グローバル人材を育てる「自問自答」の力…二松學舍柏

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 二松學舍大学附属柏中学校・高等学校(千葉県柏市)は、グローバル人材の育成を目指し、「自問自答」をキーワードとした独自の教育を実施している。中学の3年間、さらに高校へと段階を踏み、身近な環境から世界へと目を向けていくユニークなカリキュラムについて、島田達彦副校長らに聞いた。

地元から世界へと見聞を広げる

「自問自答」の教育を推し進める島田副校長(左)と山﨑教諭
「自問自答」の教育を推し進める島田副校長(左)と山﨑教諭

 同校の源流である漢学塾「二松學舍」は1877年、「己を修め人を治め、一世に有用なる人物を養成する」を建学の精神として創立された。

 現在も二松學舍大学の建学の精神として守られているこの言葉について、島田達彦副校長は「今で言うグローバル人材の育成を目指す発想があります」と解釈する。「創立者の三島中洲(みしまちゅうしゅう)先生は、幕末から明治期に活躍した漢学者ですが、洋学も積極的に学び、海外との貿易を構想しました。一方で安易な文明開化に異を唱え、『自国の文化を正しく身に付けた上で、西洋の優れた文化を理解、吸収すべき』と主張しました。これこそ真の国際人の姿であり、本校の目指す教育のあり方です」

 同校は「真の国際人」であるためには、自ら課題を見つけて主体的に考え、さまざまな人々と協力して解決方法を探る能力が欠かせないと考えている。この力を養うための独自の教育システムが、「自問自答」プログラムだ。

 「自問自答」プログラムの柱は、同校の理念や立地環境を足がかりに構築したアクティブラーニングにある。地元から日本文化、海外の文化へと見聞を広げつつ、自らテーマを設定し、クラスメートとの協働作業を通して、導き出した答えをプレゼンテーションしていく。このプロセスが学年を追って高度化していく仕組みになっている。

 「自問自答」のベースとなる多角的な視野を養うため、同校は中学3年間にわたってさまざまな校外学習を用意している。

中2生は「古都の教室」で日本の伝統文化に触れる
中2生は「古都の教室」で日本の伝統文化に触れる

 1年次の「沼の教室」では、学校の近くにある手賀沼を教材に、地域の歴史、自然、水事情などを学び、「田んぼの教室」では田植えや稲刈りを体験する。2年次の「古都の教室」では京都・奈良の研修旅行を通して日本の伝統文化に触れる。3年次の「世界の教室」では、シンガポール・マレーシアへの修学旅行で、現地の生徒たちと交流するほか、平和教育の一環として現地の戦争記念館を訪れる。また「沼の教室」の延長として、シンガポールの下水処理施設を紹介する「ニューウォーター・ビジターセンター」を見学する。さらに各学年で「都市の教室」として東京の博物館などを訪ね、知見を広げる。

 1・2年次の校外学習の成果はグループワークによってプレゼンテーション資料にまとめる。3年次にはそれまで蓄積した知識や思考力を駆使して、一人一人が自由テーマで「探究論文」を執筆する。9月の文化祭で「自問編」としてテーマの表明と中間報告を行い、学年末に「自答編」として全学年生徒と保護者の前で最終プレゼンテーションを行うのが流れだ。

 「自問自答」する主体的な学びをサポートするため、ICT機器も早くから導入した。生徒全員が専用のタブレット端末を持ち、授業のほか自主学習の調べ物やプレゼンテーション資料の作成に活用している。学習の成果や活動を記録する「e‐ポートフォリオ」の作成や、各授業を生徒が評価するアンケートなどにも使われる。さらに学校図書館の一部蔵書を電子書籍化した「電子図書館」を利用する際にも閲覧端末となる。

 これらの学びと同時に同校が重視しているのが、創立者以来の漢学の流れをくむ「論語」教育だ。中・高各学年で週1時間、「論語」の素読や暗唱などを行う。「国や時代が異なっても変わらない、人のあるべき姿を、『論語』を通して学びます。授業では、よく引用される章句を多く取り上げているので、社会に出てからのコミュニケーションにも役立ちます」と島田副校長は話す。

