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【特集】「ユークリッド原論」を読み解き、考える力を身に付ける…市川

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 市川中学校・高等学校(千葉県市川市)では、幾人もの教師が放課後を利用して、ゼミ形式の特別講座を開催している。その中でも古代の数学者ユークリッドの「原論」を読み解く、中1生対象の「原論ゼミ」は、一昨年から続いていて名物講座となっている。古代から伝わる数学に目を輝かせて取り組む生徒たちの様子を取材した。

「思考する」ことを重視したゼミ形式の講座

「原論ゼミ」の狙いについて説明する秋葉先生
「原論ゼミ」の狙いについて説明する秋葉先生

 「本校の数学の授業は、単に計算して答えを出すのではなく、『思考する』ことを重視しています。一見当たり前のように思えることから課題を発見し、自分の言葉で論証してほしいのです。中1では2学期から図形について学ぶことから、ユークリッドの『原論』を題材とするのがよいのではないかと考え、放課後週1回、『原論ゼミ』を実施しています」と、特別講座を担当する数学科主任の秋葉邦彦先生は話す。

 同校では、こうしたゼミ形式の特別講座が、教科または学年単位で随時開催されており、ほかにも、高2で行われる沖縄修学旅行のために、高1で「沖縄ゼミ」を開催したりしているそうだ。

 「原論ゼミ」のテキストとして使用される「原論」は、紀元前3世紀頃の古代エジプト・アレクサンドリアの数学者ユークリッドの著書であり、幾何学や数論など当時の数学を集大成したものだ。以来、2千数百年にわたって読み継がれ、その内容は今日でも平面幾何学などの基本をなしている。「西洋では、聖書の次に広く読まれている本と言われています。数学の歴史に親しむよい機会になるのではないかとも考えました」と秋葉先生は話す。

 秋葉先生は一昨年からこの「原論ゼミ」を開催しており、昨年は10月に中1の各クラスに告知したところ、十数人の希望者が集まった。昨年は女子も含まれていたが、今年は全員が男子だ。授業で学ぶ内容に直結しているわけではなく、大学受験を意識したものでもないが、皆「数学が好き」という思いから集まってくるという。

 「毎回、発表担当の生徒を決め、事前に準備をしてきます。当日は担当者の発表を皆で聞いて質疑応答するという、完全に大学のゼミ形式の講座です。私は質問したり自分の考えを言ったりして、口をはさむだけです」

難解な文章で書かれた証明を自分の言葉に

受講生は、証明の仕方を自分で整理して発表する
受講生は、証明の仕方を自分で整理して発表する

 2月24日、放課後の午後3時半から進路指導室で始まった「原論ゼミ」の様子を見てきた。部屋に入るとすでに発表担当の生徒たちが、その日のテーマとなる命題と自分で考えた証明の内容を黒板に書き出している。今日の参加者は12人だ。

 生徒たちがテキストに使っているのは、ギリシャ語原典から日本語に訳した「ユークリッド原論 追補版」(共立出版)だ。「原論」では、いくつかの定義と公準、公理を基に数学上の命題が証明されていくが、古代の本だけに証明の仕方も特別な記号を使ったりするのではなく、図と普通の文章で説明していく。それがかえって分かりにくく、日本語で書かれたテキストであるにもかかわらず、一読しただけでは簡単に理解できない。

 「Γ(ガンマ)、Δ(デルタ)といったギリシャ語のアルファベットの読み方から覚えなければなりません。また、ユークリッドの時代には=(イコール)のような記号がまだありませんから、『〇〇は××に等しい』といったように、すべて文章で説明されているんです」

 生徒たちは難解な文章で書かれているユークリッドの証明を、皆に分かりやすいように自分の言葉で説明していく。

 この日発表した中嶋(りく)()君が取り組んだのは、「すべての三角形においてどの2辺をとってもその和は残りの1辺より大きい」という第1巻、命題20の証明だ。この証明には、直前の命題19「すべての三角形において大きい角には大きい辺が対する」が定理として使われていて、とても読み流せるような内容ではない。

 そこで中嶋君は(1)(2)(3)と数字を振りながら証明内容のステップを整理し、図で示しながら筋道立てて説明していった。途中、「ここまで、いいですか」と、聞き手に確認しながら先へ進めていく。秋葉先生からは「この証明の肝はなんだろう?」「ステップ2は何のためにあるのかな?」といった質問が出され、生徒たちは互いに話し合いながら答えを考えていく。また、「黒板じゃなくて、皆のほうを見ながら話して」「図を描きながら説明するといいよ」というアドバイスも飛んだ。

 この日は1時間半ほどかけて4人が発表を行ったが、数学の命題を証明する練習であると同時に、人前で発表する、仲間と話し合って答えを見つけるといった活動にもなっているようだった。

自分で考える力を身に付ける

生徒たちは「数学が好き」という思いから集まってくるという
生徒たちは「数学が好き」という思いから集まってくるという

 参加した布田(ふだ)晄一(あきひと)君は、「当たり前に思えることを、一から説明していくのが難しいですね。でも、これを続けてきたおかげで、普段の数学の授業で解く問題を、自分なりに発展させて考えることができるようになりました」と話した。

 数学部部員でもある(あし)()龍斗(りゅうと)君は、「簡単な証明なら、15分くらいで書けます」と言う。「証明して問題を解くことを覚えると、普段の勉強でも、疑問に思ったことを自分で解決できるようになります」。今は趣味でコンピューターゲームのプログラミングをしたりしているそうだ。

 山内(みつ)()君は、「僕は根っからの人見知りなんですが、このゼミで、同じことに興味を持つ仲間ができました」と言う。「小学校の時は勉強で忙しかったんですが、中学に入って、好きなことが思いっきりできるようになりました。『日本野鳥の会』に入って、銚子までカモメを見に行ったりしています」

 この特別講座に大学受験対策の位置付けはないというが、今年から始まった大学入学共通テストの数学では、産業別の「就業者数割合」について文章で語る問題なども出題されている。「自分で考える力が付くと、現実社会の問題に数学でアプローチすることが、より身近に感じられるようになるはずです」と、秋葉先生は話す。

 今年は新型コロナウイルス感染に配慮し、中1だけを集めた少人数での開講となったが、新年度からは中2と中1が一緒に参加できるようにする予定だ。「今年の生徒たちが下の学年の生徒たちを引っ張って、皆で質問し合い、互いに意見を交わし合いながらより数学への理解を深める。そういう場にしてほしいですね」

 (文:足立恵子 写真:中学受験サポート)

 市川中学校・高等学校について、さらに詳しく知りたい方はこちら

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1948423 0 市川中学校・高等学校 2021/03/31 05:01:00 2021/03/31 05:01:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2021/03/20210330-OYT8I50011-T.jpg?type=thumbnail

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