「働く大人ってカッコいい」職場体験が育む憧れ…市川

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 市川中学校・高等学校(千葉県市川市)は昨年から、中学2年生を対象とする職場体験学習を実施している。さまざまな職場を訪れ、大人たちが働く姿に接することで自分がなぜ今勉強しているかを自覚してもらい、「中だるみ」の時期を乗り切ろうという狙いがある。大手設計事務所を訪問した生徒たちの声を紹介するとともに、職場体験学習が生徒に与える影響などを聞いた。

「なぜ今勉強しているのか」考えるきっかけに

ドクターヘリの席に座る体験をした生徒たち
ドクターヘリの席に座る体験をした生徒たち

 市川中学校・高等学校は、中学2年生全員を対象として職場体験学習を実施している。生徒たちは、医療機関や証券取引所、設計事務所など、さまざまな職場で大人たちの働く姿を見て学んできた。

 昨年は、CSR(企業の社会的責任)活動として職場体験学習を募集している企業を選んで実施したが、今年は体験できる業種を増やすために、生徒の保護者が勤務する職場に積極的に協力を呼びかけたという。

 その結果、7月には5か所の医療機関、2か所の博物館、住宅メーカー、建築設計事務所、証券取引所、教育系出版社と計11の職場から協力を得て、のべ18回の職業体験学習を行うことができた。興味を持って、複数の職場での体験学習に参加した生徒もいれば、医療機関で手術の現場を見学し、ドクターヘリの席に座らせてもらうなど貴重な経験をした生徒もいるという。

 中2の学年主任である吉田康彦教諭は、「職場体験学習は2学期以降も予定していて、全員が1回以上は参加することになっています。中高一貫校では中だるみが指摘されますが、中2で実際に外に出て体験することで、世の中が抱えている問題を身をもって体験し、社会の一員としての意識を育て、なぜ今勉強しているのかを、考えてほしいと思っています」と狙いを話す。

仕事が社会貢献につながることを発見

日建設計でクールツリーについて説明を受ける生徒たち
日建設計でクールツリーについて説明を受ける生徒たち

 受け入れ先企業の一つ、東京都千代田区の「日建設計」には7月23日、生徒たち19人が訪問した。同社は東京スカイツリーや京都迎賓館など日本を代表する建築物を設計している国内でも最大手の設計事務所だ。

生徒たちは、千葉県柏市の再開発地域「柏の葉スマートシティ」に設置されている「COOL TREE(クールツリー)」の設計など、同社のさまざまな取り組みについて説明を受けた。

 「クールツリー」は、ヒートアイランド対策として開発されたクールスポット。国産ヒノキ間伐材を組み合わせた格子状の日除(ひよ)け屋根の下にベンチを設置した東屋のような構造だ。このベンチは座ろうとして人が近付くと、センサーが働いてミストが噴出する。また、金属製の座面は、「ペルチェ効果」と呼ぶ吸熱反応を利用し、座るとひんやりする感触が味わえる。都会にいても森林浴をしているような気分を体感できるという。

 説明を聞いた平井清翔君は、「クールツリーは一見、簡単な作りに見えたけど、デザインだけじゃなく、使いやすさや環境も考えて作られていて、すごいと思いました」と話した。

 また、サツマイモの葉の蒸散作用を利用して、空調設備の室外機周辺の空気を冷却し、運転エネルギーを軽減する「室外機芋緑化システム」についても説明を聞いた。

 水沼峻君は、「自然から学んでヒートアイランド対策をしていて驚きました。調べる前は建築する会社だと思っていたけど、実際には設計する会社で、自分はまだまだ知らないことが多いんだと実感しました」と話した。

 平井君は、「みんなが働いて、人のために役立って、それで社会ができている。大人が働くことが社会の基盤を作っているんだと考えると、自分もそういう人になりたいと思いました」と言う。

 生徒たちはそれぞれに仕事と社会貢献のつながりを発見し、自分の将来の進路にも思いを致していたようだ。

 「日建設計」は、この日訪問した生徒の一人、塚見舞衣子さんの父親の勤務先だ。この日も塚見さんの父親が生徒たちの案内を引き受けたという。

 「お父さんは家ではのんびりしているので、仕事をしているイメージがあまりありませんでした。でも、実際に仕事をしている姿を見ると、カッコよく思えて誇らしい気持ちになりました」と塚見さんは照れくさそうに話す。

職場体験学習のプレゼンテーション
職場体験学習のプレゼンテーション

 また、塚見さんは「仕事とは堅苦しいものというイメージがあったのですが、大人同士で和気あいあいと楽しそうに働いていて、憧れに変わりました」という印象を話した。水沼君も同様だ。「設計事務所というと、堅苦しい感じだと思っていたのに、設計事務所の方たちと話をしたらイメージが違って驚きました」と話す。「大人同士でコミュニケーションを取って楽しそうに仕事をしているところに引かれました」と、やはり憧れを感じたようだ。

 3人の生徒たちは、この日の体験や感想をパワーポイントにまとめ、9月の朝会で、約8分間にわたって堂々とプレゼンテーションしたという。同校は現実社会と連動しながら生きる力を育むため、アウトプットを中心としたアクティブラーニング型の授業を行っており、こうしたプレゼンテーションもその一環となっている。

 吉田教諭は「生徒たちは発表の場を与えると力を発揮してくれます。独自の資料を駆使した素晴らしいプレゼンでした」と評価した。

職場体験で得た気付きを糧として成長する

 職業体験学習の後は、参加者全員がリポートを提出した。吉田教諭は、そのリポートを読み、実際に行ってみて自分の視野が広がったと気付かされる生徒が多かったと見る。

「なぜ今勉強しているのかを考えてほしい」と話す吉田教諭
「なぜ今勉強しているのかを考えてほしい」と話す吉田教諭

 「証券取引所に行った生徒の中には、経済や株式の仕組みを知ってお金の動きや経済に興味を持ち、起業家になりたいという感想を書いた生徒もいました。訪問介護施設に行った生徒は、『声のかけ方のちょっとした違いで患者さんの笑顔が見られる』という気付きを書いてきました」

 「この職業体験学習に行くと、大人も日々勉強していて、日々新しいものを創造しているということに気が付きます。その気付きが本校の第三教育の理念にもつながっていきます」と吉田教諭は話す。

「第三教育」とは同校の教育理念の一つだ。第一教育は家庭によるもの、第二教育は学校によるもの、第三教育は自分自身によるものであり、人は生涯自ら学び続けて成長するという考え方だ。

 「中2の間にこうした体験を積み重ねていくことで、生徒は自らを作っていきます。それが中3、高1になった時に、短期留学やエンパワーメントプログラムなど自分から外の世界へ飛び出していく素地になればと思っています」

 職場体験学習を通して生徒たちは、仕事と社会貢献のつながりを学び、将来の自分を働く大人たちに重ね合わせたに違いない。その憧れを糧として大きく成長してほしい。

 (文:小山美香 写真:中学受験サポート 一部写真提供:市川中学校・高等学校)

 市川中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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913080 0 市川中学校・高等学校 2019/11/26 05:22:00 2019/11/26 05:22:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/11/20191122-OYT8I50020-T.jpg?type=thumbnail

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