他者との対話から思考力・判断力・表現力が育つ

「世界の教室」として行われるシンガポール・マレーシアへの修学旅行
「世界の教室」として行われるシンガポール・マレーシアへの修学旅行

 同校の教師たちは「自問自答」をどうとらえているのだろう。中1の国語を担当する山崎貴大教諭は「それは自分に向き合うことです。そのために必要なのは、他者との『対話』です」と強調する。

 「先生や友人との対話はもちろん、校外学習で出会う専門家や関係者との対話、そして毎朝行っている3大新聞のコラムを教材とした学習も、一種の対話と言えます。こうしてさまざまな考えや知識に触れ、自分が何者か、何を考えているのかを知る。そこから思考力・判断力・表現力が育ちます」

 「対話」の学びを積み重ねることで、プレゼンテーションの質も年々向上していくという。「1年の頃は、発表用のスライドの文は長く、スピーチも棒読みが多い。それが2年になると、相手への伝わりやすさを考え、スライドの文は短いキーワードがメインになり、図表や写真、矢印なども使うようになる。3年では効果的なスピーチを意識し、メモや資料をなるべく見ず、重要なところを強調するなど工夫して話すようになります」

 中3で執筆する「自問自答」の論文は、毎年「探究論文集」にまとめられる。この論文集もまた、学年を超えた「対話」につながる。

 「自分が取り組むテーマの先行研究を過去の論文集で探し、内容を発展させる生徒がいます。数年前に『サイコロのそれぞれの目が出る確率は本当に6分の1か』を検証した論文がありましたが、後の学年では出目の偏りがゼロに近い精密なサイコロに着目し、材質や作り方の違いを研究した生徒が出ました。また、同じ確率のテーマから『じゃんけんの勝率は本当に3分の1か』に着目し、大学論文やアイドルグループAKB48の『じゃんけん大会』の経過を調べ、心理学・脳科学的な考察を加えた論文も出ました」

 類似のテーマに取り組んだ先輩に直接話を聞いて、自分の研究を深めたケースもあるそうだ。

主流に育ってきた5年目の「グローバルコース」

「ニューウォーター・ビジターセンター」で下水処理施設について学ぶ
「ニューウォーター・ビジターセンター」で下水処理施設について学ぶ

 「自問自答」を通しての「グローバル人材の養成」という教育理想に、特に力点を置いているのが、2015年度に設置した中学の「グローバルコース」だ。

 このコースでは、校外学習やアクティブラーニングに加え、週2時間、「SDGs(持続可能な開発目標)」をテーマにした個人・グループ研究のプログラムを実施しており、そのための学習機会として、国際協力機構(JICA)の事務所や国際連合児童基金(UNICEF)の活動を展示した「ユニセフハウス」、カナダ大使館などの見学を行う。研究成果は、年2回の「自問自答」発表会の際に別会場でプレゼンテーションしている。

 英語の学習にも力を入れ、福島県の「ブリティッシュヒルズ」での研修や夏・冬休みの英会話集中プログラム、オーストラリアでのホームステイ、フィリピン・セブ島での約1か月の語学研修、カナダへの約2週間の短期留学なども実施している。

 「グローバルコース」の生徒の多くは、高校の「スーパー特進クラス」に進む。オンラインで外国人講師の指導を受けるスピーキング・ライティングレッスンや、8ページ建ての英字新聞制作、「探究論文」を発展させた英語プレゼンテーションに挑戦する中で英語4技能や「自問自答」力に磨きをかける。

 「グローバルコース」は初年度7人でスタートしたが、生徒数は増加傾向にあり、今年度の1年生は24人となった。20人前後の生徒が在籍する「特選コース」「選抜コース」を上回って、同校の主流コースに育ちつつあるようだ。

 「文化祭の発表の他に、夏休みに地元の小学生に向けて行う自由研究のワークショップで、グローバルコースの生徒がプレゼンを行う機会があります。彼らの堂々としたプレゼンぶりに、『うちの子も』と思われる保護者の方も多いようです」と島田副校長は目を細める。

 漢学を柱として世界の中の日本を見つめ直そうとした創立者の理想は、同校のユニークな「自問自答」プログラムによって花開きつつあるようだ。ここからどんなグローバル人材が育つか、期待は大きい。

 (文・写真:上田大朗 一部写真提供:二松學舍大学附属柏中学校・高等学校)

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