60年の伝統つなぐ…ダンスが彩る「聖園祭」

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親子連れでにぎわう聖園祭
親子連れでにぎわう聖園祭

 猛暑と大雨に見舞われた夏が過ぎ、芸術の秋を迎えた今、各地の学校では文化祭が最盛期を迎えています。

 学校のカラーが色濃く反映される文化祭は受験生や保護者にとっても、志望校の様子を知る大きなチャンス。神奈川県藤沢市にあるカトリック校「聖園女学院中学校・高等学校」(清水ますみ校長)の文化祭「聖園祭」のメーンは、毎年フィナーレを飾る創作ダンス「ファウスト」です。60年以上も受け継がれる伝統のダンスと、生徒と保護者が一体となった文化祭を取材しました。

女子校らしい華やかさがいっぱい

 取材に訪れたのは、聖園祭2日目の9月22日。昼前に校舎内へ入ると、講堂や各教室で部活動や有志団体が様々な催しを行っており、すでに親子連れで大賑わいだった。

 催しで特に目を引いたのが、手芸部の展示だ。「第23回ホビー大賞」の特別賞に輝いたという「最後の晩餐」は、クロスステッチ刺しゅうによる作品。

クロスステッチ刺しゅうによる「最後の晩餐」
クロスステッチ刺しゅうによる「最後の晩餐」

 ホビー大賞は手芸や模型制作など、手づくりの創作活動を行っている愛好家や団体、学校を対象としたもので、「最後の晩餐」は完成までになんと、10年余りをかけたというから驚きだ。

 受賞理由にも「ミッション校ならではの大作。一針一針に込めた思いが先輩から後輩へ引き継がれた」とある。90種類の刺繍糸を使い、きめ細かな図案を先輩から後輩へと受け継いで完成させた作品は、文字通り時間の重みを感じさせる。

 女子校らしいといえば、演劇部のシェークスピア劇「オセロ」の上演と、ダンス部の公演「Friendship-絆の物語-」も最後まで目を離せなかった。出演者は高校2年生まで。きらびやかな衣装と、工夫を凝らした舞台美術が、華やかさの中に厳かな雰囲気さえ醸し出している。

演劇部のシェークスピア劇「オセロ」
演劇部のシェークスピア劇「オセロ」
ダンス部の公演「Friendship-絆の物語-」
ダンス部の公演「Friendship-絆の物語-」

 カトリック校ながら、日本の伝統を受け継ぐ弓道部や剣道部も元気だ。弓道部の演武会では、武道特有の美しい所作を披露する。精神を集中させ、放った弓がピシッと的を射ると、見物席から心のこもった拍手がわきあがった。

 部長の奥田麻衣さん(高2)は「凛とした袴姿にあこがれて入部してくる人が多いですね。心の鍛錬と、周囲の人に支えられているという感謝の気持ちを大事にしていきたい」と語った。

真剣そのものの試合を見せる剣道部
真剣そのものの試合を見せる剣道部

保護者も大活躍

 ここの文化祭の特徴は、保護者たちも積極的に参加することだ。

 「すみれ」「ばら」などと名付けられたクラス名の教室で開かれる発表会や模擬店には、お母さん方の姿が目立つ。「制服リサイクルの会」では、小さくなったり、穴が開いたりしたブラウスを修繕して展示、必要な生徒と制服を交換する光景も。ある母親は「長女が中1に入学した時から参加し、ボランティアで続けています。少しでもお役にたてばうれしい」と話してくれた。

 保護者たちの催しのなかでも、毎年好評を博し、行列ができるのが「お父さんの焼きそば屋さん」だ。講堂前広場に張ったテントに、この日も午前11時過ぎには50人以上のお客さんが並んだ。1パック300円の焼きそばが飛ぶように売れ、2日間で何と1100個以上を売り上げたという。汗だくになりながら焼きそばの調理作業に当たっていた父親の一人は「すごい人気ですね。作る方も思わず力が入ります」と笑顔で話してくれた。

保護者たちも積極的に参加
保護者たちも積極的に参加
毎年好評の「お父さんの焼きそば屋さん」
毎年好評の「お父さんの焼きそば屋さん」

 売上金は社会福祉活動を行う「カリタスジャパン」などの機関に寄付される。教頭の鳩憲子先生によると「支援を必要としている世界の子どもたちや日本の老人ホームへ分配されている」という。

