読売新聞オンライン

メニュー

ニュース

動画

写真

スポーツ

コラム・連載・解説

発言小町

漫画

教育・受験・就活

調査研究

紙面ビューアー

その他

サービス

読売新聞のメディア

購読のお申し込み

読売新聞オンラインについて

公式SNSアカウント

【特集】知的興味かきたてる教科の枠越えたコラボ授業…市川

メモ入力
-最大400文字まで

完了しました

 SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校として、今年で5年目を迎えた市川中学校・高等学校(学校法人市川学園、千葉県市川市)。先進的な理数教育とともに、創造性や独創性を高める指導に意欲的な同校では、教科の枠を越えた“コラボ授業”を展開しています。同時期に同題材で2教科以上の授業を行う“教科間のコラボレーション”によって、多角的な学びの姿勢や創造力の向上が期待できます。今回は「なずな」を題材にした、理科と国語のコラボ授業を取材してきました。

理科で学ぶ「ナズナ」の生態

まずは教室で基礎知識を確認して
まずは教室で基礎知識を確認して

 芭蕉の句「よく見れば なずな花咲く 垣根かな」を学園の理念に、個性重視を教育の礎とする市川学園。これを「よく見れば精神」といい、生徒たちは入学時に古賀正一理事長からのメッセージで知る。学園とゆかりの深い「なずな」を題材にしたコラボ授業を受けるのは、入学したての一年生だ。

 取材1回目は理科。授業冒頭、担当の日浦要先生が「よく見れば……」と呼びかけると、生徒が続く句を暗唱する。理科では、ナズナ(理科は、生物名としてカタカナ表記)の生態や植物の観察方法について学ぶ。

 屋外観察を前に生徒に配布されたプリントには、ナズナの分類学、生態学、形態学から、ナズナを取り巻く自然環境や文化史に至るまで詳細に記されていた。

 「このプリントは、中学1年生にとっては、とんでもなく難しいんです」と日浦先生は言う。

 「今回の授業だけを意図にして用意した資料ではなく、“大学生になって読み返しても、役立つものであること”がコンセプト。授業ではむしろ、プリントの内容をかいつまんで教えているんですよ」

教室内では、ナズナが平安時代に渡来した外来種であることや、一年草であることなど基本的な事柄に加え、ルーペの使い方や今回の観察のポイントが説明される。ルーペを配布された途端、早く観察に出掛けたくてソワソワする生徒の様子が微笑ましい。

観察する姿は「よく見れば精神」そのもの

自然豊かな郊外に建つ市川学園は、その立地を生かした野外学習に積極的だ。学校近くの貯水池で野鳥観察をしたり、近くの動植物園を訪ねることもあるという。今回は、学校脇にある畑周辺でナズナを探す。

 どこにでも生えている印象だが、ナズナは種が遠くまで飛来しないことから、ある程度かたまって群生している。生徒たちは、毎日通学路として通り過ぎる道の端でナズナを探し、見つけると、ハート形の葉にルーペをかざす。

 「ぺんぺん草で遊んだけれど、じっくり見たのは初めて」「葉の中にある種がベトベトして、アブラムシみたい」……みんなの好奇心は次第に高まり、手元でよく見ようと、ナズナを抜き始める生徒も。それを見て、「皆が摘んだら学校を象徴するナズナが絶滅しますから、そのままの状態で観察しましょう」と先生が冗談まじりに注意する。ドッと笑いが起こり、生徒たちは地面に顔をつけるように体を丸めて、道の端に生えるナズナに目線を合わせた。

 「葉の付き方にも重要な情報があるよ」「見る物が動かないなら、自分が動いてみなさい」「ほかにも春の七草が生えているか、探してみよう」。

 あちこちに散らばって熱心に観察する生徒たちに、日浦先生が声をかける。

職員室に用意されていた予備のナズナ
職員室に用意されていた予備のナズナ

 晴天に恵まれたこの日は、絶好の観察日和だった。ただ教員室には、悪天候の時のために、長野県から土ごと運んできた元気なナズナが準備されていた。「どんなふうにナズナが生えているかをまず、じっくり観察してもらいたかったからです。それが理解への第一歩になります」と日浦先生は言う。

知識の応用が自然にできるように

 教室に戻ると、「葉っぱを開いて種を見るのが大変だった」「学校に由縁があることは知っていたけれど、観察したらもっと親近感が湧いた」と興奮気味の生徒に、学校周辺の白地図が配布される。学校周辺で、ナズナがどこに生えているかをマッピングする宿題だ。

 「レポートの出来をみて、それをさらに展開していくことができたら」と日浦先生は言う。

 「コラボ授業は、自分が教えたことが多方面に広がる可能性があるので、教師にとっても面白い試みです。知識をその教科でしか活用できない子もいるので、学んだことを他へ広げていく発想の転換、応用する力や視点が身につけば、教える側も嬉しいですね」。

国語で知る、創設者の願い

 理科の取材から1週間あまり。2回目に訪ねた時は、国語の授業を見せてもらった。担当の都筑靖先生は市川学園の卒業生。ユニークな授業で授業参観に訪れた保護者にも好評だという。

