

 しかし、電子黒板を中心とする使い方だと使用場面が教室に限られるし、学校にいない時も生徒とやりとりできる方がいいという考えから、マイクロソフト社の提案で、SharePointに代わる多機能ツール「Teams」を採用。さらに2018年度から、「Office365 Education」を導入した。これによって、各種のOfficeソフトを組み合わせて授業や自宅学習にも取り組める環境が整ったという。

学習のコミュニケーションの形が変わった

「動画授業の経験は教え方のスキルアップにもつながる」と話す杉山教諭
「動画授業の経験は教え方のスキルアップにもつながる」と話す杉山教諭

 新たに導入したTeamsは、ファイル共有を始めチャットやビデオ会議、通話などの機能を集約したツールで、教員や生徒間の対話や情報共有に便利だという。

 同校のICT教育をけん引する情報科の杉山直輝教諭は、「チャットという発言の形が加わることで、学習におけるコミュニケーションの形に変化が現れた」と話す。「通常の授業では、発言の多い生徒が注目されがちですが、チャットでは発言の順番やタイミングに関係なく、自分のペースで意見を表明できる。おとなしい生徒の発言を、他の生徒が『いいねボタン』で後押しするという展開も出てきています」

 井上校長によると、Teamsを教育ツールとして活用している学校はまだ多くないという。その理由については「ネット環境を過度に恐れる意識では」と話す。「他校に聞くと、『教員間の連絡には使うが、SNSで起きているようなトラブルが怖いので、生徒間の利用には踏み切れない』と言います。ですが、Teamsなら学校内で閉じたネットワークが構築でき、生徒の発信内容を学校側で把握できるため、きちんと管理監督すれば大丈夫と考えました。むしろ、一般のSNSに触れる前にICTリテラシーを磨ける利点も考えられます」。実際、Teams利用によるトラブルは発生していないそうだ。

 そのほか、アンケート作成アプリ「Forms」も活用機会が多いという。主に、授業中に実施する小テストの作成に使われている。杉山教諭は現場の立場から利便性を語る。

 「選択式問題や簡単な答えのテストなら自動採点ができます。私の授業では『今日の復習』アンケートを配布し、満点が取れるまで繰り返しやります。授業後には、内容を『分かった』『分かりにくい』などで評価する『振り返りアンケート』を実施し、生徒が取りまとめて教員に転送します。教員は自分の授業の問題点が把握でき、授業改善に役立ちます」

 同校のICT活用に対するマイクロソフト社の評価も高い。2016年度から同社の「教育ICT先進校」の認定を毎年受けており、20年3月には「Microsoft Showcase School」に、日本の中・高校としては初めて認定された。他校の見学や視察も度々受け入れている。

生徒自身が思わぬICT授業を発展させる

オンラインで行われたホームルーム
オンラインで行われたホームルーム
授業動画の長さは、生徒の集中力に配慮して1本あたり最長30分
授業動画の長さは、生徒の集中力に配慮して1本あたり最長30分

 新型コロナウイルスの感染拡大により、政府が全国の小・中・高等学校などに要請した臨時休校を受け、足立学園も学年末試験が終了した3月4日から休校に入った。同6日には、Teamsの会議機能を活用してホームルームを開始した。担任は連絡事項などをライブで伝え、質問や確認事項のある生徒はチャットで発言する。

 授業は当面の間、中・高ともに1日あたり主要科目3時間とし、担当教諭がMicrisoft365のビデオサービス「Stream」でアップした授業動画を、生徒は自分の時間の都合に合わせて視聴している。生徒の集中力に配慮し、授業動画の長さは1本あたり最長30分と決めた。大体10分程度にまとめる例が多いという。

 「時間割を設定してライブ授業を行うことも考えましたが、生徒も休校を利用して取り組みたいことがあるかも知れません。『自ら学ぶ』という本校の教育理念に照らし、いつ見ても構わないことにしました」と井上校長は話す。

 こうした動画授業の経験は、「教え方のスキルアップにもつながっている」と杉山教諭は話す。「他の教員の授業が見られるのは、参考になって良いです。他教科の授業をのぞいて授業連携のアイデアを得ることもあります。また、保護者が見ることも多いというので、『より良い授業を』というモチベーションにもなります」

 生徒が自ら工夫してICT授業を発展させる例もあるそうだ。「3月の2者面談で生徒が話してくれたのですが、複数の生徒が自宅で授業動画を同時に見ながら、スマートフォンでTeamsの通話機能を使って教え合うというネット勉強会をやっているそうです。想定外の生徒の発想に感動しています」

 現在ICTデバイスは中2以上が使用しているが、今回はオンライン授業の必要から新1年生の家庭に事情を説明し、自宅のWi-Fi環境整備と、Surface Goの購入か各家庭の機器による対処を要望したという。

 井上校長は「逆境が糧となった。各教員とも思いを新たにし、これまでにないほど学内がまとまっています」と、思わぬコロナ禍を前向きに受け止めている。さらに、「通常登校が始まった後も、ICTでできることは多いでしょう。例えば夏休みの講習をオンライン化すれば、帰省先や旅行先での受講も可能です。海外研修先とつないで現地のことを学ぶプレ研修もできそうです。教員や生徒のアイデアを集め、発展させていきたい」と、明るい表情で抱負を語った。

 (文:上田大朗 写真:中学受験サポート)

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1261249 0 足立学園中学校・高等学校 2020/06/08 05:21:00 2020/10/22 15:37:14 https://www.yomiuri.co.jp/media/2020/06/20200605-OYT8I50027-T.jpg?type=thumbnail

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