汗だくになりながら焼きそばを作る
汗だくになりながら焼きそばを作る
軽食も人気を博していた
軽食も人気を博していた

一糸乱れぬ舞で観客を魅了

 昼過ぎになっても、会場の賑わいが収まる様子はない。それもそのはず。来場者のお目当ては、聖園祭のフィナーレを飾る創作ダンス「ファウスト」の公演なのだ。

「ファウスト」が観客たちを例年惹きつけてやまないのには理由がある。

 同校は1948年、学制改革に伴って名称を変更するとともに中学校を併設して発足した。その時、第1回卒業生が文化祭で後輩たちに披露したダンスが、ゲーテの戯曲をフランスの作曲家グノーがオペラ化した「ファウスト」だった。

 国内の学校にダンス教育を取り入れた先駆者で、東京五輪の開会式で集団演技の全体指導にもあたった戸倉ハルさん(故人)が振り付けをしたものだという。以来、そのダンスが代々受け継がれ、今年で63回目を迎えた。まさに同校の歴史そのもののダンスだ。

60年以上受け継がれる「ファウスト」
60年以上受け継がれる「ファウスト」

 公演が始まる頃になると、グラウンドには、約1000人の観客が続々と押し寄せた。そこに、ついに生徒たちが入場してきた。総勢100人以上の高校3年生たちだ。

身にまとうのは、ジャンパースカートの制服、そして白いバレエシューズ。グラウンドに曲が流れ始めると、生徒たちはいっせいに手足を広げ、半円を描くような優雅な舞を始める。体を回転させるたびに、スカートの裾が花びらのようにひらめき、軽やかさをいっそう引き立てる。

 手を伸ばしたり、体を傾けたりと、複雑な動きが続くダンスだが、一糸乱れぬ動きで観客の視線を釘付けにする。舞っている生徒たちの目もきらきらと輝く。先輩から受け継いできたダンスを踊ることができる喜びと誇らしさに満ち溢れているようだ。

一糸乱れぬ動きで観客を魅了する
一糸乱れぬ動きで観客を魅了する

 その様子を観客席から見守っていた同校職員の松原友紀子さんは卒業生の一人だ。「左右、前後の人との間隔を取ったり、回転したりするときのタイミングが難しいんです」と、踊りから目を離すことなく、自らの経験を語ってくれた。

 華麗な舞は約10分間続き、終了と同時に、生徒たちは再び隊列を組み直し、足をそろえて行進する。その清楚な姿に、グラウンドを囲むように見守る観客からは惜しみない拍手がおくられた。

 演技を終始心配そうに見つめていた杉本潤子先生(体育科主任)は、生徒たちが高校2年生の終盤ごろから指導に当たってきた。その杉本先生が演技を終えた教え子たちに向かって、「夏の暑さと台風のためにグラウンドでの練習は十分できなかったけれど、朝練などの成果を発揮して素晴らしいものを見せてもらった。今日が今までで一番良かった」と絶賛すると、生徒たちから大きな歓声が上がった。

 前年の生徒会長、齋藤愛さんは「普段、力を合わせてやる機会がないので、みんなで踊れることは最高に楽しいですね。全員ぴったり息があったし、一生の思い出になると思います」と興奮気味に語った。

60年続く秘けつは

お手前を披露する生徒
お手前を披露する生徒

 それにしても、このダンスが60年以上も受け継がれてきたとは。驚き以上に、にわかには信じられない。その問いに、鳩先生がこう答えてくれた。

 「先輩のお姉さま方がファウストを踊るのを、後輩は憧れを持って見つめます。そして、そんなファウストを自分も踊れるという喜びと感動が、代々の3年生に生まれていくことが、自然とファウストを60年以上続かせたのではないでしょうか。また、同時に芽生える『自分たちが後輩に伝統を伝えなければならない』という責任感も、ファウストが受け継がれてきた理由かもしれません」

お菓子の家をモチーフにした手芸作品
お菓子の家をモチーフにした手芸作品

 生徒たちの多くは、聖園祭でファウストを踊ると、同校での6年間の学園生活が走馬灯のようによみがえり、忘れ得ない思い出となるそうだ。卒業生のなかには、「自分が踊ったファウストを、娘にも踊って欲しい」と、わが子を同校に入学させる保護者も多いという。このダンスには、6年間育ててくれた学校への感謝の気持ち、愛校心を養う役割があるようだ。そして、そんな伝統を連綿と受け継ぐ聖園祭は、未来の聖園生を生み出す壮麗な舞台装置の役割を果たしているのだろう。

(文と写真:林弘典)

掲載日:2013年10月12日

無断転載禁止
404725 0 聖園女学院中学校・高等学校 2013/10/12 17:58:00 2013/10/12 17:58:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20140410-OYT8I50176-T.jpg?type=thumbnail

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