理科に続いて国語の授業を取材
理科に続いて国語の授業を取材
電子辞書を使う生徒も多い
電子辞書を使う生徒も多い

 国語も、冒頭は芭蕉の句の確認から始まった。続いて、理科で学んだことを生徒が発表する。大体の答えが出たところで、「なずなはどういう漢字?」と都筑先生が問いかけた。生徒の多くが答えられず、各自辞書を引き始める。生徒が使う辞書は、書籍と電子辞書が半々だ。その光景に、“何を使うか”より、“すぐに辞書で調べる”習慣を身につけることが大切だと改めて痛感した。なずなを漢字で書くと「薺」。答えがわかった時点で、プリントが配布された。 

 「授業には必ず目標があります」と言う都筑先生。今回の授業は、俳句(よく見れば 薺花咲く 垣根かな)への理解を深めることと、市川学園の建学の精神「よく見れば精神」への理解を深めることが目標だ。

 プリントには、「いつ作られたのか」「どこで作られたのか」「作者はどのような気持ちだったのか」などの質問が並ぶ。俳句についての何の説明も、前フリもなく、「じゃあ、記入してください」と都筑先生が言い、生徒のほとんどが書き終えたところで、各々の回答が発表された。

 “いつ作られたのか?”……「江戸時代」「16世紀」「元禄時代」「2月から6月頃」……さまざまな意見が出たところで、都築先生が言う。「“いつ”という問いかけなので、いろんな答えが出ますね。でも、まだまだ発想の幅が狭い!」。それを聞いた生徒から、さらに「昼ごろ」「朝」という答えが出てきた。

 この国語の授業には、発言する際にルールがある。挙手して指された生徒は、まず結論を言う。そして「なぜならば……」とその理由を展開する。

 史実としての年代は明確だ。そこからさらに、「朝です。なぜならば、朝、顔を洗った時に、下を向いたらなずなが目に入ったから」「お昼です。道ばたに座ってお弁当を食べる時に、なずなに気づいたから」と、生徒達の想像はどんどん膨らんでいく。

 “どこで作られたのか”という問いに、「誰かの所有地のそば」と答える生徒がいた。「なぜならば、垣根は敷地を区切るものなので」。自由な発想は、聞いているだけで面白い。黒板を埋める生徒の回答は実にさまざまだ。「草むらで作ったと思います」と生徒が答えれば、「くさむらって、漢字を調べてみて」と即座に辞書を引かせる。「叢は常用漢字ではないけれど、読めるようにしておきましょう」と都築先生。どんどん頭をめぐらせていかなくてはならない、スピーディーで濃密な展開だ。“作者はどのような気持ちだったか”という問いには、「発見して気持ちがいい」「なずなの懸命さに心が動いた」などの回答があった。

 授業は「なぜこの句が建学の精神となったのか」を記入、提出させて終わった。句の成り立ちから作者の気持ちまで想像することで“市川学園の創立者がなぜこの句を選んだか”を生徒たちはそれぞれ考えたことだろう。そして、結果はそのまま、各自の心に刻まれるのではないだろうか。

ユニークな授業が人気の都築先生
ユニークな授業が人気の都築先生

 とうとう最後までこの俳句についての、いわゆる“模範解答”的な説明はなかった。理由を都築先生に伺うと「俳句は、最初から“これが答えだ”という勉強の仕方ではいけないんです。作者が何を感じ思っているかを想像することが大切ですから。色々な答えが出て来てくるべきです」という答えが返ってきた。

 「最初に結論を言わせ、次にその理由を話す。これができれば、おかしなことを言っても、他の生徒は笑ったり冷やかしたりせず、しっかり聞こうとするんです」。

 今回の取材に同行して下さった広報担当の高田敏行先生は、「理科的アプローチと国語的アプローチが出来るのが市川学園の生徒です。この他にも、国語×音楽で合唱祭の作詞、国語×社会×数学でディベート大会など、多くの教科でコラボしています」と言う。SSH指定期間は5年間、市川学園は今年が最後の1年になる。

 「もちろん、今後もSSH指定校であり続けるために色々な試みを考えていますが、もしSSH指定校でなくなっても、このコラボ授業は、カリキュラムとして組み込んでいきます」。

 (文と写真:小林由佳)

 掲載日:2013年5月28日

 市川中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

無断転載・複製を禁じます
1764676 0 市川中学校・高等学校 2021/01/12 17:25:00 2021/01/12 17:25:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/01/20210108-OYT8I50012-T.jpg?type=thumbnail

会員校一覧

東日本 共学校ページTOP

── 女子校ページTOP

西日本ページTOP

ピックアップ

読売新聞購読申し込み

アクセスランキング

新着クーポン

NEW
参考画像
お買い上げ金額から10%OFF
NEW
参考画像
1ドリンクサービス(お一人様1杯)
NEW
参考画像
1,000円以上お買上げの方に「とうきび茶」プレゼント
NEW
参考画像
「ふぞろいの牛タン・切り落とし」一品プレゼント!
NEW
参考画像
ファーストドリンク一杯無料

読売IDのご登録でもっと便利に

一般会員登録はこちら(無料)